第二章 これから先の事、選択するべき事 Dream. ④
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そのままずるずると座り込む。
先ほどまでの、彼女との会話が脳裏に浮かぶ。
『あれですよ。
実を言うと、浜面仕上は大手を振って学園都市での生活を満喫できる立場にはない。
そもそも街の『外』へ飛び出して第三次世界大戦の渦中に巻き込まれるきっかけになったのも『学園都市の
戦争の過程で、浜面は『あるデータ』を手に入れている。
『
だがそれも、万能ではない。
今は
『詳しい事は分かりませんけど、何だか学園都市の「上」から
ただでさえ、天秤は
ここでさらに大きな刺激を与えれば、あっという間に片方へ大きく傾いてしまう。
それを防ぐ意味でも、今は大人しくしていた方が良い。
天秤が本当に命を預けるに足るものかどうか、時間を掛けて見極めた方が良い。
それはつまり、この問題に手を出すなという事だ。
半蔵を切り捨て、命を狙われているというその少女も見捨てろという事だ。
『名前は何だったかな』
多分、その意見は間違っていない。
安全策というものを
少しでも危険なものは彼女から遠ざけたい。再び学園都市の『
だから、見捨てるという
絶対に間違っていない。
だが、
『確か……フレ……フレ、メア。……そう、フレメア=セイヴェルンっていうんですよ。一〇歳くらいで、ふわふわした金髪の女の子。良く、
路地でうずくまる浜面は、奥歯を
駒場
言ってみれば、フレメアという少女は駒場利徳が命を
フレメア自体は、スキルアウトとは関係のない、人畜無害の
駒場が彼女を守ろうとしたのも、その人畜無害さに一因があったのかもしれない。
そして。
浜面
いつも駒場に懐いていた少女の本名は、今まで知らなかった。一番接していたであろう駒場でさえ、『
だが、もうごまかせない。
知ってしまった以上は、向き合う必要がある。
「……フレンダ=セイヴェルン」
そして、さらに付け足した。
「アイツの妹か……ッ!!」
彼女がどういう経緯で学園都市の『闇』と接触し、『アイテム』に加入したのかは知らない。
フレンダ自身は、戦いを楽しんでいた節もある。
だが。
ひょっとしたら、その最初のきっかけには、フレメアの事もあったかもしれない。
これを見捨てるのは間違っていないのか。
こうしている今も
フレメアという少女の死は、
なのに、見捨てる事が間違っていないというのか。
(……そうだ)
「間違っていない……」
自分で自分の意見を固めるため、
その声は、徐々に大きくなっていく。
「間違ってなんかない。
路地でうずくまったまま、浜面は両手で頭を抱える。
そう。
合理的に考えれば、浜面や滝壺達が身を守るために一番効果があるのは、ここで半蔵やフレメアを見捨てる事だ。
それが最もリスクの少ない選択肢で、最も大切な人を守りやすい選択肢なのだろう。
選ぶべきだ。
本当に大切な人を守りたいなら。
非情に
選べ。
選ぶんだ。
さあ。
浜面は舌打ちすると、頭をグシャグシャと引っ
「見捨てられるかよクソッたれが!!」
壁に手をつき、浜面はもう一度立ち上がる。
細い路地の奥、学園都市の『闇』を象徴するかのような影の中へと、自分の足で突き進む。
死の危機に直面した友人を助けるために。
二人の死者の
これは
必ず戻ってくるために。
浜面