第二章 これから先の事、選択するべき事 Dream. ①
1
浜面も、スキルアウトにいた
店の隅には
「浜面は何か
「実はさっきファミレス寄ったばかりなんだ」
と答えた浜面は、適当に塩の焼き鳥を何本か頼むに
「……にしても、お前って和食ばっかりだよな。しかも全然伝統とか気にしないの」
「そうだっけ?」
「焼肉屋に入っても煮魚を頼むようなヤツだよ、お前は」
料理が運ばれてくると、半蔵はしばらく食べるのに集中した。どうやら昼食前だったらしい。浜面は
ガツガツと食べ続ける半蔵に不審な目を向ける浜面は、
「お前どうしたの? 朝も食わなかったのか?」
「いや、ここ最近忙しくてさ。まともなモン食ってねえんだ。時間短縮ってヤツだよ。ゼリーとかビーフジャーキーとか、そんなのばっかり。座って食うのも久しぶりだな」
「?」
「浜面の方こそ、ここんトコ連絡つかなかったけど、どこで何やってたんだ?」
「戦場帰りの世紀末帝王」
「あん?」
今度は半蔵が
その後も、どこそこのパチスロ店の設定がアコギ過ぎてブチ切れた客がダンプで突っ込んだだの、今はATMのセキュリティが厳しくなったからジュースの自販機をコツコツ
「へえ。浜面、オンナできたんだ」
「まーなぁ。……ただ、正直、不安もあるよ」
浜面は分解した鳥の皮に
「ほら、今までのやり方じゃ、攻める事はできても守る事はできねえじゃん。あいつとは何ヶ月かで終わっちまうような関係にはしたくねえからさ。となると、そろそろ、長期的な事を考えて動き出した方が良いんじゃねえかって」
「金の問題?」
「……
にはは、と浜面は照れ
彼はポケットから取り出した通信教材らしき小さな参考書をテーブルの上に置くと、
「つっても、そう簡単に実用的なレベルの技術が手に入るとは思えねえけどな。セキュリティ名目のグレーゾーンの雑誌とか読んでみるとさ、電子ロックとかの方面はサッパリなんだよ」
「……まぁ、『興味の方向性』が見えてりゃマシなんじゃねえの? 文系と理系みたいなもんでさ、適性ってのはあるもんだよ。何事にもな。意外とこれさえ分かってりゃ何とかなるもんだよ。少なくとも、『
「そんなもんかね」
「ATM盗むために二分で重機のエンジン掛けてたお前なら、鍵関係に進むのは悪い
その時、携帯電話の着信メロディが流れた。
半蔵はポケットから携帯電話を取り出すと、画面だけ見てまた電話をしまった。
彼は伝票を
浜面は
「どうした?」
「
半蔵は苦笑して、
「っつっても、これはお前の言う『攻め』の話だ。『守り』にはならねえ。今の浜面には利益にゃならねえよ」
「そっか」
「って訳で、ちょっと急ぐからここでお別れだ。またな、浜面」
「おい、俺も出すよ」
「
彼の話に乗れない事に、ちょっとだけ
「……おっ? レジに店員いねえでやんの。今がダッシュのチャンス!!」
「テメェええええ!! 俺を残して一人で食い逃げしてんじゃねえええええええええ!!」
直後に感情の淡い味付けは特濃ソースで塗り
2
近所のスーパーでお夕飯のお買い物。
「……、」
「……、」
店内に流れる『何のつもりでそのチョイスなの?』という時代遅れのポップスを耳にしながら、
この場違い感は野球場へ試合観戦に行ったら、何かの手違いで敵対チームの応援団が居座る三塁側の応援席のど真ん中に、たった一人で放り込まれたのに匹敵する。
「これって……ひょっとして、悪意に塗り潰されたミサカ達を一般市民と並べる事で、いかに
ショッピングカートを片手でガラガラと押す
対して、
「……平和な光景に慣れろって事だろ」
何やら
血が流れるのが当たり前、生き残るためにはルールの裏をかく事が大前提とされる中で、泥にまみれて
それらの経験の積み重ねは彼らにある種の実力を与える一方、
怪物。
恐怖の対象。
誰かを殺さなければ価値を
そんな風になりたくなければ、この『場違いな空気』を取り込むしかない。これこそが『当たり前』だと思えるようになるしかない。
……のだが。
「ヘイヘイ、そこの優等生さんよ」
「うるせェな」
「そんな特売のチラシなんてどうでも良いよ。全部盗んじゃえばタダになるじゃん」
「……オマエ、ぶン
「なんでー? そういや、菓子って店の外に持ち出される事には警戒しているようだけど、店の中で全部食って空き袋だけ棚の
「オマエはホント、根底にあンのが悪意だよな」
「逆に、値札の通りに料金を払って品物を手に入れるってプロセスが、ミサカには信じられないよ。いかに安くいかに楽して、ってのがショーバイの基本じゃない?」
「金を払わねェのは商売じゃねェ」
「そーだ。試食品で食中毒のフリしようか?」
「それやったら俺がオマエを食い殺すからな」
ブツブツ言いながら、
(……何で俺が『常識を語る側』になってンだ?)
場違いと言えばあまりに場違いだが、しかし一方で、こんな風に思わなくもない。
確かに、常識を語るのは場違いかもしれない。
だが、自分には常識が通じない、というのは、実は何の