1(???/第三七機動整備大隊)


 その日は朝から不思議な空気に包まれていた。

「なあヘイヴィア、俺達何でこんな薄暗い倉庫で荷物整理やってんだっけ? 今日って合同軍事演習の本番だろ。運動会みたいなものじゃん。晴れの舞台!」

「どこ見回したって絶滅したブルマにメガネの委員長なんか出てこねえから諦めろよ学生。あの爆乳の事だ、問題児にゃ記者達の前に出て欲しくねえんだろ」

 そもそもクウェンサー=バーボタージュとヘイヴィア=ウィンチェルの馬鹿二人が真面目な顔して倉庫の整理なんてやっている時点で何かの前触れだったのだ。ほら、大災害の前に昆虫やネズミなんかが一斉に異常行動に打って出る的な。

「ま、演習相手は噂の第一六機動整備大隊だ。対外広告ってよりも余った無駄弾の処分市って感じじゃね。むしろ出なくて正解だって」

「一六? あの慈善事業にお忙しい???」

「ドンパチやってるより学校や病院造るのに夢中な背中から白鳥の羽でも生えた連中だよ。ここ最近じゃ遺跡の発掘とかも手伝ってんだっけか。あんなのと比較検証されたら誰だって悪者にされちまう。自分の手を汚したがらねえ連中が、肩代わりしてやってる人間の背中を平気で蹴飛ばすんだ。うんざりだよ、顔も見たくねえ。誤射で撃っちまいそうだ」

 そんな風に言い合っていた時だった。

 彼らは『それ』を見つけた。

「おいクウェンサー、なんか出てきたぜ」

「どれどれ……なあこれ何だ。なんかの仮装グッズか?」

 埃っぽいのかカビ臭いのか。分厚い布が傷んだような独特の匂いに包まれて、いくつかの塊が出てきた。

「ハロウィンかクリスマスパーティー用かね」

「あの爆乳の事だ、駐留中に現地のガキにこっそり菓子でも配ってたかもしれねえぞ。こんなもん被って素顔を隠しながらな」

 ヘイヴィアはくたびれた全身タイツのような、ぬいぐるみのような、とにかく作り物の仮装グッズに軽く蹴りを入れつつ、

「誰が何のために国民の血税使ってこんなもん溜め込んでたかはすぐに分かる。俺らがこれ着て辺りをうろつきゃ良いのさ。一番最初に血相変えて止めに来た野郎が黒幕だ」

「そこまで体張るの? 別に放っておけば良いじゃんさ」

「テメェだって退屈してんだろ。どんだけカビ臭い倉庫をひっくり返したってチア衣装のヌードポスターなんか出てこねえぞ」

「……、」

「……、」

 二人して、改めていくつかある着ぐるみへ目をやる。まるで何かを吟味するように。


 運命の分岐点と言えば、まさにここだっただろう。


「な、なら俺はこの灰色の豚をもらった!」

 クウェンサーは馬鹿でかい人身豚面を掴む。一方のヘイヴィアはと言えば、

「じゃあ俺はこの垣根帝督とかいうイケメンの方が面白そうだ!!」

『ちょお何だそれっ!? もこもこ系っていうか明らかにニンゲンに似た何かが脱皮したみたいなマガモゴ。ぼがっ? なんか声がくぐもって……?』

『知らねえよラベルにそう書いてあんだから。それより、く、クウェンサーちゃん? そういうテメェも背中のファスナーから食虫植物みてえに飲み込まれてんだけどそれほんとにだいじょう……』

『そういうお前は人の皮に喰われてるけど絶対今すぐ医務室行った方が……あーっ!? なんかもう感覚ない! さっきまででっかいイソギンチャクの中に放り込まれたみたいな違和感があったはずなのに今は驚くほどすむーずぅぅぅ!』