第二章 記念すべき(じゃない)初デート ③

 やれやれ。ちようせんを受けるとは言ったものの、待っている間は退たいくつだな。


「そういや、ちゃんとこういうトコに来たことはなかったな」


 なこともあって、俺はしみじみとそんなことを思い返す。

 ちゃんとデートする時は、だいたいいつしよに映画館で映画をるか、きつてんで好きな作品について語り合うかだったもんなぁ。

 俺はそれだけでも十分楽しかったんだけど……やっぱりちゃんからしたら、こういう「つうのデート」ももっとしたかったんだろうか。


「はぁ~……こういう気が回らないところもダメだったのかなぁ」

そう~、ちゃんとそこにいる~?」


 ため息をついたところで、カーテンの向こうからみずしまに呼ばわれる。


「はいはい、おりますですよ」

「よかった。じゃあ、さっそく一着目をおしようかな」


 さてさて、何が飛び出してくるのやら。

 まぁ、たとえどんなファッションで来ようと、俺はけして動じたりは──。


「じゃーん」

「ブ───ッ!?」


 シャッ、と開かれたカーテンの向こう。

 バッチリとポーズを決めて立っていたみずしまの格好に、俺は思わずき出した。


「水着じゃねぇか!」


 そう。みずしまが身にまとっていたのは、コバルトブルーを基調としたすずやかなふんの水着だった。上はつうのビキニだが、下はいわゆるパレオのような形になっている。


「どう? 似合ってる?」

「いやっ、お前っ、水着はちがうだろ水着はっ! ファッションショーっていう話はどこへ!?」

「水着だって服は服じゃん」

「うっ……そりゃ、そうかもだけど……!」


 こ、この女! しよぱなから平然とした顔でからめ手を使ってきやがった!

 まさか水着を持ってくるなんて、予想外にもほどがあるだろ。


「ファッションショー」というワードから、勝手にその可能性を除外してしまっていた。

 くそ、まんまとコイツのミスリードに引っかっちまったってことか!


「ふふふ。そうはこういうの、好き?」


 後ろ手に手を組みながら、みずしまが見せつけるようにしてポーズを取る。

 見るからにきめ細やかそうな白いはだに、太過ぎず細過ぎずの健康的な。しっかりとくびれのあるおなか周りは適度に引きまっていて、な筋肉やぼうは全くと言っていいほどない。

 そして何より目を引くのが、青いビキニに包まれた豊満なバストだ。

 制服を着ていた時点でもその大きさははっきりわかるレベルだったが、いだらさらにすごい。ズッシリとした重量感がありつつも、けして重力に負けずにつんと上向きになったきよにゆうだ。

 前からうすうす感じていたけど……こいつ、クールでボーイッシュな顔とは反対に、首から下の女子力(エロさ的な意味で)が高すぎる!

 こういうのが好きか、だって?

 そんなもん……そんなもん、健全な男子高校生ならだれでも好きに決まってるだろうが!


「顔、真っ赤だよ? 私の水着姿、そんなに気に入った?」

「気に入ってない! 全然、まったく、これっぽっちも気に入ってない!」

うそ。だってそう、めっちゃ興奮してるじゃん」

「し、してないから! 仮に興奮してたとしても、それはお前にじゃなくてお前の体に興奮してただけで……はっ!?」


 し、しまったぁ! ムキになりすぎてなんかすげぇクズ発言をしてしまった気がする!

 あわててり返ると、みずしまはきょとんとした表情をかべた後、心底おかしそうに笑い始めた。


「あは、あははははっ! 言い方!」

「ち、ちがっ! みずしまのスタイルやプロポーションの良さは認めるけど、別にお前自身を認めたわけではないって意味で!」

「は~あ、そっかぁ。そうは私の『体』にしか興味ないんだ~。しよせん、私は体だけのオンナか~……いや、でもそれはそれでアリ、かも?」

「お前こそ言い方ぁ! 誤解を招く表現はやめろ! さっきからなんかもう周りの女性客からの視線が痛いから! さってるから!」


 周囲からのいぶかし気な視線にえかね、俺はみずしまを試着室へとし戻してカーテンを閉める。


「いいから、とにかくもうえろ!」

「ごめんって。さすがにおふざけが過ぎたね。まぁ、水着は半分じようだんとして、次からはちゃんとした格好で出てくるからさ」

「やっぱり、まだ続くんだな……」


 もう正直いっぱいいっぱいだが……それでも、まだたった一着目だ。

 こんなじよばんじよばんでおめおめ白旗をあげるわけにはいかない。

 早くもろうこんぱいながら、俺はかくを決めて再び試着室前のこしかけた。


「じゃあ、どんどん行ってみようか」

「お、おう! 来るなら来やがれ! いや、着やがれ!」