計器類がわずかに灯る闇の中、二人は語り合う。
「なあ、ボギー」
「……」
「こうやって並んでるとよ、本当に区別なんかない、そう思えてこねえか」
「……何が」
「俺たち……人間とロボットが、だよ」
「哲学書でも読んだ?」
「いんや、レトロムービー。昨日、キットの買い物に付き合って、飯食って、んで俺がもっと遊ぼうぜって誘ったらさ、キットも『いいよ、だけど給料日前なんだから……』」
「アンディ、話が逸れてる」
「……楽しい美しい思い出を、ここぞとばかりに披露したい男心が分からんのかね、キミは」
「『人間とロボット』」
「おっ、乗ってきたな。ええと、そう、俺たちはほとんど同列だよな」
「いいことだ」
「レトロムービーなんかじゃ、よくどっちかが支配したり反乱したりしてるってのによ。うまくやってんじゃねえの、俺たちの方は」
「ん……ロボットが人間と同権を持てた理由は三つだ。一、技術が人に追いついたこと。二、人間が技術に順応したこと。三、社会の余裕」
「あー、二つは分かる。まずニューロン・ドームは自然脳と生成過程が違うだけで、機能的には同じってこと。んで次が、人間も改造でスペックアップができるようになって、ロボットへの劣等感がなくなったってことだろ。でも、なんだよ、その最後のシャカイノヨユーってのは」
「人たり得る物を生むことを技術が可能にしても、それを受け入れるだけの余裕が人間社会の側になければ、その存在は封殺される、ということだよ。今は幸い、そうじゃなくなった」
「ふ~む……要生存剤培養槽の整備で食うには困らなくなった、権利兌換制を導入して社会は『去るを追わず、入るを拒まず』の自由意志競争化した、おまけに〈ゾーン〉で活用空間は無限大、と……なるほど、ロボット君たちを入れてやってもいい、って思えるようにもなる好条件だわな」
「人間は、余裕がなければ優しさを持てない。至上の価値を吹聴されている人道も倫理も、所詮は余裕の消費行動に過ぎないよ。貧窮すれば、無視される」
「ヒュー、手厳しいね」
「ただの事実さ」
「そんなにご同類に冷たいと、せっかくの天然モノが凍っちまうぜ、サイボーグ『ボギー』」
「君が生き生きしすぎなんだよ、アンドロイド『アンディ』」
そのとき、通信機が元気のいい少女の声を、彼らの元に届けた。
《突入予定空域に到達。ディビジョン・エクスターミネーターA/B、発進!》
「どーぞ」
二人の声が重なり、そして闇が開いた。
《幸運を!!》