エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す
エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す ①
暗闇の中、強い光が
光源は、部屋の隅に置かれた液晶モニター。
モニターの前には、小学生ぐらいに見える二人の少女が椅子を並べて座っている。
キーボードを打つ音が部屋に響き、時おりマウスのクリック音も聞こえる。
一人の少女は長い髪を後ろで結んでおり、右手にはマウスを握っている。左手は
「ねえお姉ちゃん、次は?」
画面を操作する少女がそう言うと、隣に座って画面をじっと見ている少女、
「次は右から来ると思う。
画面には、現実と見分けがつかないほどのバーチャルな戦場が広がっていた。
中央にはアサルトライフルの銃身が、その上には小さな照準器が光っている。左下には残弾数や残り体力が示され、左上には地形が一目でわかるミニマップが表示されている。
そこで画面がピタリと止まった。
その右手は、まるで時間が止まったかのようにぴくりとも動かない。
数秒後、
瞬間、画面上のライフルから弾丸が吐き出された。
二人がいる部屋に、銃声と、敵を倒した時の効果音が鳴り響く。
──相変わらず、
「この次はどうしよう?」
と
「えっと……次は少しタイミングを外してくると思う。こっちから攻めれば勝てるよ」
画面上の視点が動くスピードが一気に加速する。
極めて正確な操作によって、壁スレスレの位置を高速で移動していく。
すると、急に人影が現れた。その銃口はこちらに向いている。だが、相手の銃が火を噴くことはなかった。人影が現れたとほぼ同時に、
画面上には、勝利のメッセージが大きく表示されている。
画面を見ていた
その顔は無表情に見えるが、
「相手の人、最後びっくりしてたね」
「うん。前に出てくると思ってなかったと思う」
「どうしていつもお姉ちゃんが言う通りになるの? ほんと、魔法みたい」
「これまでずっと最速で詰めてたから。警戒してなかったの丸わかりでしょ」
「わかんないよそんなの。最速って、秒数数えてたの?」
「
「そんなことしてるのお姉ちゃんぐらいだよ」
「私だけじゃないよ。お父さんだってやってる」
「本当かなあ。あ、そうだ! お姉ちゃんもプレイする?」
「私は見てるだけでいいよ」
「なんか私ちょっと疲れちゃった。マウスとかキーボードが家のと違うからやりにくい」
そこで、二人がいる部屋が急に明るくなった。
二人の両親が、部屋に帰ってきていた。
「まだやってるの? 寝てると思ってた」
「まあまあ、せっかくの海外なんだからいいじゃないか」
「部屋でゲームするなんて、それこそ日本でもできるじゃない」
「
「お父さん、練習どうだった?」
父の声に、眠そうに目をこすっていた
「見たい」
と言って父に近寄っていく。
「そんなこと言ってないで、もういいから寝なさい。あなたも明日早いんだからもう寝てよね」
母にそう言われて洗面所へと向かう父の背中を見ながら、
ただの海外旅行ではない。
「お父さん、明日勝てるかな」
母がつぶやくのが聞こえた。
「うん、勝てると思う」
翌日、父は朝早くにホテルを出て一人で会場に向かった。
「ねえお姉ちゃん、今日のお父さんの相手ってどんな人?」
「どんなって、アメリカ代表だから強いよ」
「試合見たの?」
「ちょっとだけね」
「本当? どんな感じか教えて」
そう言って
「
「大丈夫だよ、ちゃんと見てるから」
「見てないでしょ。さっきもつまずいてたし」
アメリカの道路は日本に比べて道があまり舗装されていないし、車の運転も荒い。
普段は母も
「けど私、お父さんがしてるゲームよりも、いつも家でやってるゲームの方が好きだな」
そうつぶやく
他人からは、
ただ、
「
「相手がいる場所だけ
「まあ、確かに
「それに、あっちだったらお姉ちゃんとも一緒にできるし」
「私と一緒にプレイしても、
「文句じゃないよ。お願いしてるだけ」
「あれはお願いって言わない。
実際、
「それはやだ」
「え?」
突然の強い否定に、
「お姉ちゃんと一緒にゲームやってる時が、生きてて一番楽しいもん」
「……生きててって、



