第7話 レベルドレイン ①
「すげえ! こんなに大きなドラゴンを一撃で倒したぜ」
「でも、このドラゴンは『ベビードラゴン』なんだろう? 軽く全高十メートル以上はあると思うんだが……」
「つまりこいつがベビーに見えるぐらい、さらに巨大なドラゴンが存在するわけだ」
「ダンジョンって怖いな」
「でも、ダンジョン探索情報チャンネルの配信者はそういうドラゴンが出るダンジョンをいくつもクリアーしているんだろう? 編集された動画は定期更新されているし、
「だろうな。それにしても、勇者が日本人って本当なのかな?」
「らしいぞ。動画投稿サイトの運営会社は、報酬を日本に振り込んでるって
***
ダンジョン探索情報チャンネルの配信者は日本人という情報が漏れた……とは思わない。
動画投稿サイトの運営会社の情報管理は完璧だからだ。
日本語で配信しつつ、世界各国の言語の字幕を入れているのだから、配信者が日本人なのは最初からわかっていたことであった。
コメント欄に書き込んだ人は、軽く
「
やはり、ポイズンボアのお肉は
日本のブランド豚のお肉よりもはるかに
俺は簡単に狩れるけど、先日日本のトップランカーである留学生たちがようやく三十七階層にたどり着いたところなので、自由にポイズンボアの肉を食べられるのは俺ぐらいであろう。
「トンカツ、いいよねぇ」
「角煮はお酒にも合いそうです」
「職権乱用だなぁ」
冒険者高校の理事長室において、
俺を特別クラスに配属する件について呼び出されたはずなんだが、賄賂……と呼ぶにはセコイ要求をしてくるとは……。
「ポイズンボアのベーコン楽しみですね」
「アメリカにいた頃、ベーコンをフライパンでカリカリになるまで焼いたものが好きでした。楽しみにしています」
レベル26アサシン
なお、教頭も一緒にクビになっている。
最初、彼らを校長と教頭として送り込んだ文部科学省が文句をつけてきたそうだが、証拠と共に彼らの悪行を突きつけたら、二人はすぐに切られてしまったそうだ。
トカゲの尻尾とは哀れなものだ。
文部科学省は、本来人事に介入できない私学ではあるが、
彼は教員免許を持っており、なんとアメリカの学校で教えた経験もあるのだという。
というか
これぞ
そして俺は、Eクラスから特別クラスに編入となった。
「そういうことで、俺はクラスが変わります。では」
「俺は……
「さすがだな!」
「私たち、友達よね?」
「
理事長室を後にして、俺は特別クラスに向かおうとしたのだけど、ここでEクラスの担任である
最後にみんなに挨拶をして行けと、半ば命令したのだ。そのせいで現在非常に面倒なことになっている。
どうやら彼女に悪気はないようだが、今では俺はこの人がかなり嫌いになっている。
前回会った時から一ヵ月も
いくら彼らが落ちこぼれでも、ダンジョンに潜ってレベルは上がっている。
一方、教員としての仕事が忙しくてダンジョンに潜れない
彼女は、Eクラスの生徒たちが怖くて仕方がないのかもしれない。
事情はわかるが、だからといって俺を巻き込んでいいという理由は存在しないんだけどなぁ……。
「(誰が友達だよ! 彼女? あり得んわ!)」
俺はいまだに彼女というものはできたことがないが、少なくともEクラスの女子たちはゴメンだ。
先日助けた特別クラスの三人に比べたら……その前に、今まで散々俺をバカにしていたくせに、よくそんな男とつき合いたいなんて平気で言えるよな。
もしかして、
それと、常に先頭に立って俺をバカにしていたヤンキー。
なにをどうすると、俺と友達だなんて言えるんだ?
漫画のようにそう都合よく、友情は芽生えないと思うぞ。
「
「いや、古くもないし、そもそも友達じゃないですから」
どうせ最後だからと、適当に
自己保身のためとはいえ……いや、結局自分が一番
「あのね……若い頃には誰でも失敗があると思うの。
「……」
「そうだよ! 俺は反省しているから!」
「私たちは友達だよね?」
「私、以前から
せっかく冒険者高校に入ったのに冒険者としてまったく成長ができず、Eクラスで
それが一転、俺が特別クラスに移るという話を聞いてきた途端、
貧すれば鈍するというか……彼らの目的はレベリング目的で俺に寄生することだろう。
俺を格好いいなんて言っている女子は、まさしく寄生目的だと思う。
「(俺は心に決めている。恩には恩で、
俺はこのままEクラスを去ろうと思ったのだが、彼らのような人たちが冒険者特性を持っていても世の中のためにならない。
ならば、それを奪うのみだ。
「お話にならないな。二度と俺に関わるな」
「てめえ! 今の校長に気に入られているからっていい気になりやがって!」
「夜道は気をつけて歩けよ!」
「人権侵害とセクハラで訴えてやるわ!」
「私の彼氏、年少に入っていたんだけど。後悔しても遅いわよ」
彼らに
だが、俺の心には響かない。
そして気がついていないのか?



