俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3
2-1.旅館と卓球と混浴
*
そんなわけで、年末に
メンバーは私、トウジ、そしてもちろん
なんでも、
私としても、トウジが付き添えないところで、
(う〜ん、
クリスマスは、トウジの家で、おばさんの作ってくれたフライドチキンをたっぷり食べた。
その後、トウジには日ごろのお礼に、プレゼント交換とかして──あと、一応サンタ衣装も着てみた。
サイズは正直ギリギリだったけど、まあ、トウジにだけ見せてクリスマス気分を味わっただけだから、別にいいでしょ。
(そして、いよいよ温泉……♪)
温泉なんて、何年ぶりだろ。
胸が大きくなってからは、全然行ってない。
女性しかいない大浴場でも、私の胸は注目される──ってか正直、裸になるともっと目立ってしまう。
(
私は旅行用のスーツケースを転がしながら、待ち合わせ場所──地元のターミナル駅についた。
時刻はお昼の12時。
冬休みのせいもあってか、駅前のロータリーにいつもの
トウジや
ママも温泉に行くと聞いて──
『あら〜、温泉
なんて言ってた。夫婦水入らずならそれも
うちのパパは長距離フェリーの偉い人だから、一度、海に出ると何日も帰ってこない。休みも不規則だし、ママと一緒に休める日があったらいいな。
(……ってか、早く着きすぎちゃった)
トウジも
はあ、とため息をつく。
今日は特に寒い。十二月の空気が、吐息を真っ白に変えた。
(冬かぁ……)
夏は苦手だ。おっぱいが蒸れて、信じられないほど汗が
デカい脂肪は、冷やすにも時間がかかるので、夏は動きづらいったらない。
じゃあ、冬なら
(そうでもないのよね……特に、服が)
冬は冬で、厚着が問題になる。
ただでさえ、おっぱいのせいで太って見えるのに──服の生地が厚いと、余計に膨れて見えるのがつらい。
今日着ているのは、数カ月前にモデルで着た、オシャレなヤツだから、適度にボディラインを出してくれて、太って見えることはないけれど──。
そうなると今度は、デッッッッかいおっぱいが冬服の布地とあわさって、さらに大きく見えてしまうデメリットもある。
くそ、もう、このおっぱいめぇ〜。
夏でも冬でも私をいじめてきて! 私になんか恨みがあんの!?
(────はあ)
人通りが少ないとはいえ、ターミナル駅だし、電車を使う人はそれなり。
なにもせずぼうっと待ち合わせてる私に、ちらほらと視線が集まる。
まあ、仕方ないけどね──。
(早くトウジ、来ないかなー)
やっぱりトウジの言葉に甘えて、一緒に来れば良かったかも。
最近はずっとトウジや、
だから、一人で駅前に立ってるのがこんなに心細いなんて、すっかり忘れていた。
トウジのおかげで大分ラクになっても、まだ人の視線はちょっと怖い、かも──。
なんて思ってると、カシャッと撮影音がした。
(──カシャ?)
音がしたほうを振り向く。
大学生くらい? なんか細いお兄ちゃんが、スマホのカメラを私に向けてた。
──撮影された?
(と、
は?
(いや、堂々としてるから盗撮じゃな──いやいや! そこじゃねーし!?)
こんな堂々とした盗撮あるぅ!?
せめて隠れてやんなさいよ──いや隠れられても困るけどさぁ!
「ちょ──はあああぁぁっ!? なに撮ってんのよアンタぁぁぁ!?」
ヤバい。
自分でも信じられないくらい、ドスの
お兄さんが、そんな私の声にビビッて、慌てて逃げようとする!
逃げるくらいならそもそも撮んなっつーの!
「待ちなさいよゴラァ!」
慌てて追いかけようとして、足が止まる。
ヤバい、今日はスーツケースがあるんだった。
置いていくわけにはいかないし──でもなに!? 盗撮犯、そのままにするの!?
