学年で一番かわいい星ヶ崎さんと友だちになったら毎日密着が止まらない

第二話 星ヶ崎さんとデート ⑥

 距離感が崩壊している星ヶ崎さんとの外出ということで、もっと危なっかしいものになるのではないかと不安だったのだけれど、案外普通のクラスメイトとの外出として楽しめていたと思う。

 もちろん、そんなことは口には出さないが。


「それじゃあ、また」


 軽く手を振って改札に向かおうとする。

 と、そこで星ヶ崎さんに呼び止められた。


「あ、ま、待って!」

「?」

「あ、あのねっ」

「?」

「そ、その……」

「??」

「え、えっと、これ……!」


 ぎゅっと目をつむりながら星ヶ崎さんが差し出してきたもの。

 それは星を模したかわいらしいキーホルダーだった。


「今日のお礼っていうか、記念っていうか……と、友だちの、証……? も、もらってくれるかな……?」

「え、いいのか?」

「う、うん、よかったら!」

「そっか、サンキュ」


 感謝の言葉とともに受け取る。

 お礼だというのなら素直にうれしいし、ウェルカムだった。

 星ヶ崎さんと俺の手に、同じキーホルダーが並ぶ。

 それを見た星ヶ崎さんは少しだけ照れたようにこう口にした。


「じ、実はこれ、おそろいなんだ」

「おそろい?」

「うん! ブルーとピンクの色違いがあったから、ブルーがけーくんでピンクがわたし。何ていうか……概念的な? 二十四時間三百六十五日、お風呂に入る時も肌身離さず着けることにするから、けーくんもね!」


 だからどうしていちいちそう思いが重いのか。

 大丈夫だろうけどGPSでも仕込まれてないだろうな……?


「えへへ〜、さっそく明日学校にも着けてこ♪ けーくんもだよ? 星ヶ崎陽菜っていう概念がそこにいるんだから。ちゃんとチェックするからね?」

「はいはい」


 うなずき返しながら、カバンとかだと目立ってしまうので、キーケースかスマホあたりにつけるのが無難かと何となく考える。

 と、そんな俺を見て星ヶ崎さんがにこにこしていた。


「? どうした?」

「ううん、何だかんだ言ってもけーくんはちゃーんと着けてきてくれるんだろうなって思っただけ。友だちっていいな〜って、そう思っただけだよ」


 満面の幸せそうな笑み。

 そんなことを雛鳥みたいな無邪気な表情で言われてしまうと、どう返していいのかわからなくなってしまう。


「それじゃあ、明日、学校でね! またいっしょに二人でお出かけしようね!」


 そう言うと、星ヶ崎さんは俺の手をぎゅ〜っと握った後、甘い匂いをその場に残し、走り去っていった。

 途中で何度も何度もこっちを振り返って心の底からうれしそうな顔で手を振ることを忘れずに。

 本当、そういうところだと思う……



 そんな風に最後まで星ヶ崎さんの友だち理論に振り回されていたため。

 少し離れた場所からこちらに視線を送る人影があったことに、俺はまったく気づいていなかった。


「ん、今のあれって……」


 後でわかったことだが……それは星ヶ崎さんと俺との関係性に、新たな問題をもたらすことになるものなのだった。


「ひなひな……? と、確か……幸村……だっけ? 何であの二人が……」



 ちなみにその日……星ヶ崎さんと別れてから夜眠りに就くまでに、


『今日は楽しかったね!』

『今日のけーくんの記憶を反芻しながらベッドでごろごろしてるよ! もうそれだけでご飯三杯食べれちゃう!』

『ねえねえ、けーくんはどうだった? けーくんの感想聞かせてほしいな!』

『ふふふ、感想、まだかなまだかなー?』

『けーくん、お風呂でも入ってるのかな? だいじょうぶ、感想がくるまでずっとスマホを見てるから』

『えっと、感想……』

『……こないの、かな……』

『……め、迷惑……だった、かな……?』

『……そ、そうだよね……わたしとのお出かけなんて、ブロイラーの散歩みたいなもんだもんね……』

『……ゴミが感想なんて求めてしまって……ごめんなさい……』


 などのLIMEが、合計82通ほど届いたのだった(感想の返信はした)。


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