断章のグリム 完全版1 灰かぶり/ヘンゼルとグレーテル

灰かぶり

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 さあ、今日は『シンデレラ』のお話をしましょう。


 昔、奥さんを亡くした貴族がいて、とても心が醜い女と再婚しました。

 この女には二人の連れ子がいて、母親とそっくりな、全く同じ心根の持ち主でした。

 夫にも娘がいましたが、こちらはとても心の美しい娘でした。ままははは婚礼が済むと、たちまち悪い本性をあらわして、優しい娘に家中のつらい仕事を何もかも押し付けました。

 娘は毎日灰だらけになって仕事をしたので、家の者は『シンデレラ』と呼びました。シンデレラとは、灰かぶりという意味です。

 あるとき、この国の王子が舞踏会を開くことになりました。王子の結婚相手を探すための舞踏会で、国中のきれいな娘達が招待されました。二人の意地悪な娘は、シンデレラに舞踏会の支度をさせました。二人の支度を済ませると、シンデレラは継母に言いました。


「わたしも舞踏会に連れて行って下さい」


 継母は馬鹿にして笑いました。


「おまえみたいなみっともない娘を、舞踏会なんかに連れて行けるものかね」


 継母は二人の娘だけを連れて、シンデレラを置いて舞踏会へと出かけてしまいました。継母と二人のお姉さんが出かけてしまうと、シンデレラはひとり涙を流しました。

 気がつくと、魔法使いのおばあさんが立っていました。


「かわいそうなシンデレラ。お前の願いをかなえてあげよう」


 おばあさんがつえを振ると、かぼちゃが立派な馬車に、ねずみが真っ白な馬に、そまつな服は見たこともないほど美しいドレスに変わりました。最後に美しいガラスの靴を与えると、おばあさんは言いました。


「これで舞踏会に行くといい。でも忘れてはいけないよ。魔法は十二時に消えてしまう。だから十二時の鐘が鳴り終わるまでに戻ってこなければいけない。そうしないと馬車も、馬も、ドレスも、みんな元に戻ってしまうよ」


 シンデレラがお城につくと、大広間の人々の誰もが、その見たこともないお姫様の美しさに見とれました。王子がやってきて、シンデレラの手をとるとダンスに誘いました。王子とシンデレラは踊り続け、夢のような時間がすぎました。楽しいひとときに時間を忘れ、気がつくと十二時の鐘がきこえてきました。

 シンデレラは急いで大広間から抜け出して、お城の階段をかけおりていきました。王子がそのあとを追いかけましたが、間に合いませんでした。シンデレラは急いでいたので、階段にガラスの靴を片方落としていきました。王子はそれを、大事に拾いあげました。

 鐘が鳴り終わると、シンデレラは元のみすぼらしい格好に戻っていました。ただガラスの靴の片方だけが、残っていました。

 舞踏会が終わっても、王子の心の中はシンデレラのことでいっぱいでした。

 王子はおふれを出しました。


「この靴がぴったり合う娘を妻に迎える」


 家来たちがガラスの靴を持って、靴のはける娘を探して国中をたずねてまわりましたが、なかなか見つかりません。

 やがて靴はシンデレラの家にも運ばれてきました。

 二人のお姉さんが試しましたが、靴は小さすぎて履けませんでした。

 そこにシンデレラがやってきて、たずねました。


「わたしもはいてみていいですか?」

「とんでもない!」


 継母たちはシンデレラを追い払おうとしましたが、家来たちは、全ての娘たちに靴を試すよう命令されているのだから、とシンデレラに靴をはかせました。靴はシンデレラの足にぴったりと合いました。継母と二人の姉は驚きましたが、シンデレラがポケットからもう片方の靴を出したときには、もっと驚きました。

 誰もが、シンデレラがあの時の美しいお姫様であることがわかりました。二人の姉はシンデレラの前に身を投げ出して、今までの意地悪なふるまいの全てをあやまりました。

 シンデレラはお城に連れて行かれ、まもなく王子と結婚しました。シンデレラは美しいだけでなくやさしい心の持ち主なので、継母も二人の姉もお城にむかえて、みんなでしあわせに暮らしたということです。


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刊行シリーズ

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