2話 女騎士(設定)? ②

 セラムは納得したようにうなずくと、俺の作法をするように両手を合わせた。


「この白い粒はなんだ?」

「んん? 白米だ。セラムが倒れていた田んぼに生えていた稲かられる実なんだが……」

「なんとあそこからこのようなものが……」


 セラムはまじまじとご飯を見つめると、スプーンですくって口に入れた。


「甘くて美味おいしいな!」


 どうやら初めてのご飯は気に入ってくれたらしい。


「単品でも美味しいが、他のおかずと合わせて食べるともっと美味うまい」

「本当か!?」


 アドバイスをすると、セラムはナスの揚げびたしと一緒にご飯を食べた。

 すると、美味しさを表すかのように身体を震わせた。


「本当だな! おかずと一緒に食べると、これまた美味いぞ!」

「そうか。それは良かった」


 よくわからないやつだが、やたらと美味しそうに食べるな。


「このスープ料理も美味しい! 飲むとホッとする……」

「味噌汁な」

「味噌汁というのか……味噌汁は美味いな」


 味噌汁のちゃわんを手にしてホッとした顔をするセラム。

 こんな風に誰かと食卓を囲むなんて何年ぶりだろう。

 食事をする時に目の前に誰かがいるのが不思議だ。

 そんな風にセラムの質問に答え、感想にあいづちを打ちながら食べ進めるとあっという間に皿が空になった。


「ふう、美味しかった」


 セラムが満足げに息を漏らす中、食べ終わった皿を回収して流しで水にけておく。


「……非常に今さらなのだが、あなたの名前を聞いてもいいだろうか?」

「本当に今さらだな」


 まあ、名乗っていなかった俺も俺だが。


「俺は三田仁」

「ミタジン?」


 区切ることなく続けて呼ばれたので変な感じだ。


「三田がみょうで仁が名前だ」

「苗字を持っているということは、もしやジン殿は貴族なのか!?」

「いや、日本に貴族なんていないぞ。苗字も全員が持ってるしな」

「貴族がいない? 全員が苗字を持っている?」


 俺の返事を聞いて、信じられないとばかりの顔をするセラム。


「なあ、セラムが女騎士の設定を大事にしてるのはわかるが、いつまでそれを続けるつもりなんだ?」

「だから設定ではないと言っている! 私は本物の騎士だ!」


 ぜんとした態度で言うものの口の周りに米粒がついているので威厳は皆無だった。


「口に米粒がついてる」

「む」


 指摘すると、セラムは慌てて口元をぬぐって米粒を食べた。


「じゃあ、聞くがセラムは一体どこからやってきたんだ?」

「わかった。ちゃんと説明しよう」


 居住まいを正すとセラムは、ここにやってきた経緯を話した。

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田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている2の書影
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