エピソード1 ホウキと魔女の残念な子に魔王 ⑧

 みようそうごろは個人的な家庭教師なので他の受験生の面倒を見る必要はない。どころか、他の少女の点数が上がるとヴィオシアにとって不利になる。分かってはいるのだが、これについては流石さすがにどうだろう? ヴィオシア発のトラブル処理くらいはするべきかもしれない。


「あー、えっとじゃね?」

「きゃあっ!? えうー、あのう?」

「逆に言えばあれより恥をかく事はねえし、次は何をやっても褒めてもらえる。そう思えば気軽に練習できんじゃね? 何なら冷たい物に触って強制的に緊張を和らげる手もあるけど」


 おずおずと従って硬質なホウキの先端を握り直すドロテア。一応試みは成功したらしい。

 ……邪悪の頂点にある、黒ミサの冷たい悪魔とはいくら触れ合っても絶対に気持ち良くはならずに集中も散っていく、という異世界の地球の知識をベースにしたのは言わぬが華か。


「よ、よいしょ」


 集中したいのか、ドロテアがおでこに包帯をハチマキっぽく縛り直している。

 それから内気なメガネの包帯少女は小瓶のキャップを外し、ホウキではなく自分の体の方に膏薬を塗っていく。肌をう指先の動きをじっと見てると