俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3

2-1.旅館と卓球と混浴


 そんなわけで、年末にきゆうきよ、箱根旅行が決まった。

 メンバーは私、トウジ、そしてもちろんさんと、空いた枠にはつぐるくんを呼んだ。

 なんでも、さんはつぐるくんにきようしんしんらしい。まあ、イケメンだし背が高いし、モデルに勧誘するにはピッタリだよね〜。

 私としても、トウジが付き添えないところで、つぐるくんがボディガードしてくれるなら安心できるし。


(う〜ん、い年末だぁ……!)


 クリスマスは、トウジの家で、おばさんの作ってくれたフライドチキンをたっぷり食べた。

 その後、トウジには日ごろのお礼に、プレゼント交換とかして──あと、一応サンタ衣装も着てみた。

 サイズは正直ギリギリだったけど、まあ、トウジにだけ見せてクリスマス気分を味わっただけだから、別にいいでしょ。


(そして、いよいよ温泉……♪)


 温泉なんて、何年ぶりだろ。

 胸が大きくなってからは、全然行ってない。

 女性しかいない大浴場でも、私の胸は注目される──ってか正直、裸になるともっと目立ってしまう。

 さんが用意してくれた服や水着は、胸を小さくみせる技術が使われてるけど、温泉ではその魔法も通用しない。


てん付きのお部屋かぁ〜♪ その手があったなんてね〜♪)


 私は旅行用のスーツケースを転がしながら、待ち合わせ場所──地元のターミナル駅についた。

 時刻はお昼の12時。

 冬休みのせいもあってか、駅前のロータリーにいつものにぎわいはない。

 トウジやつぐるくんは心配して、『迎えに行く』と言ってくれたけど──荷物が多いので、待ち合わせ駅までは、ママに車で送ってもらった。

 ママも温泉に行くと聞いて──


『あら〜、温泉いわねぇ。パパが帰ってきたら私も行こうかしら〜』


 なんて言ってた。夫婦水入らずならそれもいかもしれない。

 うちのパパは長距離フェリーの偉い人だから、一度、海に出ると何日も帰ってこない。休みも不規則だし、ママと一緒に休める日があったらいいな。


(……ってか、早く着きすぎちゃった)


 さんが車で迎えに来てくれるはずだけど、見当たらない。

 トウジもつぐるくんもいない。

 はあ、とため息をつく。

 今日は特に寒い。十二月の空気が、吐息を真っ白に変えた。


(冬かぁ……)


 夏は苦手だ。おっぱいが蒸れて、信じられないほど汗がまる。

 デカい脂肪は、冷やすにも時間がかかるので、夏は動きづらいったらない。

 じゃあ、冬ならいかというと。


(そうでもないのよね……特に、服が)


 冬は冬で、厚着が問題になる。

 ただでさえ、おっぱいのせいで太って見えるのに──服の生地が厚いと、余計に膨れて見えるのがつらい。

 今日着ているのは、数カ月前にモデルで着た、オシャレなヤツだから、適度にボディラインを出してくれて、太って見えることはないけれど──。

 そうなると今度は、デッッッッかいおっぱいが冬服の布地とあわさって、さらに大きく見えてしまうデメリットもある。

 くそ、もう、このおっぱいめぇ〜。

 夏でも冬でも私をいじめてきて! 私になんか恨みがあんの!?


(────はあ)


 人通りが少ないとはいえ、ターミナル駅だし、電車を使う人はそれなり。

 なにもせずぼうっと待ち合わせてる私に、ちらほらと視線が集まる。

 まあ、仕方ないけどね──。


(早くトウジ、来ないかなー)


 やっぱりトウジの言葉に甘えて、一緒に来れば良かったかも。

 最近はずっとトウジや、つぐるくん──いつも隣に、誰かがいてくれる。

 だから、一人で駅前に立ってるのがこんなに心細いなんて、すっかり忘れていた。

 トウジのおかげで大分ラクになっても、まだ人の視線はちょっと怖い、かも──。

 なんて思ってると、カシャッと撮影音がした。


(──カシャ?)


 音がしたほうを振り向く。

 大学生くらい? なんか細いお兄ちゃんが、スマホのカメラを私に向けてた。

 ──撮影された?


(と、!? 撮られ、た……っ?)


 は?

 うそ? 信じられない? 盗撮?


(いや、堂々としてるから盗撮じゃな──いやいや! そこじゃねーし!?)


