電波女と青春男

一章『宇宙人の都会』 ①

 青春ポイントの話をしよう。

 青春ポイントの、一度の行動による最高かくとくてんすうは5点満点。行動のいちれいげてみるとだ。

 まず1点の行動。これは休み時間に女子とあいない話をしたり、学校帰りに男友達とめしを食う、言ってみれば学生生活をとうしていればたいていにちじようてきさんされるポイントと言える。

 ただし青春ポイントは放っておくと日々げん退たいしていくので、これだけではプラマイゼロになりかねない。その時その時は何だか楽しかったけど、卒業して振り返ったらとくひつする思い出がなかったぜ、とこうかいするのうせいが高いので、げんじようあまんじてはいけないのだ。

 次に2点。これはさっきの通り、夜の公園で同年代の女子と会話するといったものが代表的か。1点行動に『夜の』とか『かつ中に』といった、ふんじようきようすることで加点されることが多い。1点が基本なら、2点はおうようとも言える。こちらは毎日といかないが、ざとく生活していれば決して少ないかいってこともないだろう。

 続いての3点行動まで来ると、せいこうりつにまでずいぶんかくていようじってくる。バスケットのスリーポイントと考えてくれたらいい。ここ一番で決めるのはむずかしい、だけど決められればそれまでの流れさえ変えられる可能性もめている。かんちようせんしたいところだ。

 がれるあいとデートするのは、じゆうぶんに3点獲得のりよういきだ。ただ、ここで大事なのは、正式に恋人どうとなった相手とデートしても、点数が加算されることはほぼないということである。あくまでも片思いか、恋人未満の相手というじようけんが制限されている。

 ここらへんせんきがあいまいちがえやすい。ゆめゆめ注意されたし。

 他に3点は複数人での行動、といった特別ケースも取りあつかっている。いきおいにまかせてみんなで旅行へ行ったとか、部活のいん退たいに何かおこなうとか。ただ、ここまで点数が高まるのはまれである。

 4点こうは、機会が限定されている活動にあたえられることが多い。ぶんさいが良い代表例だろうか。ただしばくぜんと参加するのではなく、目的しきと、それにくわえて連れう相手だいで点数の減点を防ぐひつようはあるが。

 一方、体育祭はほどしゆうが高まって、ねつけつふうちようが成り立っていなければ点数を加算することさえ難しい。運動能力は個人差が大きいためり上がりきれない人が大多数だからだ。

 卒業式も、やり方次第では点数を引き出すイベントと言える。かんしようてきな気分に、ずかしさを上回ってひたれる人はねらってみるのもいつきようだと思う。

 そして5点はある意味、じゆんに大きく左右される。個々のかんによって、「これだ!」と一つきわつ思い出があるのなら、それはその本人だけの5点満点となっていいのだ。

 せいためはじがいぶんもなく町をけ回ったとか、こうえんで優勝してみたとか。トラウマとえいこうじり合うきようかいせんを踏み続けてしつそうした人間だけが、最高点へとうたつ出来る。

 1点をかくとくない生活のやつは、まずこの5点のへんりんさえ見つけられない。

 しゆんほん社会の中でしかはぐくまれない、ということだ。

 ようりようりようめぐまれた奴は、高校三年間で20点以上のちよきんかせぐことさえのうだ。その貯金はそこからさきの進路、大学進学やしゆうしよくさきでは、たいしたさないだろう。

 だけど死ぬぎわまんぞくかんが、つうの人とは天と地の差を生む。

 人生の『てい』はその『結末』のためにあるのだから、に高校生活がじゆうようか分かるだろう。

 ……ま、ひまだったからそつきようで定義してみただけなのだが。

 両手が動いてるのにのうとはへだたりを感じていたので、つい頭をはたらかせてみたのだ。

 しかし、段ボールにキュッとぶつめることにかいかんともなっている俺は何フェチなんだろう。せいとんフェチ? 上下運動マニア? 長方形しんぼうしや


「いやー、人間はほんとぶんるいっつーの、ジャンル分け? がきだよなぁ」


 自分のこうに、まえの口でっ込みを入れながらはなうたえんそうしてだまはテレビをいちべつして両手はせっせとづくり。段々と物が失われてさびしくなるしつふうけいたいしようてきに俺は浮き足立っている。そくではあったけど精神のこうように引きずられてそうごう的にはぜつこう調ちようだった。

 学園物RPGのしゆじんこうが良く辿たどる、両親が海外にん→高校卒業まであと二年のむすの家へ預けられる→転校のけんを得てからようやく三日がけいして引っしまで残り四日間で、すいぜん中な俺は今、人生のぜつちようむかえた気分。

 迎えている春休みに短いともんらなかったのは今年が初めてだ。

 むしろ新学期がち遠しい。

 何と言っても転校先はかいである、クラスの生徒数が二十人ってことはあるまい。こうばいのパンのメニューがカレーパンだけってこともあるまい。ひょっとしたら学校のしきないにコンビニとかカットせんもん十分千円のとことか開店してるかも知れない。

 今まで通ってきた高校生の時間は、青春ポイントでていしてしまえば正直、マイナスだった。入学当時をゼロじゆんにすれば、マイナス3ぐらいだろうか。日々にしようされていく、寿じゆみように近い減点をおぎないきれなくて原点のさえやりげられなかった。だけど、これからは違う。


「ふははは、ふひっ」とりんじんがいれば隣々人になってしまいそうなうす悪いみを浮かべてゆうえつかんに手足をしびれさせる。テスト期間解放後に見られる、きんちようけ出す時のざんにそれはていた。ここ良い。さんはんかんほど良くイカレた、なみられるかんかくってやつなんだろうか。


「海、行ったことないからなぁ」都会に住みだしたら、一度は電車に乗って行って、青春ポイントをおおはばに稼いでやろう。出来れば女子とペアか、なら男女こんせいグループにまぎれ込んで。

 小学校のときに一枚だけもらったことのあるしようじようを二つめの段ボールのそこいて、その上にひもしばった教科書一式をどかどか詰め込む。「あーでも、教科書ってあっちで買い直すんかな」


 ボロアパートから引っす時に、古いれいぞうどうしようかしらとなやむキューティクル女子大生ばりに首をひねって取りせんたくを楽しむ。

 新生活の場の説明には、たいはんの高校生がこうやってむねおどようがふんだんにふくまれていた。