わたし、二番目の彼女でいいから。9
第33・5話 言葉 ~桐島~
最近、相手にメッセージやメールを打とうとすると、時折、とても時間がかかる。
できあがった文章をみたときに、これではまったく、自分の伝えたいことが相手に伝わらないように感じるのだ。どこか冷たすぎるように感じたり、それを修正しようとして、相手が重く感じるようなくどさがでてしまったり。よかれと思って打った言葉が、別のニュアンスをだしてしまって、誤解を与えてしまうのではないかと、心配になることもある。
それで、何度も文章を打ちなおして、時間がかかる。
けれど、いくらなおしても、それが一〇〇パーセントの出来になることはない。なぜなら、俺が伝えたいことを、その感情を含めたメッセージを、ありのまま伝えてくれるような『言葉』は存在しないからだ。
かなしい、という言葉の意味は、辞書をひけば書いてある。
けれど、人によって、その言葉を使う状況によって、その『かなしい』の意味や深さはちがっている。
同じように、『好き』と言葉にしても、そこに込められた気持ちがちゃんと伝わるかといわれたら、そうとは限らない。祈りにも似た感情をこめて打ちだしても、言葉という乗り物にのったとき、それが相手にみえないかもしれない。
言葉はいつも不完全だ。
だから俺たちは、言葉だけでは不十分で、泣いてしまったり、好きという気持ちを伝えるために、相手にキスをしたりする。それ以上のことだって、したり、受け入れたりする。
でも、もし、言葉だけで自分の感情を伝えなければいけないときがきたら、俺はどうするだろうか。
手紙を書くかもしれない。
そう、手紙だ。
俺は想像する。
深夜、静まり返った部屋で、ひとりペンを持ち、便箋に向かいあう。
ほんの些細な想いも相手に伝えたくて、慎重に言葉を選び、何度も何度も書きなおす。
けれど――。
どれだけ多くの言葉を尽くしても、やはり、この心の全てを相手に伝える文章を書くことは難しいだろう。
そんな、予感がした。



