7:Alters
〈レギオン〉は夢を見ない、が
※Ep.14読了後にお読みください※
〈レギオン〉は夢を見ない。
そのはずなのだがその日、
……いや、どこだかは知っている。先日、特記戦力”バーレイグ”との対話のために降りた
残念ながらその時とは違い、バーレイグは――思ったよりも若い少年だった人類側の
「――お。やっと来たな。ノゥ・フェイス」
ぶぉんと不吉な風切り音と共に誰かが言って、ヴァーツラフが見ると二十歳過ぎくらいの青年だ。赤い髪に黒い瞳。銀縁眼鏡と砂漠迷彩の野戦服。
何故かごっついシャベルで素振りを繰り返していて、不吉な風切り音の正体はこれだ。優しげな
というか思いきりエッジが研がれているし、そこにはいない何か、あるいは誰かに繰り返し叩きつけられているのもシャベルの腹なんて生易しい個所ではなくそのエッジの部分だ。斬れそう、ではなく多分、実際に人くらい斬れる。
そこはかとない脅威となんだか嫌な予感を覚えつつ、ヴァーツラフはそっと問う。
「君は?」
〈レギオン〉としての識別名を知っている以上、同じ〈羊飼い〉の誰かだろうが。
青年はやっぱりシャベル素振りを繰り返しながら答える。
何故か輝くばかりの笑顔で。
「覚えてないと思うなぁ。でも一応名乗ろうか。識別名デュラハン。二年前に共和国戦線で撃破された
「ああ、あの……」
妙にバーレイグに執着していた。
と、言いかけたところで、ヴァーツラフは気がついてしまった。
つまりこの青年は。
先日。そのバーレイグとの対話で。図らずも自分が模してしまった。
青年の笑みが深くなる。
「気づいてくれたか。そう、おれはあいつの……詳しくは言わないけどバーレイグの関係者だ。このまえ貴様が、よりにもよっておれの姿で痛めつけてくれたバーレイグの、な」
ぶんっ! とひときわ大きな音を立てて、殺意たっぷりのシャベルが空を切る。
憤りの深さのあまりにむしろ貼りついてしまった笑いが、嚇怒にぎらぎらと
「おれの可愛いあいつを、よくもひどい目に遭わせてくれたな。その御礼をぜひ、思う存分させてくれよ……!」
あ、この言い方からして多分彼はバーレイグの兄とかだ。それもけっこう年の離れた。
つい、びびって後ずさってしまいながらヴァーツラフは思う。
ヴァーツラフは人類を蹂躙する戦闘機械〈レギオン〉の一機、それも総指揮官機であるわけだが、人類を一方的に蹂躙するほどに強力無比な戦闘機械であるからこそ、他者に暴力を振るわれる経験というのは実はあまりなかったりする。
まして同格以上の相手による、本気で殺すつもりの暴力など。
「待て、ええと、デュラハン。わたしの話も聞いてくれ」
「いいぞ、一二三四五六七八九十! ……十秒も待ったからもう言うことはないよな!」
「子供か!?」
「そうだがなんだクソジジイ!」
笑顔でデュラハンは地を蹴る。シャベルを思いきり振りかぶる。慌てて身を
「死ね」
《はっ……!?》
歯を剥いた笑顔に以降は終始無言とかいう恐怖の悪鬼に、追い回されてしこたまどつき倒される夢からどうにか醒めて、ヴァーツラフこと〈レギオン〉総指揮官機ノゥ・フェイスは荒い息をつきたい気持ちになる。肺がないので不可能だが。
《ゆっ、夢か……夢だよな……》
つい、周囲を光学センサで見回してしまう。幸いあの赤い髪の青年の姿も、同じ重戦車型のそれもない。
ほっとノゥ・フェイスは安堵する。
それでも再び
いつか、娘や妻と見上げたのも違う、祖国を遠く離れた星の海。
《うん、まあ。……悪いことをしてしまったな……》
バーレイグにも。その兄であったらしいデュラハンにも。
だからといって精神攪乱型の運用をやめるつもりはないけれど、ノゥ・フェイスは改めて、死してなおも彼の元までやってくるほどの、亡霊の兄の



