30ページでループする。そして君を死の運命から救う。
第一ループ ②
第一ループ(6/30)
教えが
──そう、まずは
機械造形は威圧するようなサイズ感だが敵意ある挙動は感じられず、
上段に位置するのは、時計。いや、一般的な一二の数字が並ぶデザインと違って、アラビア数字で〇から九まで全部で一〇個の数字が円形に並んでいる。時計というより数字
中段に位置するのは、本だ。イーゼルのような無骨な鉄筋で組み上げられた支持体に固定され、見開きの状態で置かれている。そしてその支持体の
下段に位置するのは、
──数字盤、本と機械腕、天秤。機械造形を構成するそれらがただのデザインには思えない
第一ループ(7/30)
が、では一体なにを表しているというのか?
噴き出す汗を拭いながらしばらくその場で注視していたが、どれも目立った変化はなかった。
機械腕は初見のときこそ本の白紙を埋めるようにガシャガシャと作動していたが、
そして数字盤も……いや、いましがた長針が『7』を指した。短針は変わらず『0』。『7』『0』で『70』……というより『0』『7』で『7』か。さっきが『6』だとしたら順にカウントしていて後者のほうが正しい気がした。しかし、なにを示しているんだ? それまで針は二〇分経っても動かず、数字の配列からも単に〝時〟を刻んでいるとは思えないが……。
「……サッパリだ。ここから観察しているだけじゃ全容は
次に携帯を手にして調べた。だが、ニュースサイトを複数チェックしてもそれらしき記事は載っていない。
「どういうことだ? なんでネットでだれも騒いでいない?」
嫌な予感がして慌てて通りに出た。ネットの反応が
第一ループ(8/30)
なリアクションを……。
気づいていなかった。エコバッグを
「おいおいなに素通りしてんだよ……見上げれば明らかに異常があるのに……」
そこで携帯のアドレス帳を開く。四ケタに達している
「空を見ろ? 見てるけど別におかしな点はなんもねえけど?」「機械造形?
知り合いたちも機械造形を認知していなかった。
「いやいや、調査屋が話上手なのは知ってるが、さすがにそれは脚色がすぎんだろ」
電話をかけ続けて一八人目。名簿屋が冷めた感じで笑った。
「脚色じゃねえよ! 空に浮かんでるだろ、巨大な機械のオブジェがっ! 数字盤と、本と、天秤のっ!」
「おい、朝からいい加減にしろよオマエ。〝あの子〟捜しすぎて頭イカれちまったのか。それ以上騒ぐと今後の付き合い考えるぞマジで」
第一ループ(9/30)
「あ、いや、それは……ネタ、だよ。そう、ただのネタネタ! やだなー、マジな声出しちゃって。まさか本気にしちゃった? あははは」
名簿屋が本気で
その後も
──みんな本当に機械造形が見えていないのか? なんで、なんで、なんで……。
──これだけの数がいればひとりぐらいいるはずだ。俺と同じように空を見上げて驚くような反応をしている人物が……。
だが、いない。
中空に浮遊する機械造形を見上げている者などだれひとりとして。
第一ループ(10/30)
見ているはずなのに、
──なんでだれも機械造形に気づかないんだ……この世界はおかしいぞ!
だが、そんな人物どこにもいない。
だれもがいつもの日常からはみ出していなかった。
明らかに異常な物体が頭上に存在しているのに、一切感じ取れていない様子でスタスタと過ぎ去っていく。
道行く人々に尋ねても尋ねても話が通じない。〝こちら側〟だった日常は〝あちら側〟に、〝あちら側〟だった非日常は〝こちら側〟に。〝あの子〟捜しで歩き慣れた名古屋の街並みなのに未知の惑星を
気づいたら太陽は空の頂点に達しかけ、放射状の光線を放っていた。
結果、すべて空振りに終わった。ネットも、電話も、そして直接の声掛けも。



