アリソン

序章

 世界れき三二五六年 ぼうしよ 昼


 なのですか?

 何故、こんなものを見せるのですか?

 何故、私なのですか?

 何故、今なのですか?


 今から私は、数千を超える人間を、考えられ得る最もざんにんな方法で殺そうとしています。

 たくさんの人間が、たくさんの夫や息子や父や兄や弟が──

 土の上でちつそくして、もだえ苦しみながら死んでいくことでしょう。


 私は、だいの殺人者になろうとしているのです。

 そうなることを、悩み抜いた末に納得したのです。

 もう戻れない道であることも知っていながらです。

 そんな私に、そんな今に、、こんなにも美しいものを見せるのですか?


 それでも──

 今から私は、私の義務を果たさなければなりません。


 またいつかだれかが、ここにくるのでしょうか?

 こんなにも、美しいものを見るのでしょうか?


 今まで自分が信じてきたこと。

 そして、これから自分が信じなくてはいけないこと。


 なのだろう。

 何故、こんなものを見るんだろう。

 何故、私なのだろう。

 何故、今なのだろう。


 分からない。

 分からない。

 分からない。


 いつか分かる日がくるのだろうか?


 分からない。