王国裁判記録 ザイロ・フォルバーツ ②
俺は唸った。まったく気の進まない話だった。
ベネティムが招集しているということは、次の任務が始まるのだろう。おそらく、これからすぐにでも。ドッタの全身の骨を折ったのはやりすぎだった──今度はもっと面倒な連中と組まされることになる。
すでにその気配は伝わってくる。廊下のはるか向こうで、怒鳴り声が聞こえるからだ。テオリッタは、眉をひそめてそちらを振り返る。
「ザイロ。先ほどから聞こえる、あの怒鳴り声はなんなのですか?」
「あれは陛下だな」
あくび混じりに答えた俺に、テオリッタは困惑したようだった。
「それはどのような意味ですか?」
「そのまんまだ。自称・陛下。自分のことを国王だと確信してる、元・テロリスト。うちの部隊の工兵だ」
「はあ……?」
まだ不可解な顔をしているテオリッタをよそに、俺は起き上がる。
やるべきことがあるからだ。ちくしょう。我ながら
「行くか。……よく起こしてくれた、《女神》テオリッタ」
「ふふん」
テオリッタは撫でられる準備のように、金色の髪を手で梳いた。
「そうでしょう!」
やや乱暴に撫でると、髪は乱れるが、彼女はこれ以上ないというほどの笑みを浮かべる。
夢のせいか──今朝は、その顔が苦痛に感じた。
【命令書/第一類ソルダ符/〇一三六〇〇一九号】
■宛:第十三聖騎士団 パトーシェ・キヴィア団長
■令:護送任務は継続。戦闘は可能な限り回避し、予定日時までに女神十三号をガルトゥイルへ送り届ける事を命ず。また懲罰勇者の使用は、隊員の損傷の回復まで一時禁止とする。
■承認者:北部第四方面総督 エブラス・ヘレルク
──右記指令は撤回。
■宛:第十三聖騎士団 パトーシェ・キヴィア団長
■令:護送任務は中断。新たにゼワン=ガン坑道攻略任務を命ず。また、女神十三号および懲罰勇者部隊は第十三聖騎士団の管理下に置き、制圧支援に使用する事。
■承認者:北部第四方面総督 臨時代行 シムリード・コルマディノ
■指令撤回事由:右記承認者の背任容疑、および死亡による方針再検討



