プロローグ
獣道を走る影があった。
人の手が入っていない山は陰気なほど草木が生い茂り、ささやかながら差し込む木漏れ日が逃げ道を指し示すようだった。
「なんで……」
こんな目に遭っているのかと影、
だが、答えを出す暇はない。
追跡者たちが木々の隙間に見え隠れしている。
追跡者たちは小型の恐竜、ラプトルのような見た目をしていた。頭の高さも地面から三メートルほどのところにあり、肉を
「ひっ……」
このままでは確実に追いつかれる。手元の文明の利器に頼るしかない。
視界が開けたタイミングで振り返り、銃口を向ける。狙いを定めるつもりもない。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる理論だ。
フルオートで連射された弾丸が原生林にばらまかれる。大木の樹皮を剝がし、小石を撥ね上げるその文明の暴力が追跡者に牙をむく。
金属同士がこすれるような
「やっぱりぃ!?」
有効射程内のはずだが、
身を
「ふへっ?」
突然視界ががくんと下がり、山の斜面を滑り落ちる。斜面はすぐに角度を変え、崖と呼んで差し支えのない傾斜となり、
「なんでぇ!?」
口癖を叫び、重たい音を立てて地面に着地する。つい最近地滑りでも起こしたか、崖の底は腐葉土がたまった柔らかな地面で
たいして深くはなかったのも幸いだったとほっと息をついた
四頭の追跡者たちは
どうしよう、どうしようと
「……コンテナ?」
土砂崩れに巻き込まれて放棄されたらしい貨物用コンテナが転がっていた。
手持ちの銃は役に立たない。だが、コンテナの中に何かあるかもしれない。
というより、前後を挟まれている現状で活路はコンテナの中身にしかない。
「……うひっ」
コンテナに残されていたのは高威力の銃や弾丸ではなかった。
大量の掘削用爆薬だった。
二方向からどすどすと追跡者が迫る足音が聞こえる。興奮気味の鳴き声が近づいてくる。
せめて見つかりませんように。
そんな淡く
臭いでもたどったのか、それとも
「うへっ、ようこそ……?」
意外と
それを見ながら、
「爆発オチなんて、さ、サイテー」
引き金を引いた瞬間、飛び出した弾丸が
たちまちバッテリーから噴きあがった炎は周囲の掘削用爆薬に引火、コンテナは
爆音
「お仕事だから……ごめんなさい」
ぽつりとつぶやいて、