Fate/strange Fake(1)
プロローグⅡ 『バーサーカー』 ②
「その覚悟をしてでもみんなが追い求めるものなんでしょう? ますます見たくなるじゃないですか!」
あっさりと答える青年に、よく考えろと怒鳴ろうとしたが──。
──多分こいつは、よく考えても同じ答えを出す。
という真理に
「おまえは、それだけのために相手を殺す覚悟があるのか?」
「うッ……。殺さないで勝てる方法とかは……チェスで決めるとか……」
「ああ
「……むずかしい問題ですよね。他の英雄とかも凄く凄く見てみたいし、できれば仲良くなりたいじゃないですか! 英雄を六人も友達にできたら、これ、魔術師として凄いでしょ! 世界征服だって夢じゃないっすよ!」
相手の話を聞かぬどころか、途中から趣旨が完全にずれているフラットの言葉を聞いて、エルメロイは完全に沈黙する。
ところが、怒鳴りつけることも
やがて、ハっと正気に戻り、
「……駄目に決まってるだろう」
と、にべもなく突き放した。
「ま、ま、ま、頼みますよ教授! いえ、グレートビッグベン☆ロンドンスター!」
「本人を目の前にして二つ名で呼ぶな! しかもよりによってその二つ名を選ぶか普通!?
「そこをなんとか! 教授にピッタリな新しい二つ名を考えてあげますから! ええと、ほら、『絶対領域マジシャン先生』とか!」
「死ね! 永遠に卒業できんまま死ね!」
× ×
結局冷たくあしらわれたフラットは、あからさまにションボリとしながら学府内をうろついていた。もう
すると──
「あ、ちょうどよかった」
と、階下にいた女性から声をかけられる。
「これ、あなたのところの教授への荷物よ、渡しておいてくれるかしら」
そうして、彼は先刻一方的に突き放されたマスター・Vへと荷物を届けることになったのだが──。
──うう、まだ怒ってるだろうな。
と、ネガティブな想像をしつつ長い階段を上る最中──彼は箱の中身が気になって、透視の
それは、何か儀式で使われるような、
次の
──これは……もしかして!
──教授……! 俺のために!?
自分勝手ここに
箱の中には色々と文字が刻まれていたが、自分にはまったく読めない文字だ。恐らくは異国の魔術的な説明書きか何かだろう。
だが、その文字の内容を解読するよりも先に、彼は一心不乱に学舎の中を駆けだした。
× ×
「やれやれ……また来たか」
廊下の奥から走ってくる姿を見つけて、エルメロイⅡ世はあからさまに嫌な顔をしたのだが──フラットは手にした小包を掲げながら、
「教授ッ……こッ……こッ……この荷物ッ……おれッ……
百メートルを
一方の教授は、何事かと箱を見たのだが──そこに書かれていた住所や包装紙のロゴマークなどを見て、ああ、と
「ああ、こいつは……なんだ、君はこれが欲しいのか?」
その問いに対し、ヘッドバンキングをするようにブンブンと首を
「まあいい。君が欲しいならくれてやる。私には必要のないものだ」
教授の答えを聞いて、フラットは人生で最大といってもいい輝きを顔の上に浮かべて見せた。
「ありがとうございます! 本当に……本当にありがとうございます!
半分涙ぐみながら駆け去っていく弟子を見て、
「まったく、私の若い
数分後──。
自室に戻ったエルメロイⅡ世は、
物理的なものと
それは、特殊な保管ケースに収められた、一枚の布地だった。
見るからに年代物の一品であり、
だが、部屋のあらゆるものの中で最も
「他のサーヴァントを従え、世界征服とはな……」
先刻のフラットの
「まさか、私の弟子からそんな
そして、ケースの中の布地を、どこか
「どうしても止められぬようならば、これを渡す事も考えたが、そうならずに済んだことに
エルメロイⅡ世は眉を顰めたまま
「しかし、私が言えた義理ではないが、個人宛の荷物を他人に届けさせるというシステムも考え物だな。別段重要なものでもなんでもないが」
「まあ、なんにせよ、あの景品で
数カ月前──。
教授は自室で趣味である日本産のゲームに
わざわざ高い切手を
もっとも、彼はそうした商品のほとんどに興味がなく、純粋にゲーム会社に意見を反映して
そして、数カ月後──。
本当に欲しい商品があれば直接注文して買いそろえるタイプの彼は、小包に書かれた日本のメーカー名を見て『またいつもの特典商品だろう』と判断し、目を輝かせながら迫ってくるフラットに開封もせぬまま贈呈してしまったのだ。
彼の判断した通り、それはいつもの通り、ゲーム関連のプレゼントだった。
彼はメーカー名から、ロボットを主体としたゲームのアクションフィギュアか何かだと思っていたのだが──。
実際は、『大英帝国ナイトウォーズ』と書かれたシミュレーションゲームのものだった。
そして、その特典の商品とは──────。
× ×
数日後 スノーフィールド市 中央公園
頭上に
フラットは準備もろくにせぬまま飛行機に飛び乗り、そのままアメリカ本土へと渡航していた。
そんな状態の、参加資格
彼は現在、自分の右手に浮かんだ
「カッコイイなあ、これ。
しげしげと手をさすり、時折何かを
「消えちゃうみたいだ。よし、令呪は絶対に使わないようにしよう!」



