第7話 レベルドレイン ④

「クリニッジか! 俺は、こいつが特別クラスに上がってきたことに納得できねぇ。こいつに特別クラスに所属できる実力があることが確認できるまで引かねえからな」

「こだわりますのね」

「前の校長と教頭が特別クラスに入れた連中。やっぱりクラス替えしたらAクラスにも入れねぇじゃねぇか。なにが冒険者は実力主義だ! 校長と教頭がそれを率先して破ってりゃ世話ねえよ。俺を認めさせてみろ、Eクラス!」

「お前が認めればいいのか」

「俺は、新しく主席になったクリニッジ、次席のウー、三席のさんぜんいんに次ぐ四席。以前は首席だったが、現時点でこの三人に勝てないことは認めている。お前が特別クラスに所属できる実力があることがわかれば、すぐに非礼はびよう」


 この巨漢。

 見た目に反して、悪いやつではないみたいだな。

 俺の実力に懐疑的なのも、前の校長と教頭がやらかしたせいなのだから。


「それを証明する手段をどうする? 冒険者高校では私闘は禁止だぞ」


 冒険者特性を得てレベル1のままなら一般人と大差ないが、一つでもレベルを上げてしまえば、一般人とはまるで別の存在になってしまう。

 つまり化け物になってしまったわけで、そんな化け物同士がダンジョンの外で戦えば多くの人たちに迷惑がかかるのだから、私闘禁止は当然のルールだ。


「お前が俺に殺気を飛ばせばいいだろう。それでわかるじゃねえか」

「確かに」


 ガンを飛ばすなんて不良みたいな話だが、実は冒険者同士は戦わなくても殺気を飛ばし合えば、お互いの実力が容易にわかってしまう。

 なにしろ、怪獣みたいなモンスターと戦うのだ。

 そのぐらいの殺気、気迫がなければ、スライム以上のモンスターと戦えやしないのだから。


「それでいいのなら……一応忠告しておくが、後悔するなよ」

「後悔? するものか! 担任が来るんだから早くやれ」

「わかった」


 とはいえ、今の俺が全力で殺気を飛ばしたら彼は死んでしまうかもしれない。

 残念ながら、俺と彼との間にはそのぐらいの実力差があるのだ。


「(百分の一? いや、千分の一か?)」


 他のクラスメイトたちにも影響が出てしまうので、俺は可能な限り手加減して巨漢くんに殺気を飛ばした。

 すると……。


「あっ、立ったまま気絶してる。漏らさないのは上出来かな。あっ、ボクはウー・ホンファね。アヤノ、彼は治癒魔法で目覚めるかな?」

「目は覚めますから、けんさんに治癒魔法をかけますね。私は、さんぜんいんあやと申します。で、こちらが首席のイザベラ・ルネ・クリニッジさんです。実は私たちも新参者なのですが」

「アヤノさんは日本国内の高校からの編入。私とホンファさんは二学期から留学してきましたので」


 実は以前三人を助けたのだけど、フルフェイスのかぶとのおかげで同一人物だとは気がつかれなかったようだ。


「すまねえ! お前は特別クラスに相応ふさわしい人間だった! けんたけしだ!」


 さすがに、Eクラスのようにどうしようもない人間はいなかったようだ。

 全員が実力者なので、心に余裕があるのかもしれない。


ふるりょうです」


 無事に特別クラスに溶け込むことはできたけど、考えてみたら俺あんまり学校に来ないので、さほど関係ないのかもしれない。

 友達……できるかな?

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