 こんな堂々とした盗撮あるぅ!?

 せめて隠れてやんなさいよ──いや隠れられても困るけどさぁ!


「ちょ──はあああぁぁっ!? なに撮ってんのよアンタぁぁぁ!?」


 ヤバい。

 自分でも信じられないくらい、ドスのいた声がでた。

 お兄さんが、そんな私の声にビビッて、慌てて逃げようとする! うそでしょ!?

 逃げるくらいならそもそも撮んなっつーの!


「待ちなさいよゴラァ!」


 慌てて追いかけようとして、足が止まる。

 ヤバい、今日はスーツケースがあるんだった。

 置いていくわけにはいかないし──でもなに!? 盗撮犯、そのままにするの!?

 スーツケース持ったまま走れるわけない。どうしようどうしよう。

 このままじゃ──。


「──おい」


 盗撮犯が逃げようとした瞬間。

 すれ違いざまに、その腕を持ち上げるおっきな影があった。


「見てたぞテメェ。今撮った写真、全部消せよ」


 私よりよっぽど低い声で、脅しをかけるのは。

 見知った私のボディガードだった。


「な、なんだよお前!?」

「そりゃこっちのセリフなんだわ。俺のツレを盗撮しただろ。色々とデカいからバズるとでも思ったか? いい加減にしろよテメェ」

「はっ……離せよ……」


 盗撮犯はトウジの腕を振り払おうとするけど、トウジは微動だにしない。

 身長差もある。腕力では絶対にかなわないのが、はっきりわかる。


「今! すぐ! 撮った写真消せ! このまま警察に突き出されたくなかったらな!」

「ひぃぃ……」


 トウジの迫力に。

 盗撮犯は今にも泣きそうな顔で、慌ててスマホを操作し始めた。

 撮った写真が全部消されるまで、トウジは腕を組んで見張っている。


(──ああ、もう)


