2 Split Game ⑤
「ここから出るには、カードのイエスボタンを押して、プレイヤーの過半数を確保することです。ボタンを押したプレイヤーが過半数となった時点で、
舞は言ってから、
「確かにそんな感じだった」
田中がうなずいた。
「上手く脱出すれば、トランクの金がもらえるってことだよな」
周囲の人間がうなずきあっている。恐怖と希望。そんな二つの要素がこの場所で揺らいでいる。
福原は思った。まるで人間の感情を
それでも、福原は
「プレイヤー要素の分配か……」
人数ではないのだ。人間を
「とにかく出るべきじゃないの? スイッチを入れてここから出ることが一番よ。なんか
カオルが言った。
「みんなで同じターンテーブルに乗って脱出しようか。乗らなくても回転と同時に扉を抜ければ……」
田中がカオルの意見を受けて言った。
しかし、すぐに反対意見が続出した。
「人形の言ったルールどおりにやるべきじゃないか?」
「同じ扉から脱出したら、たぶん金は没収される」
そんな
「待てよ、上手くやっても金が手に入る保証はないぞ」
「現金やこれだけのシステムを用意したんだぜ。たぶん、本当にもらえる可能性が高いはずだ」
恐怖と欲望。そんな感情が振り子のように揺れている。揺れは
議論は続いている。
この時点では皆は協調していた。協力して脱出を
「ねえ、もう一回、ここに来た
高校生の
「そんな
滝川が時計を指差した。針は四分の一を回っている。
「とにかく、プレイヤーを分けて、このターンテーブルの上に乗ればいいんだよな。そして、カードのスイッチを押す。六人以上がイエスにタッチすればいい」
「それ……」
福原は田中の胸を指差した。田中は指示どおりにカードを左胸に
「なに?」
「そのカードの数字」
田中のカードには、皆と同じようにイエスボタンと、その上に1という数字が表示されている。
「1の意味はなんなんだと思う?」
福原は自分のカードも見せた。やはり1と表示されている。
「……私は2ってあるけど」
カオルがカードを提示した。彼女のカードには2と表示されている。
「私も」
「性別なのかな?」
田中が周囲のカードを調べる。確かに男性には1が表示されている。
「私は
言ったのは
福原はじっと舞を見た。分類するなら彼女も一応女性のはずだった。
「性別じゃねえな。これが、ナントカ要素じゃねえのか?」
皆で全員のカードを調べてみる。1が一番多かった。八人の男性
「これでわかった。この数値がプレイヤー要素なんだよ」
「これを分けるってのか?」
「そうだよ。数字を全部足すと──12になる。だから、正解はカードの数字を分けるんだよ。カードの数字の四分の一を持っているプレイヤーがAの
田中はそう言ったあと、はっと口をつぐんだ。それに気づいた周囲の人間も同様だった。
その分配方法が正解だとすると──
この場所に残っていたプレイヤーがいた場合、その中のプレイヤーの一人が首を
そんなペナルティーを受ける人間が出現する。
沈黙する部屋の中で福原は必死で計算をした。
残る可能性のあるのは、3というプレイヤー要素。つまり、合計3となるカードを持っているプレイヤー。二人か三人だ。1のカードが三人で3を満たす。1と2のカードの二人で3を満たす。
気づいた。それプラス
思った。そんな死の可能性があるなら、とにかく脱出だけを優先するべきだと。首を吊られるという明確なペナルティー
顔を上げると、
「脱出優先だよ。じゃないと、
福原はそう言った。この部屋での正論。正義ある発言だった。それが選択すべき正解であるはずだ。
「確かに」
田中がうなずいた。周囲の人間も
「じゃあ、早く脱出しよう。みんな同じ
「待てよ、まだ時間はあるんだ。いろいろ
福原の意見を
「早めに出たほうがいいんじゃないか。
福原は言った。当然の主張だ。タイムリミットがある以上、少しでも早く行動することに越したことはない。そんな意見に周囲はうなずいている。正当な意見を言う福原を評価している。そんな
同時に妙な空気も感じた。
福原の
「まあ、彼の言うことももっともだよ。できるだけ調べてから脱出したほうがいい」



