魔女に首輪は付けられない




 真っ暗な部屋に明かりが灯った。
 外出から戻ってきた〈奪命者〉は今朝、捕まえたばかりの獲物を見つめた。異常はなさそうだった。部屋に誰か侵入した気配はない。
 ――もっともここは誰にも見つけることができないだろうが。
 獲物はぐったりと疲弊した様子だが、〈奪命者〉を睨みつける目は変わらず反抗の意思を伝えて来ている。
 それは良くないと〈奪命者〉は思う。何も敵対したいわけではないのだ。だから〈奪命者〉はこう言った。
「大丈夫さ、君は運がいい」
 獲物が困惑したのが〈奪命者〉にはわかった。
「君には大事な役割があるんだ。世界を変えるための役割さ」
 獲物の目に光が宿っていくのが見えた。おそらく助かると思ったのかもしれない。しかし勘違いされるのもまた良くない。〈奪命者〉は真実を伝えることにした。
「君の役割は老いることだ。枯れ果てて、命を散らすまで耐えることが、これから先の運命なんだよ」
 再び獲物が呻いた。猿轡を噛ませているにもかかわらず、耳に響くくらい声が聞こえた。〈奪命者〉が手を伸ばす時も呻き続けていた。