 やっぱり。

 トウジは頼りになる。最高のボディガード。

 モテるかどうかは知らないけど、こんな頼りになるボディガード、絶対、絶対、手放すわけにはいかないのだ。



「それは災難でしたね」


 ワゴンの運転席で、さんはそう言った。


「いや、ホントありえないっつーの! 隠れて撮るならまだしも──いやそれもイヤだけどさ! 堂々と目の前で撮影してくる盗撮なんか聞いたことないよ!」

「とんでもないことをするヤツもいるものだね」


 後部席では、りりさが抑えきれない怒りをぶちまけ。

 周防すおうがわかる、わかるとばかりに腕を組んでうなずいている。

 あっという間に決まった、年末の箱根温泉旅行。

 りりさも相当楽しみにしていたはずだが、まさか待ち合わせの時点で、こんなことが起こるとは。


しろさん、警察には?」

「写真は全部消させましたし、りりさも必要ないと言うので──今回はそれで」


 警察なんて行ってたら貴重な旅行が台無しである、というのが、りりさの主張。

 撮られた当人が言うなら、それで手打ちにするしかない。


「まあ、相手の男には二度とやらないように、くぎを刺しておきましたが」

「着替えを撮るならともかく、正面から堂々となんて……この場合、条例違反? 肖像権の侵害? ううん、判断が難しそうですね──」


 さんが運転しながら悩んでしまった。


「んもう! 法律なんてどーでもいいよ! 許可なく撮る時点でありえないし! トウジがいてくれてホント良かった! あんだけ脅したから二度としないでしょ!」


 ごもっともである。

 罰則のあるなしよりも、大事な旅行前に、りりさが傷ついてしまうほうを避けたい。

 たまたま出くわしたとはいえ、相手に逃げられなくて本当に良かった。


「だから、最初から一緒に行くって言っただろ」

「ゴメンてー、まさかこんなことになるとは思わなくてさー」


 りりさが舌を出す。

 まあ、俺も朝から、正面堂々、盗撮してくるヤツがいるなんて思わなかったので、俺の落ち度でもある。

 まったく、りりさの胸で、おかしくなるヤツの多いことだ。


「はは、ま、今頃相手もトラウマになってるんじゃないかな? しろくんにすごまれてはね」

「……そんな怖いか、俺?」

「りりさのことになると、迫力が違うよ?」


 周防すおうが笑い飛ばす。

 まったく自覚はなかったが──そうなのか。


「はー、もう、忘れよ忘れよ! それより温泉! 超楽しみ〜〜〜〜ッ!」

「はい、程なく到着しますからね」


 そんな話をしながら、車は快調に進んでいく。

 さんの運転は安心感があった。さんも仕事を無事に終わらせたのか、晴れやかな顔だ。

 天気もいい。ドライブよりである。

 ──とはいえ、車内は女性陣ばかり。

 一応、それなりに気心の知れた仲とはいえ、男一人で居心地が悪いのは変わりない。


「本当に、俺が来て大丈夫だったんスか?」

「もちろんです。荷物持ちしてくださるだけで大歓迎ですよ」


 なら、いいのだが。


「そうだよ! 今更なに言ってんのよトウジ! 温泉! しいご飯! 逃す手はないじゃん!?」

「りりさもこう言ってるし、しろくんも気にせずいたまえよ? もちろんボクもおこぼれにあずかる身だから、文句は言わないよ」


 後部席の女子二人にそう言われてしまえば、俺も黙るしかない。


「見えてきましたよ、はこもとの駅が」

「おお〜〜〜デッッか〜〜〜いっ!」


 山道を進んだ先、開けた視界の向こうにシンボリックな歩道橋が見えた。

 りりさが窓を開けて、目をキラキラさせながら、箱根の景色を眺めている。


(──まあ、いいか)


 もう来てしまったのだから、男一人がどうとか、気にすることはない。

 りりさが念願の温泉に目を輝かせているのだから、それでいい。


「──楽しみだねっ! トウジ!」

「はいはい」


 冬休み前の、謎の不機嫌も忘れて、りりさは満面の笑み。

 そんな顔を見ると、ちょっとだけ後ろめたくなった。

 昔の、破ってしまった約束が頭をよぎる。

 もう過去のこととはいえ──いや、だからこそ、りりさの笑顔を前に、ネガティブな話をするのは胸が痛んだ。


(どこかで隙を見て、謝れたらいいけど……)


 果たして、そんな機会が、この旅行中にあるだろうか。

 はこもとの駅近くで、遅めの昼食を食べてから、俺たちは旅館に直行した。

 ちなみに昼飯は丼だった。めちゃくちゃい。

 箱根の山道を登った先にある旅館は、外観からもはっきりわかる高級旅館だった。

 そして──。


「ひっろぉぉ〜〜〜いッ!」


 真っ先に、りりさが部屋に入って叫ぶ。

 十畳はゆうに超えている客室。女性3人で使うには広いくらいだろう。


「本当にいんですか、こんなところ」

「もちろんです。私一人で泊まってもつまらないですから」


 あまりの高級旅館ぶりに気おくれしたのか、周防すおうさんに聞いていた。


「皆さんが喜んでくれればなによりですよ」


 さんはニコニコと、りりさを眺めている。

 りりさはちょこまかとした動きで、部屋のあちこちをうろついていた。

 とりあえず目につくもの全てに触る様子は、子どもにしか見えない。


「トウジ〜っ! こっちこっち!」


 皆の荷物を部屋の隅に置いたら、りりさが俺を呼んだ。


てんあるよ!」

「へえ……」


 りりさが、部屋の奥のカーテンを開ける。

 そこには客室から縁石でつながる、ヒノキのてんがあった。景色もいい。

 このてんに入れば、箱根の山々がよく見えることだろう。

 浴場のほかには、あんどん型の装飾と、簡易的な脱衣所があるのみ。

 絶景を邪魔しない作りだ。大パノラマが期待できる。


「はあぁ〜、温泉、最高……♪ 気兼ねなく入れるなんて……♪」

「良かったな」


 すでにひとっ浴びたような顔で、りりさがつぶやいた。

 とはいえ、こんな高級客室で温泉に入り放題なのだから、りりさの気持ちもわかる。


「りりさ、早速入ってみようか。浴衣ゆかたに着替えるといい」


 周防すおう浴衣ゆかたを取り出して、てきぱきと準備する。

 すぐに気を回せるところはさすがである。


「うん、入ろ入ろっ──あっ、着替えるからトウジは出て行きなさいよね!」

「わかってるよ」


 女子ばかりの部屋にいつまでもいるわけにはいかない。


しろさん、離れはあちらです」

「うス」


 一刻もに入りたいだろうりりさたちを置いて、俺は離れへ。

 メイン客室から、渡り廊下でつながった先に、別室がある。

 中に入れば、小さめの洋室。

 体のデカい俺が寝れば、それだけで埋まるようなベッドと、テーブル、テレビがあるくらい。

 簡素だが、高級感のある部屋だった。


(──ま、一人で寝るぶんには都合がいいな)


 女性ばかりの旅行に、男が一人。

 むしろ離れを使わせてもらうほうが、気が楽である。

 さらに、廊下からは扉で仕切られており、鍵もかかるようだ。ありがたい。

 ハプニングでりりさたちと出くわす心配がなくなる。


(ん? こっちは……?)