スーツケース持ったまま走れるわけない。どうしようどうしよう。
このままじゃ──。
「──おい」
盗撮犯が逃げようとした瞬間。
すれ違いざまに、その腕を持ち上げるおっきな影があった。
「見てたぞテメェ。今撮った写真、全部消せよ」
私よりよっぽど低い声で、脅しをかけるのは。
見知った私のボディガードだった。
「な、なんだよお前!?」
「そりゃこっちのセリフなんだわ。俺のツレを盗撮しただろ。色々とデカいからバズるとでも思ったか? いい加減にしろよテメェ」
「はっ……離せよ……」
盗撮犯はトウジの腕を振り払おうとするけど、トウジは微動だにしない。
身長差もある。腕力では絶対に
「今! すぐ! 撮った写真消せ! このまま警察に突き出されたくなかったらな!」
「ひぃぃ……」
トウジの迫力に。
盗撮犯は今にも泣きそうな顔で、慌ててスマホを操作し始めた。
撮った写真が全部消されるまで、トウジは腕を組んで見張っている。
(──ああ、もう)
やっぱり。
トウジは頼りになる。最高のボディガード。
モテるかどうかは知らないけど、こんな頼りになるボディガード、絶対、絶対、手放すわけにはいかないのだ。
*
「それは災難でしたね」
ワゴンの運転席で、
「いや、ホントありえないっつーの! 隠れて撮るならまだしも──いやそれもイヤだけどさ! 堂々と目の前で撮影してくる盗撮なんか聞いたことないよ!」
「とんでもないことをするヤツもいるものだね」
後部席では、りりさが抑えきれない怒りをぶちまけ。
あっという間に決まった、年末の箱根温泉旅行。
りりさも相当楽しみにしていたはずだが、まさか待ち合わせの時点で、こんなことが起こるとは。
「
「写真は全部消させましたし、りりさも必要ないと言うので──今回はそれで」
警察なんて行ってたら貴重な旅行が台無しである、というのが、りりさの主張。
撮られた当人が言うなら、それで手打ちにするしかない。
「まあ、相手の男には二度とやらないように、
「着替えを撮るならともかく、正面から堂々となんて……この場合、条例違反? 肖像権の侵害? ううん、判断が難しそうですね──」
「んもう! 法律なんてどーでもいいよ! 許可なく撮る時点でありえないし! トウジがいてくれてホント良かった! あんだけ脅したから二度としないでしょ!」
ごもっともである。
罰則のあるなしよりも、大事な旅行前に、りりさが傷ついてしまうほうを避けたい。
たまたま出くわしたとはいえ、相手に逃げられなくて本当に良かった。
「だから、最初から一緒に行くって言っただろ」
「ゴメンてー、まさかこんなことになるとは思わなくてさー」
りりさが舌を出す。
まあ、俺も朝から、正面堂々、盗撮してくるヤツがいるなんて思わなかったので、俺の落ち度でもある。
まったく、りりさの胸で、おかしくなるヤツの多いことだ。
「はは、ま、今頃相手もトラウマになってるんじゃないかな?
「……そんな怖いか、俺?」
「りりさのことになると、迫力が違うよ?」
まったく自覚はなかったが──そうなのか。
「はー、もう、忘れよ忘れよ! それより温泉! 超楽しみ〜〜〜〜ッ!」
「はい、程なく到着しますからね」
そんな話をしながら、車は快調に進んでいく。
天気もいい。ドライブ
──とはいえ、車内は女性陣ばかり。
一応、それなりに気心の知れた仲とはいえ、男一人で居心地が悪いのは変わりない。
「本当に、俺が来て大丈夫だったんスか?」
「もちろんです。荷物持ちしてくださるだけで大歓迎ですよ」
なら、いいのだが。
「そうだよ! 今更なに言ってんのよトウジ! 温泉!
