よって、初恋は証明された。 -デルタとガンマの理学部ノート1-
第一章 薄紅が切り取る領域で ⑪
「どうした?」
「うーん、なんだかどれもしっくりこなくて……
俺にはいわゆる映えというような美的センスが欠如しているので、
「背景が
「なるほど!」
「…………?」
混乱する。
「片手が埋まっちゃってるから、
この理屈は分からなかった。
「親指と人差し指でハートを作るやり方があるんじゃなかったか。よく女の子がやる」
「それは指ハート! これは
「なるほど……?」
確かに、指ハートとやらは
しかしその足りない手を、俺に頼むだろうか?
でもまあ、
隣に立って、
だが、心臓が跳ね上がるようでいけない。耳が熱くなっているのが分かる。汗が垂れた。
結局俺は、すぐに手を引っ込めてしまった。
「……?」
「いや、女の子同士なら、まだいいかもしれないけどな……」
変に意識していると思われたくなかったので、少しぼかして言った。
「あっ……ごめんね! すごく
「いや、別に謝ることではない。違う形はどうかと提案してるだけだ」
「じゃあさ、二人でピースにするのはどう?」
この理屈は全く分からない。
「……ピースなら、一つでもいいんじゃないか?」
俺の提案に
「気付いたんだよね。私がこの写真に手を写り込ませるのは、今この瞬間の一意性を切り取りたいからなんだ、って」
「一意性……?」
数学でしか聞いたことがない用語だった。
「そう。
確かに間違いのない論理的な説明だった。
まあピースくらいならいいだろう。断る理由もなかったので俺は
「もう少し、寄って!」
この少女が無自覚に落としてきただろう男たちのことを思って、心の中で合掌した。
かしゃり──
薄紅の桜に縁どられたハート形の青空の手前で、逆光気味にほんのり暗い二つのピースサインが並んでいる。ちょうどアルファベットのWのような形になった。
「うん、いい感じだ。ありがとう!」
その後、日も傾いてきたので俺たちは足早に山を下りた。校門まで戻ったころには、もう夕方になろうという時間帯だった。
「そうだ。
並木道を街の方に向かって下りながら、
「さっきの写真、送るよ」
「ああ……ありがとう」
そうして俺と
並木が終わると分かれ道だった。俺の自宅は市内にあって、並木道から左に曲がるのだが、
俺たちはそれぞれの帰途に就く。
海上の発達した雨雲が、夕日の方へと暗い腕を伸ばしつつあった。
「うっわ、すごい雨!」
夜、妹の声で外を見てみると、景色はまるで嵐のようだった。
窓を
その手前に、
自信満々に胸を張るピースサインと、猫背で気の抜けたピースサイン。
手だけでこれほど性格の差が現れるのかと、俺は感心すらした。
嵐はなかなか
ふと考える。
ひょっとすると──
もしそうだとすれば、例のくだらない迷信を前提とする場合、まずいことになる。
一九年の間、毎年恋愛
二〇年連続の記録が達成されるかどうかは、俺と
きちんとハートが見えたことは、



