ソードアート・オンライン オルタナティブ ギャンブラーズ・オナー

「おじさんって伝説のギャンブラーだったんでしょ? ALOのカジノで取ってきて欲しいレアアイテムがあるんだけど!」


 店に飛び込んできた蓬田遥がそういった。

 ものすごい頭痛のしてくる言葉だった。一つの発言にツッコミどころが多すぎて、何から返事をすればいいのかわからない。

 巴啓司はまず銅板を見て、串でタコ焼きをひっくり返すことにした。焼き上がったそれらを皿に盛り付け、待っていたお客さんへと配膳。注文を全て提供し終えたことを確認し、コンロを離れても問題ない状態まで整理して、キッチンを出てから改めて問いかける。


「ALOってなんだっけ?」

「アルヴヘイム・オンライン! 僕がやってるタイトル!」

「あー、あれだ。インターネットのゲーム」


 啓司としては最大限の理解を示した表現だったが、遥の気には召さなかったらしい。

 彼女はキッと眉をつり上げ、こちらをにらみつけてくる。けれど彼女の身長は啓司の胸辺りまでしかないので、そうしたところで大した迫力はない。


「なにそのおじさん臭い表現! VRMMOっていうジャンル名があるんだけど!」

「つまりカジノのVRMMOを君はやってて……」

「それも違う! ALOのジャンルはファンタジー! その中にカジノがあって、今イベントが行われてるの! そこで取ってきて欲しいレアアイテムがあるの!」

「はぁ、なるほど」


 と頷いたものの、出てくる単語が全然ピンとこない。

 そんな反応に焦れたのか、遥は地団駄を踏んでみせた。


「おじさん、伝説のギャンブラーだったんでしょ? できるよね?」

「……その聞き覚えのないダサい肩書きを誰が君に吹き込んだのさ」

「彼方がそういってたよ」


 挙がった人名に大きく溜め息を零す。


「君の兄がいうことは二度と、何一つ信用しないように」

「とーにーかーくー! アイテム、取ってきてくれるよね?」

「あのね、確かに俺は一時期、ギャンブルで生計を立ててたよ。でももう引退したんだ。今は見ての通りのタコ焼き屋さん」

「でもギャンブルができなくなったわけじゃないでしょ?」

「色々あったからギャンブラーをやめるって決断したんだよ。一度そう決めたことは、簡単には覆せない」

「えー、でも僕、あのアイテムは絶対に欲しいの! おじさんは優しいもんね? そんなこといいつつ、僕の頼みなら頑張ってくれるもんね?」

「だからやらないって。どれだけ頼まれても関係ない。引退するっていうのはそういうことなんだから」

「おーねーがーいー! 僕のためだと思ってさー! 一生のお願いだから、ねー!」


 拝み倒してくる遥に対して、啓司は厳然とした態度を保った。


「絶対に嫌だね、絶対にだ!」


 

 結論からいうと、翌日、啓司は遥に連れられてアミュスフィアを買いに行くことになった。