魔導人形に二度目の眠りを

プロローグ

 人間の変異種の出現を初めて記録したのは、聖王暦七二三年とされている。


 記録にある最初の変異種は、貧しい漁村で暮らす漁師だった。彼は肌を灰色に変え腕を生やし六本にした。背中に翼が生え、筋骨隆々とした大柄な体格へ変貌すると、共に暮らしていた老母を力任せに引き千切りざんさつまたたに漁村を全滅させた。


 姿こそ違えど、漁師のような変異種は続々と現れるようになっていった。共通点は、人間から姿が変わること。人間を殺害すること。そして、交配することだった。

 変異種が数を増やしていくと、町から、都市から、国から、人間がいなくなった。


 これら人間の変異種は、寄生型の小さな生物に侵入されたが故の結果である──そう人間たちが正答を導く頃には、彼らは大勢力を築いていた。


 人間たちは、これら寄生型生物をそう、変異種を宿主と呼称。

 家族を、友人を、町を守るために、国と人種を超えた団結が求められた。


 そして、人間とそうとの戦いが幕を開けた──。