 さらに、離れの奥には、メイン客室と同じように、てんへの扉があった。


(なるほど。和室のほうが露天に近いのか)


 いちいち、りりさたちのいる和室を通らなくても、にいけるのは都合がいい。

 俺も一度見ておこうと、てんへの扉を開けて──。


「あははははっ! 露天だぁ〜! すっごぉぉ〜〜〜いッ!」


 りりさの声が聞こえて、慌てて扉を閉めた。

 アイツ! もう入ってきたのかよ! 早すぎだろ!


(そうか、入り口が別々にあるから……!)


 向こうが入ってることに気づかずてんに向かってしまうことも、十分考えられた。

 りりさたちが入浴してる時に、バッティングしないよう気を付けなければ。


「まあ、絶景ですね」

「解放感が段違いだねぇ!」


 りりさに続いて、さんと周防すおうの声もはっきり響いた。


に近い……!)


 入浴中の声が、丸々聞こえてしまう。


「いやぁ〜、ホント最高! やっぱり外の空気を全身で感じながら入る温泉がイチバンだよね! 気持ちイイ〜〜〜ッ!」

「りりさ、あんまり立っていると……」

「え〜? 大丈夫大丈夫! ここ山の上だし、絶対見えないって!」


 なに話してんだアイツら。

 特にりりさの声は、無駄にデカいのでよく響く。


(気にするな、気にするな……)


 俺は自分に言い聞かせつつ、荷物を置いて、浴衣ゆかたに着替える。

 部屋のクローゼットには、浴衣ゆかたとは別に、混浴に備えたみ着があった。

 プールで着る、薄手の海パンのようなものだ。


(行き届いてんなー……)


 に入るときは万一に備えて、み着を使おう、と心に決めるのだった。



 温泉、温泉、温泉〜〜〜っ!

 あったかい温泉にかって、私の気分は極楽だった。

 湯船に肩まで沈めると、でっかいおっぱいが別の生き物のようにぷかぷか浮かぶ。

 身も心もふわふわしていると、隣に座るつぐるくんがじっとこちらを見てきた。


「なあ、りりさ」

「?」

「また大きくなったんじゃないかい?」


 つぐるくんの目線は、当然、おっぱいに。

 別に女同士だからいいけどさ、つぐるくんもなかなか立派なものをお持ちなのに、やっぱ気になるんだなあって思う。


「ええっ、うそぉ!?」

「最近測ったかい?」

「文化祭から測ってないけど……あっ、そういえば、服がちょっとキツい……ような……」


 うう。どんだけデカくなるのよぉ。

 これ以上は本当に、生活がヤバくなっちゃう。


「りりささん、サイズ直しはできますからいつでも言ってくださいね。ええ、なるべく、迅速に──」


 温泉をたんのうしていたさんも、冷静な口調で言う。

 バストサイズが変わると、せっかく増えてきたオーダーメイドの服も全直しだ。

 そんなの絶対ダメだよぉ! やっとオシャレできるようになってきたのに!


