モテない俺はマチアプで異世界彼女を召喚する
エピローグ
「……こんなところかな」
俺こと桜井新太は、ノートパソコンのキーボードから手を離し、うんと伸びをして。
「それじゃあ、『雷撃ノベコミ』に投稿するか」
マウスをクリックする。
この瞬間は、いつだってドキドキものだ。
ちゃんと投稿されたことを確認して、俺は安堵の息をついた。
「マーリィに、パティアに、ユーノゥ……そして、その後に出会った異世界の女の子たち。彼女たちとの思い出を、できるだけ形に残しておきたいからな」
『異世界カノジョ』と呼ばれるマッチングアプリで経験した出来事を、俺はこうして文字に起こしている。
マッチングをしていた頃の俺は、出会った彼女の姿をヌコヌコ動画に投稿していた。
そして、マッチングを卒業した今の俺は、過去の時間を小説の形にして雷撃ノベコミに投稿している。
異世界の魔法が登場するので、実はノンフィクションだろうと、読者はフィクションだと考えるだろう。
それでいい。作り物だと思ってくれていい。
ただ、俺は。
彼女たちとの思い出を、備忘録にしたかった。
すべての体験が、今の俺を形作っているのだから。
その感謝を忘れては、『本物の恋愛』すら忘れてしまう。
俺の恋が成就できたのは──ハッピーエンドを迎えられたのは、みんなのおかげ。
そのことだけは、絶対に忘れたくなかったんだ。
(そう……ナビゲーター。おまえも含めてな)
ナビゲーターの正体を知った時は、驚いたものだ。
中の人がいるなんて聞いてなかったからな……。
(……っと、そろそろ時間だ)
ノーパソの電源を落とし、身支度を調えて、一緒に暮らしている『彼女』に声をかける。
「いってきます」
いってらっしゃい、という彼女からの優しい声をもらって、俺は部屋から外に出た。
庭の桜は、今年もまぶしいくらい、満開だった。



