年下の女性教官に今日も叱っていただけた2
第2話 美少女たちと一緒に牢屋に入れていただけた①
エヴァンジェシカさんに愛刀の切っ先を突きつけられながら、俺は集落の北側にある岩山を登ることになった。牢屋はこの岩山の中腹にあるらしい。
こっそり周囲を見回し、この島の地形を頭に入れながら、歩を進めていく。
5分ほど歩いたところで、ちょうど俺の背丈くらいの高さの洞窟が見えてきた。
「あの洞窟の中よ。先に入りなさい」
命じられて洞窟を進んでいくと、一番奥に、鉄格子のはまった牢屋があった。
大人4人が何とか寝転がれるくらいの空間に、リリアさんとシエラさんが座り込んでいる。
「――レオンちゃん!! よかった!! 無事だったんだね!!」
俺の姿を認めるやいなや、シエラさんは両手で鉄格子を握りしめ、喜びを爆発させた。
それを見たエヴァンジェシカさんは眉をひそめる。
「シエラ、まだ反省していないの? 石コロは赤ちゃんじゃないでしょ?」
「違います! レオンちゃんは私の赤ちゃんです!」
「意味がわからないわ! この男はさっき、18歳だと言っていたわよ! アナタが産んだとしたら、計算が合わないじゃない!」
「違います! レオンちゃんはまだ0歳です!」
「なぜ誰がどう見ても一発で嘘だとわかることを言うの!?」
「違うんです、エヴァンジェシカさん。シエラさんの中では真実なんです。俺はシエラさんの前でだけ0歳になるというか」
「はっ……? 石コロまで何を言い出すの……?」
本気で理解できないという顔をされてしまった。
とはいえ、この概念を理解できる人間は、おそらく世界に1人もいないことだろう。
「……まぁいいわ。アナタたちはしばらくここで反省しなさい」
そう言って、エヴァンジェシカさんは2人がいる牢屋の扉を開けた。
「――えっ? 2人と一緒に収容されるんですか?」
「当然よ。この島には牢屋はこれ1つしかないんだから」
なるほど。島民が20人しかいないのだから、牢屋が複数あっても持て余すのだろう。
つまり俺は今から、このプライバシー皆無の狭い空間で、リリアさんとシエラさんと3人で過ごすことになるわけか……。
何だそれ。最高じゃないか。
俺は胸を高鳴らせながら牢屋に入った。
直後、リリアさんたちと同じような鉄球付きの足枷を着けられた。
正直、このくらいの負荷であれば普通に動き回れるのだが、量を増やされたら困るので黙っておこう。
エヴァンジェシカさんは俺たち3人を一瞥した後、扉に鍵をかけた。そして鍵をスカートのポケットに入れ、洞窟から出ていった。
「――レオンちゃん!! 会いたかったよ!!」
何とか牢屋の鍵を盗めないか考えていると、背後からシエラさんに抱擁された。背中にやわらかいふくらみを押しつけられ、思考が一気に吹っ飛んだ。
今のシエラさんは水着鎧姿だ。制服を着ている時よりも、胸の感触がダイレクトに伝わってくる……!!
ニヤニヤしていると、リリアさんにジト目を向けられた。
「ちなみに、なぜレオンさんは投獄されることになったんですか?」
「それは……ブタのモノマネをしたせいで……」
「はっ……?」
リリアさんは理解できないと言いたげだが、事情を説明するのは難しい上に恥ずかしいので、適当にごまかすことにした。
S S S
牢屋に入れられてから30分ほどが経過した頃、エヴァンジェシカさんがお盆に載せた豪華な食事を持って現れた。
こんがり焼いた骨付き肉、野草とキノコのサラダ、芋と豆のシチュー、大きな葉っぱに包まれたご飯。デザートと思しき野イチゴまである。
ただし、お皿は2つずつしかない。
「リリア、シエラ。食事の時間よ」
エヴァンジェシカさんは当然のように、女性2人だけの前に食事を置いた。
「どう? この島で暮らせば、こんな食事が毎日食べ放題なのよ? その上、やりたくないことや面倒なことは何もする必要がないの。すべて男にやらせればいいんだからね」
なるほど。牢屋に入れられているとは思えない待遇だと思ったら、懐柔するためか。
「言うまでもないことだけど、石コロの分はないわ。2人の食事後に、食べ残しを恵んでもらいなさい」
やはりそういうことだった。
さっき残飯を恵まれている男たちを見たから、薄々予想はしていたけど……。
「そんなのダメです! レオンちゃん! ママの分を食べていいからね!」
シエラさんは抗議しつつ、自分の食事をすべて俺の前に移動させた。
エヴァンジェシカさんは嘆息する。
「アナタたちには教育の必要がありそうね。食事をしながらでいいから、島の歴史について聞きなさい。
この島は今は平和だけど、昔は暴力に支配されていたの。身勝手な男たちが、地位や女性を巡って、頻繁に殺し合いをしていたからよ。そのせいで、島の人口は激減してしまったわ。
そこで先代の島主――ワタシの母は行動を起こしたのよ。島中の女性たちを結束させ、男どもからすべての武器と権利を奪い、女性主権の文化を作ったの。それ以来、殺人は一件も起きていないわ。
男はプライドが高くて、頑固で意見を曲げず、気配りができず、謝るのが嫌いで、争いを好む愚かな生き物。
一方、女性は他人の気持ちを察するのが上手くて、社交的で柔軟な発想ができて、愛情深くて忍耐強く、争いを好まない。だから平和のためには、女性が男どもを適切に管理してあげる必要があるの」
「なるほど……!!」
ものすごく納得してしまった。やはり俺は残りの人生をこの島で暮らすべきだ。
「レオンさん、騙されないでください。今の発言はかなり偏ったものです。それに、このやり方は今のところ上手くいっているだけで、未来永劫破綻しない保証はありません。もし次の女性のリーダーが争いを好む人間だったら、どうなると思いますか?」
「大丈夫ですよ。女性は社交的で、愛情深いんですから」
「この短い時間で洗脳されすぎです。自分で言うのも何ですが、わたしが愛情深いように見えますか?」
「――ああっ!!」
「失礼なことを言わないでください」
納得しただけなのに、殴られてしまった。



