隣のゴリラに恋してる

プロローグ

 人は外見よりも中身――なんてよく聞く言葉だ。

 特に芸能人なんて、結婚の時に芸能記者の『お相手のどこが決め手になったんですか?』というインタビューに『やっぱり、人柄ですね』と当たり障りのない返しをよくしている。

 けど、俺は声を大にして言いたい。反感を買うのを百も承知で言いたい。

 ――いや絶対顔だろ! 顔で選んだだろ!

 勿論、美人だからイケメンだからで百パー決めた訳じゃないんだろうけど、『顔が良くて、しかも性格も良かったから』が本音だと確信している。

 というか、美形じゃないにしてもだ。好みの顔はあると思うんだよ。

 純朴そうな顔がタイプだとか、キツめの顔がいいとか、ハーフっぽい顔立ちが好きとか。

 その入り口があって興味を惹かれて、話してみたら楽しかったとか面白かったとかドキドキさせられたとかで、軽い好きから本格的な好きになっていくんだと思う。全員が全員じゃないにしろ、大半の人はそうだろうと。

 普段と違う笑顔や真面目な表情を見て好きになった、みたいなパターンもあるよな。あれだって『いつもとは違う一面』みたいに言うけど、大体は顔のことを指していると思う。

 つまり俺が言いたいのは、あくまでも好きになる取っかかりは外見で、いくら中身が良いとしても完全に好みと違う場合は恋愛感情にまで発展しないんじゃないかってことだ。

 ……それが俺の意見だと踏まえた上で、告白する。正気を疑うような内容だが、とりあえず聞いて欲しい。



 ――どうやら俺は、隣の席のゴリラに恋をしかけている。