第一章 〝彼〟のいない平和的な学園都市 City. ⑥
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不良少年達を振り切るため、
さらに、相手が
場合によっては、周囲の人間、視線、常識などが、追っ手を
これらを
これらは追っ手を
(……くそっ! 第一〇学区は詳しくねえぞ!! 俺はきちんと北に向かって走ってんだろうな!?)
見慣れない道で何度も何度も角を曲がり続けると、方角すら分からなくなるリスクがある。遠くへ逃げているつもりでも巡り巡ってUターンし、気がつけば自分から追っ手の方へ戻っている、という可能性もゼロではなくなるのだ。
こういう時の予防策としては、まずどちらの方角へ逃げるかを決めて、細かく角を曲がりつつ、全体的には一つの方角を目指して走り続ける、というのが有効になる。
と、頭では分かっているのだが、いきなり不良に囲まれた状況で、全力
「はぁーっ!! はぁーっ!! ……ち、ちくしょう。
全力疾走が続いたせいか
追っ手はもう見えない。
近くの案内板を見ると、第七学区とあった。
どうやら学区をまたいでしまったらしい。
(メールでこっちは無事だって事だけでも伝えておこうかな)
と、殊勝な事も考えたりしたが、
(いやいや、無事って分かったら、即座に次の
どん、とそこで
茶色い髪をショートヘアにした、中学生ぐらいの少女だ。
「す、済まねえ」
浜面は反射的にそう言ったが、相手は答えない。
ふらふらとした足取りで、彼女は
(……何だありゃ。
しばらく少女が消えた方を眺めていた浜面だったが、
(何だか大変そうな感じだったけど……まぁ、俺には関係ないか)
いつまでも考えても仕方がない。
浜面はメールのために取り出しかけた携帯電話を再びポケットにしまい、とりあえず冷たい飲み物が欲しいとキョロキョロ周囲を見回す浜面だったが、
「お、浜面。どうしたんだ、お前?」
横合いから声を掛けられた。
呼吸を整えつつ、浜面がそちらを見ると、彼の見知った顔があった。
「……