3 ②

 答えにきゆうする俺を、眼前のご婦人はどうかいしやくしたのか、


「お友達かどうかなんてたずねて、大変失礼しました。さきほどはなれたところからうかがっていたのですけど。貴方あなたさまと話しているときのりゆう君のきとしたあの顔を見ればもう、いちもくりようぜんでしたわね」


 まぶしいものでも見るように目を細めて、続けた。


「自己しようかいがまだでしたわ。あたくしはりゆう君の母であり、第八代つま家当主が妻、でございます」


 第八代。当主。あまり自己しようかいで聞かない単語が飛び出てきたが、


いしこうです。りゆうすけ君と同い年です」


 自己しようかいをこなすことに集中した。


りゆう君のお友達になって頂き、がとうございます。よかったわ。あの子はホラ、すい事件を起こしてからは、いっそう一人の時間を大事にするようになったから」


 すい事件って。

 りゆうすけよ、なにやってんだよ。

 とりあえず、自己しようかいを終えた舌の根がかわく前に。

 俺はりゆうすけ君の友達ではないです、とていせいを──


りゆうゆいいつのお友達であるこうさんにはわかっていてほしいのだけど。りゆう君は全身性めんえきそうしようという病をわずらっていて。本人は知らないのだけれど……、あたくしはりゆう君に残された命の長さについて説明を受けているの。こうさん、良かったらりゆう君とずっと仲良くしてあげてくださいね」


 できそうもなかった。


 あまりにも気になったので。

 すい事件について、りゆうすけ母・さんから聞いて、別れた。

 先月のある夜の消灯後、女性専用びようとうろうをうろつくかげりゆうすけだ。

 ほのかの病室を目指していたらしいが、当直の看護師に見つかり、あえなくご用。

 なにが目的だったのか、もくつらぬいたりゆうすけには、ほのかへの接近禁止命令一週間の裁きと、びようとうの天使・ほのかを妹のようにでる看護師達からけいかい人物のらくいんされたそうだ。

 病室のベッドでその話を思い返していた俺は、これだと思った。これしかないと思った。

 天使製造機と呼ばれた男に、こいしてしまった天使の目を覚まさせる方法。

 早くもばんさくきたと思っていたところだった。

 びようとうの天使に相応ふさわしくない男だと、らくいんしてもらうために。やるしかない。

 スマホで一応『い マナー』とけんさくする。見よこのやる気。