「りりさもこう言ってるし、
後部席の女子二人にそう言われてしまえば、俺も黙るしかない。
「見えてきましたよ、
「おお〜〜〜デッッか〜〜〜いっ!」
山道を進んだ先、開けた視界の向こうにシンボリックな歩道橋が見えた。
りりさが窓を開けて、目をキラキラさせながら、箱根の景色を眺めている。
(──まあ、いいか)
もう来てしまったのだから、男一人がどうとか、気にすることはない。
りりさが念願の温泉に目を輝かせているのだから、それでいい。
「──楽しみだねっ! トウジ!」
「はいはい」
冬休み前の、謎の不機嫌も忘れて、りりさは満面の笑み。
そんな顔を見ると、ちょっとだけ後ろめたくなった。
昔の、破ってしまった約束が頭をよぎる。
もう過去のこととはいえ──いや、だからこそ、りりさの笑顔を前に、ネガティブな話をするのは胸が痛んだ。
(どこかで隙を見て、謝れたらいいけど……)
果たして、そんな機会が、この旅行中にあるだろうか。
ちなみに昼飯は
箱根の山道を登った先にある旅館は、外観からもはっきりわかる高級旅館だった。
そして──。
「ひっろぉぉ〜〜〜いッ!」
真っ先に、りりさが部屋に入って叫ぶ。
十畳はゆうに超えている客室。女性3人で使うには広いくらいだろう。
「本当に
「もちろんです。私一人で泊まってもつまらないですから」
あまりの高級旅館ぶりに気おくれしたのか、
「皆さんが喜んでくれればなによりですよ」
りりさはちょこまかとした動きで、部屋のあちこちをうろついていた。
とりあえず目につくもの全てに触る様子は、子どもにしか見えない。
「トウジ〜っ! こっちこっち!」
皆の荷物を部屋の隅に置いたら、りりさが俺を呼んだ。
「
「へえ……」
りりさが、部屋の奥のカーテンを開ける。
そこには客室から縁石でつながる、ヒノキの
この
浴場のほかには、
絶景を邪魔しない作りだ。大パノラマが期待できる。
「はあぁ〜、温泉、最高……♪ 気兼ねなく入れるなんて……♪」
「良かったな」
すでにひとっ
とはいえ、こんな高級客室で温泉に入り放題なのだから、りりさの気持ちもわかる。
「りりさ、早速入ってみようか。
すぐに気を回せるところはさすがである。
「うん、入ろ入ろっ──あっ、着替えるからトウジは出て行きなさいよね!」
「わかってるよ」
女子ばかりの部屋にいつまでもいるわけにはいかない。
「
「うス」
一刻も
メイン客室から、渡り廊下でつながった先に、別室がある。
中に入れば、小さめの洋室。
体のデカい俺が寝れば、それだけで埋まるようなベッドと、テーブル、テレビがあるくらい。
簡素だが、高級感のある部屋だった。
(──ま、一人で寝るぶんには都合がいいな)
女性ばかりの旅行に、男が一人。
むしろ離れを使わせてもらうほうが、気が楽である。
さらに、廊下からは扉で仕切られており、鍵もかかるようだ。ありがたい。
ハプニングでりりさたちと出くわす心配がなくなる。
(ん? こっちは……?)
さらに、離れの奥には、メイン客室と同じように、
(なるほど。和室のほうが露天に近いのか)
いちいち、りりさたちのいる和室を通らなくても、
俺も一度見ておこうと、
「あははははっ! 露天だぁ〜! すっごぉぉ〜〜〜いッ!」
りりさの声が聞こえて、慌てて扉を閉めた。
アイツ! もう
(そうか、入り口が別々にあるから……!)
向こうが入ってることに気づかず
りりさたちが入浴してる時に、バッティングしないよう気を付けなければ。
「まあ、絶景ですね」
「解放感が段違いだねぇ!」
りりさに続いて、
(
入浴中の声が、丸々聞こえてしまう。
「いやぁ〜、ホント最高! やっぱり外の空気を全身で感じながら入る温泉がイチバンだよね! 気持ちイイ〜〜〜ッ!」
「りりさ、あんまり立っていると……」
「え〜? 大丈夫大丈夫! ここ山の上だし、絶対見えないって!」
なに話してんだアイツら。
特にりりさの声は、無駄にデカいのでよく響く。
(気にするな、気にするな……)
俺は自分に言い聞かせつつ、荷物を置いて、
部屋のクローゼットには、
プールで着る、薄手の海パンのようなものだ。
(行き届いてんなー……)
*
温泉、温泉、温泉〜〜〜っ!