「ち、違うよぉ!? 増えてるはずないからぁ! ってかこれ以上増えるのは本当に勘弁してほしいからぁ!」


 わかる、わかると、さんもつぐるくんもうなずいた。

 大きさはちょっと違っても、巨乳の悩みは共有できるものだ。

 ここにいる女の子三人、気持ちはひとつである。


「ていうか、つぐるくんも結構、増えてない?」

「や、やっぱりそう思うかい? サラシをやめてから、大きくなった気がするんだよなぁ……ホントに困るんだけど」


 つぐるくんが顔を赤くしながら、胸元を隠した。

 彼女のJカップも、温泉の湯船にぷかりと浮いてしまう。


周防すおうさん、よろしければ弊社特注の服はいかがですか!? モデルをやっていただけたら格安で融通できるのですが!」

「きょ、興味がないわけじゃないんですが、すみません、踏ん切りが……」


 さんが前のめりに、つぐるくんに提案する。

 つぐるくん、モデルになってもいいと思うんだけどね。

 いざとなると、やっぱり二の足を踏んでしまうのが、つぐるくんっぽい。


「そ、それより、りりさ、本当に大きくなったよね。ちょっと触ってもいいかい?」

「ええー……っ」


 つぐるくんがさんの追及から逃れるためか、露骨に話をそらした。


「ちょっ……まあ、いいけどぉ……」


 クラスメイトに触れられるのはこれが初めてではない。

 というか、仲のい友達は、大体一度は、胸を触ってくる。

 ほとんどはSカップに触ってみたい興味本位だし、まあ女子同士のスキンシップの延長みたいなものなので、あんまりイヤとは言わない。

 ──まあ、中には露骨におっぱいが好きなだけの子もいるけれど。

 そういう子は例外だろう。

 つぐるくんも、前から持ち上げるようにしておっぱいに触れた。


「触るのは中学以来かな? ──うわ、でか」

「あの頃からそんなに変わってないってぇ。ちょっ、あんっ……んっ。つぐるくん、くすぐったいよぉ……」


 つぐるくんの触り方は優しい。

 さすが女子の扱いは心得てる、って感じ。

 ──それはいいんだけど、触り方が繊細過ぎてムズムズするぅ!


「女性のカラダなんだから、優しく触るのは当然だろう?」

「それにしてはなんか、触り方やらしいっていうか……んっ、あんっ……はっ」

「いやしかし本当に、りりさの胸は重いなぁ……こんなの抱えて生きていくの、信じられないよね」

「でしょ? マジで大変なんだからぁ……んっ、んぁっ……」


 つぐるくんは「ほう」とか「ふむ」とか、よくわかんない感心をしながら、おっぱいを持ち上げたり、揺らしたり。

 さんは特に気にせずに、温泉で目をつぶっていた。

 ひとしきりたんのうしたのか、つぐるくんは手を離す。

 触り方が乱暴じゃないのはいいけど、くすぐったいのもそれはそれでちょっとヤダ。


「いや、やっぱり昔より大きくなってる気がするね、りりさ」

「──つぐるくん、しばらく触るの禁止」

「どうしてだい!?」

「えっちだから。つぐるくんのえっち」

「女同士なのに……いやでも、それってりりさがボクを意識してくれてるってことじゃないかな? ふふ、りりさも素直になればいいのに──」

「いや、全然そーゆーんじゃないけど」

「なんでぇ!?」


 つぐるくんが涙目になってる。

 いくらイケメンの顔つきでも、お湯にJカップが浮いてると、さすがに私の恋愛対象としては範囲外だ。


(恋愛……)


 そういえば温泉で浮かれてたけど、恋愛で悩んでるんだった。

 具体的に言えば、トウジがモテ始めているかもしれないってとこで──。

 うーん、さんに相談してみる?

 でも学校内のことだしなあ。

 さんも仕事で疲れてるだろうし、ヘンなことを相談するのも気が引ける。

 せっかく温泉に来て、悩んでるのもなあ。


「そういえばぁ」


 さんが、温泉に入りながら、とろけた声で言う。


「ここの旅館、卓球があるらしくてぇ……」

「卓球!」


 私は思わず立ち上がった。ざぶんと湯船が揺れる。

 やっぱり温泉と言えば卓球だよね〜〜〜っ!

 体を動かすのは好きだけど、学校の体育ではおっぱいが目立つせいで、思いっきり運動できることは少ない。

 でも、ここなら遠慮いらないよね!

 まあおっぱいが重くて邪魔かもだけど、私だって多少は慣れたし?

 トウジを卓球でぶちのめしてやれば、少しはもやもやも解消するかもね!


「やったぁ、早速行こ行こっ!」

「ええ……りりさ、もう少し入っていても……」

「温泉ならいつでも入れるじゃ〜んっ! 先あがってるから!」

「子どもかな?」


 つぐるくんが苦笑する。

 だってだって! 卓球も数年ぶりなんだもん!

 私は早速、浴衣ゆかたを着直してから、トウジのいる離れに向かうのだった。

刊行シリーズ

俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた3の書影
俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎた2の書影
俺の幼馴染がデッッッッかくなりすぎたの書影