1話 田んぼで女騎士を拾った ②
とりあえず、女騎士を背追って歩き出す。
こうして俺は田んぼで女騎士を拾ったのだった。
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「んん? ここは?」
家にたどり着くと、背負われていた女騎士が目を覚ました。
「俺の家だ。よくわからんが、またすぐに倒れられると困る。少し休んでいけ」
「助かる」
男の家に若い女性を連れ込むのは気が引けたが、具合の悪い相手にはそうも言っていられない状況だ。
セラフィムもそれがわかっているからか特に文句は言ってこなかった。
「随分と立派な家だな。本当にあなたは農民なのか?」
玄関に入ると、セラフィムが驚いたように言う。
日本家屋に入るのは初めてなのだろうか。
「一人暮らしにしては広い家だが、田舎じゃ土地も家も余ってるからな。どこの家もこんなもんだろ」
「そ、そういうものか……?」
「疲れているところ悪いが、元気があるなら自分で歩いてもらっていいか?」
「あ、ああ。それくらいなら大丈夫だ」
セラフィムを
意識が戻ったようなので、とりあえず背中から下りてもらうことにする。
すると、女騎士はそのまま土足で玄関に上がった。
「あー、うちは土足厳禁だ。とりあえず、汚れている
「わ、わかった」
指摘すると、女騎士は靴や靴下を脱ぎ、鎧も外していく。
鎧の下は随分と簡素な服だ。
この辺りでも見慣れない衣服だが、故郷かどこかの素材なのだろうか。
「軽く飯でも食わせて寝かせてやりたいところだが、さすがにそのままでは部屋に入れるわけにはいかないな」
田んぼで二度ほど倒れたので、セラフィムの身体は泥まみれだ。このまま歩き回られたら家中が泥だらけになってしまう。
「とりあえず、先に風呂に入れ」
「風呂!? この家には風呂があるのか!?」
「あるぞ」
やたらと驚いているセラフィムを案内して脱衣所に入り、その奥にある浴場へと入る。
田舎の風呂と言われると
ごく一般的な浴場だ。ただ田舎なので土地が広いせいか、やたらと浴場も広い。
他に変わった点があるとすれば、内装をリフォームして自然素材っぽくなっていることか。
「……農民の家に風呂がある」
セラフィムは呆然とした顔で湯船を見つめている。
いや、確かに農民だけど、そこまで貧しい人じゃないからね? セラフィムの中での農民像が非常に気になるところだ。
「とりあえず、お湯を入れるからな」
給湯器を操作して、湯船にお湯を入れる。
「なっ! 急にお湯が沸き出したぞ! まさか、壁に張り付いているこれは水の魔道具なのか!? 農民が持っているなどあり得ん!」
「いや、ただの給湯器だから」
湧き出すお湯を見て、女騎士がまたしても驚く。
「む? これはなんだ?」
「あっ、バカっ!」
止めようとした時には既に遅かった。女騎士がシャワーレバーを倒したことにより、俺とセラフィムへと水が降り注いだ。
「うわあああっつ! み、水がっ!」
「シャワーのレバーを押せば水が出るのは当たり前だろ!」
当然の突っ込みをしながらレバーを元の位置に戻す。
「す、すまない。見たことがないものばかりでわからないんだ」
軽く怒るとセラフィムは申し訳なさそうな顔をして
どうやら悪気があるわけではないらしい。
「……わからないものは触るな。触る前に聞け」
「ああ、そうする」
さすがに外国人だとしてもお風呂くらい家にあるだろうし、給湯器やシャワーくらい知っているはずだ。それなのにまるで家にあるお風呂や給湯器をはじめて見たかのような反応をするセラフィムが気になった。こいつはどうやって今まで生きてきたんだろう。
「……風呂の使い方はわかるか?」
「申し訳ないが教えてもらえると助かる」
念のために言ったが、まさか本当に教えを請われるとは。
とりあえず、俺は我が家での風呂の入り方やシャワーの使い方、シャンプー、ボディソープなどの説明をする。
そうこうしている内に時間が経過し、給湯器がお湯張りの完了を知らせる音を奏でた。
ビクリと身体を震わせるセラフィム。
「お風呂が沸いたみたいだな。セラフィムさん、着替えは持っているのか?」
「セラムでいい。それと着替えは持っていない。できれば、貸していただけるとありがたい」
「わかった。着替えやタオルを用意しておくから、風呂に入っていてくれ」
「ああ、わかった」
脱衣所の扉から顔を出して俺の様子を