あったかい温泉に
湯船に肩まで沈めると、でっかいおっぱいが別の生き物のようにぷかぷか浮かぶ。
身も心もふわふわしていると、隣に座る
「なあ、りりさ」
「?」
「また大きくなったんじゃないかい?」
別に女同士だからいいけどさ、
「ええっ、
「最近測ったかい?」
「文化祭から測ってないけど……あっ、そういえば、服がちょっとキツい……ような……」
うう。どんだけデカくなるのよぉ。
これ以上は本当に、生活がヤバくなっちゃう。
「りりささん、サイズ直しはできますからいつでも言ってくださいね。ええ、なるべく、迅速に──」
温泉を
バストサイズが変わると、せっかく増えてきたオーダーメイドの服も全直しだ。
そんなの絶対ダメだよぉ! やっとオシャレできるようになってきたのに!
「ち、違うよぉ!? 増えてるはずないからぁ! ってかこれ以上増えるのは本当に勘弁してほしいからぁ!」
わかる、わかると、
大きさはちょっと違っても、巨乳の悩みは共有できるものだ。
ここにいる女の子三人、気持ちはひとつである。
「ていうか、
「や、やっぱりそう思うかい? サラシをやめてから、大きくなった気がするんだよなぁ……ホントに困るんだけど」
彼女のJカップも、温泉の湯船にぷかりと浮いてしまう。
「
「きょ、興味がないわけじゃないんですが、すみません、踏ん切りが……」
いざとなると、やっぱり二の足を踏んでしまうのが、
「そ、それより、りりさ、本当に大きくなったよね。ちょっと触ってもいいかい?」
「ええー……っ」
「ちょっ……まあ、いいけどぉ……」
クラスメイトに触れられるのはこれが初めてではない。
というか、仲の
ほとんどはSカップに触ってみたい興味本位だし、まあ女子同士のスキンシップの延長みたいなものなので、あんまりイヤとは言わない。
──まあ、中には露骨におっぱいが好きなだけの子もいるけれど。
そういう子は例外だろう。
「触るのは中学以来かな? ──うわ、でか」
「あの頃からそんなに変わってないってぇ。ちょっ、あんっ……んっ。
さすが女子の扱いは心得てる、って感じ。
──それはいいんだけど、触り方が繊細過ぎてムズムズするぅ!
「女性のカラダなんだから、優しく触るのは当然だろう?」
「それにしてはなんか、触り方やらしいっていうか……んっ、あんっ……はっ」
「いやしかし本当に、りりさの胸は重いなぁ……こんなの抱えて生きていくの、信じられないよね」
「でしょ? マジで大変なんだからぁ……んっ、んぁっ……」
ひとしきり
触り方が乱暴じゃないのはいいけど、くすぐったいのもそれはそれでちょっとヤダ。
「いや、やっぱり昔より大きくなってる気がするね、りりさ」
「──
「どうしてだい!?」
「えっちだから。
「女同士なのに……いやでも、それってりりさがボクを意識してくれてるってことじゃないかな? ふふ、りりさも素直になればいいのに──」
「いや、全然そーゆーんじゃないけど」
「なんでぇ!?」
いくらイケメンの顔つきでも、お湯にJカップが浮いてると、さすがに私の恋愛対象としては範囲外だ。
(恋愛……)
そういえば温泉で浮かれてたけど、恋愛で悩んでるんだった。
具体的に言えば、トウジがモテ始めているかもしれないってとこで──。
うーん、
でも学校内のことだしなあ。
せっかく温泉に来て、悩んでるのもなあ。
「そういえばぁ」
「ここの旅館、卓球があるらしくてぇ……」
「卓球!」
私は思わず立ち上がった。ざぶんと湯船が揺れる。
やっぱり温泉と言えば卓球だよね〜〜〜っ!
体を動かすのは好きだけど、学校の体育ではおっぱいが目立つせいで、思いっきり運動できることは少ない。
でも、ここなら遠慮いらないよね!
まあおっぱいが重くて邪魔かもだけど、私だって多少は慣れたし?
トウジを卓球でぶちのめしてやれば、少しはもやもやも解消するかもね!
「やったぁ、早速行こ行こっ!」
「ええ……りりさ、もう少し入っていても……」
「温泉ならいつでも入れるじゃ〜んっ! 先あがってるから!」
「子どもかな?」
だってだって! 卓球も数年ぶりなんだもん!
私は早速、



