二節 新魔王戦争

十一.因縁 ②

 ユノはこうの作戦の部外にいる、無力な少女である。それでも疑問があった。


「どのようにして知れたことなのですか。信ずるに足る確実な情報ということですか……」

「ああ、それ以上は踏み込まないほうがいいんじゃないか。分かるだろ?」

「……はい」


 例えば、内通者の存在を想像する。暗殺が最も穏当な結果となる情勢であるかどうか、タレンの影武者や有力な後継が存在するかどうかを、こう側も事前に探っていてしかるべきだ。

 この世界で最大の国家を敵に回すということは、そのような意味である。


「俺の言葉じゃ信じられないか?」

「はい。私は……ですから、許しをいただきたく思います」


 ソウジロウはどう思うだろうか。構うことはない。全てを失っているということは、自由であるということだ。

 それがユノとリュセルスの憎悪を向けるべき敵であれば、彼女が直接問う必要があると信じる。


「私も行きます」

「いいだろう。やってみろ」


 身分のかけ離れた平民の言葉を、ヒドウは真剣に聞いた。

刊行シリーズ

異修羅X 殉教徒孤行の書影
異修羅IX 凶夭増殖巣の書影
異修羅VIII 乱群外道剣の書影
異修羅VII 決凍終極点の書影
異修羅VI 栄光簒奪者の書影
異修羅V 潜在異形種の書影
異修羅IV 光陰英雄刑の書影
異修羅III 絶息無声禍の書影
異修羅II 殺界微塵嵐の書影
異修羅I 新魔王戦争の書影