「おいおい、境界面まで辿り着けんのか? なんなら引いてってやろうか」
アンディはメタルリュウセイゴーにまたがって傍らをゆくヴァンプに声をかけた。
主人に劣らぬおんぼろガンビークルは、各部で妙なうなり声や振動を起こしながら、ようやく飛んでいる。ほとんど雨の一粒で撃墜されそうな頼りなさだ。
「馬には馬の意地があるものさ。人に引かれたとあっちゃ、名折れもいいとこだい」
それでも強気に言うヴァンプに、アンディはからかい半分で言う。
「人は人でも機械の人だ。利用しない手はねえだろ」
(運ぶよ果てへ 憧れの彼方へ……)
「そういう自虐的な言い方は感心しないな、ミスター・アンドロイド。『電鋼は血肉に等し』だよ。第一、こっちも機械の馬だ、お気遣いは無用。おいらをおっことしたりなんかしないよなあ、リュウセイゴー?」
主人に答え、ブヒヒン、とメタルリュウセイゴーが首をきしらせる。
「へいへい、麗しい友情を邪魔して悪うござんした。俺たちも負けずに、二つの力を一つに合わせてショート……もといスパークさせようぜ、ボギー」
(見たいなら行こう 知りたいなら共に……)
「…………?」
相棒からの、軽く打てば短く痛烈に響く、景気付けの答えがこない。
(どこまでも続く 星を追って……)
「……おい」
ふと、アンディの耳に、機械の駆動音に消え入りそうな鼻歌がふれた。
(……どこまでも続く 星を……追って……)
「……?」
それからほんの数秒。
ボギーから、笑い声がもれた。
「……っくくっ……!」
悲嘆の端のような、憤怒の縁のような、狂喜の欠片のような、声。
アンディの作り物の背筋を、寒気と怖気が通り過ぎた。
思わず、声をかける。
「ボ……」
「皆殺しにしよう」
アンディはギョッとした。
言うところの物騒さに、ではない。
その声の、あまりにらしくない異様な弾み具合に、である。
引き返せない戦場の入り口が、もうそこにある。
電子統制艦からの通信がきた。
《境界面通過まで、十秒!》
アンディはきいていた。チームを組んで以来、初めての言葉で。
「大丈夫なのか?」
「なにが」
ボギーはどうでもよさそうに返した。
「……嫌な予感がするぜ」
「そう」
本音に対する、やはり適当な答え。
《境界面、通過!》
天使の輪が、一本の頼りない糸だけを残して、全てを飲み込んだ。