序章
「私の子供を作ってよ、
クラスメイトによる昼間の
二人きり。静やかなる空間に放たれた少女の声は、間違いなく
鼓膜が揺れ、脳が揺れ。なんてことを自分に頼むのだろうと、心が揺れる。
「
頼られるのは嫌いではなかった。自分が持ち合わせた小さな才芸で誰かに喜んでもらえるのならばと、かつては幾度となく精を出した。
……けれど、いまとなっては、もう。
「お礼だって、当然するよ」
上目遣い気味に乞う少女の顔を、
視線を外してしまえば、また瞳に映してしまうから。
白衣に袖を通したかのように白い少女の素肌と、僅かにその
男として素直にこの状況を楽しめたならどれほど楽か。
自分はそういう人間なのだと、自ら周囲に示してきたというのに。
学校一の美少女の下着姿での願いごとに、ただ首から上を
「私の病気を治せるのは、きっと
一方、少女の表情は羞恥からは程遠く。
同級生の男子に半裸を
「……いい加減、服を着ろよ。じゃないと……違う子作りをしたくなっちまうだろ」
平静を取り戻すべく、
この少女にも軽蔑されてしまえば、厄介事から逃れられると踏んで。
「大体、病気を治すってなんだよ。俺は医者じゃねーよ。それは未来のお前だろ、院長」
「なら、
いま目の前にいるのは本当に、全校生徒の憧れの的、あの
失望感で
月はいつでも、誰に対しても、同じ面を向けている。
その裏側を地球の民に見せることは、決してない。
秘められし裏の姿を知っているのは、世界を創作した神様くらいだろう。──が。