4:2024年 台湾サイン会のお礼SS

シェア・シンとレーナ

 何人かでシェアする想定の大きなマンゴーアイスを、シンは当然のように注文して当然のようにレーナとの間にさしだし、そして当然のように二人同時にスプーンを入れてたっぷりすくって口に運んだ。

 この間、あれ食べたいです、とか、あれ食べるか? とか、そういう意思表示と確認は一切ない。

 以心伝心というか、このバカップルめというか。

「わあ、マンゴーとろとろ。すごく甘いです!」

「かき氷も細かくてふわふわしてるな。マンゴーともアイスとも食感が違って楽しい」

「ふふ、甘い雪みたいですね」

「それだ。うん、甘い雪みたいだ」

 レーナはそれはもうきゃっきゃとはしゃぎつつぱくぱくとスプーンを口に運び、シンも“甘いものが苦手”とかいう己の発言を全力で放り捨ててかき氷の小山を切り崩す。

「ごちそうさまでした!」

「ごちそうさま。……さて、冷たい甘いものの次は、さっぱりと熱いお茶にしようか」

「いいですね! わたし、グリーンティはじめてです!」

「おれも、……というか烏龍茶もはじめてだな。紅茶も多分、ギアーデのものとは違うんじゃないか」

「そうですね、どれも楽しみです! お茶請けのドライフルーツに蓮の実餡のパイも。……シン、蓮の実食べられるって知ってましたか?」

「月餅に入れると聞いた気がするかな……食べたことはないけど。うん、それも楽しみだ」

「みんなにもお土産に買っていきましょうね!」

 レーナはやっぱりきゃっきゃとはしゃぎ、シンはシンできっぱり浮かれている。北国生まれの二人には、南国の食べ物は知らないものばかりでその上どれも美味なのと、隣を歩く恋人がはしゃいでいたり浮かれていたりで可愛いのと。

 ……このバカップルどもめ。

刊行シリーズ

86―エイティシックス―Ep.14 ―ペイント・イット・ブラック―の書影
86―エイティシックス―Alter.2 ―魔法少女レジーナ☆レーナ~戦え! 銀河航行戦艦サンマグノリア~―の書影
86―エイティシックス―Ep.13 ─ディア・ハンター─の書影
86―エイティシックス―Alter.1 ―死神ときどき青春―の書影
86―エイティシックス―Ep.12 ─ホーリィ・ブルー・ブレット─の書影
86―エイティシックス―Ep.12 ねんどろいどヴラディレーナ・ミリーゼ ブラッディレジーナVer.付き特装版の書影
86―エイティシックス―Ep.11 ―ディエス・パシオニス―の書影
86―エイティシックス―Ep.10 ―フラグメンタル・ネオテニー―の書影
86―エイティシックス―Ep.9 ―ヴァルキリィ・ハズ・ランデッド―の書影
86―エイティシックス―Ep.8 ―ガンスモーク・オン・ザ・ウォーター―の書影
86―エイティシックス―Ep.7 ―ミスト―の書影
86―エイティシックス―Ep.6 ―明けねばこそ夜は永く―の書影
86―エイティシックス―Ep.5 ―死よ、驕るなかれ―の書影
86―エイティシックス―Ep.4 ―アンダー・プレッシャー―の書影
86―エイティシックス―Ep.3 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈下〉の書影
86―エイティシックス―Ep.2 ―ラン・スルー・ザ・バトルフロント―〈上〉の書影
86―エイティシックス―の書影