境界線上のホライゾン きみとあさまでGTA Ⅳ

第十六章『隠し場所の達人』

「さて、ここから先はラストまで一気ですね!」


「流石に午前二時になりそうですね。皆さん、保ってます?」


「実はさっきチョイ寝たので保つで御座るよ?」


「Jud.、その手の訓練はしてありますので」


「…………」


「流石ホライゾン! 目を開けたまま寝てますわね!?」


「さっきまでスゲーテンション高かったのに、どうなってんだ……」


「ンンっと! 起きてますよ? ええ」


「流石だ……」


「ともあれ四時過ぎるようになると朝も来るからのう。一日単位での加護や術式が一回りする者もおろう。それまでに終える方針で行くと良いぞえ?」


「ハイ! そんな感じで皆さん、御願いします!」


「ではまず、外の状況からでありますかねえ」


 武蔵と安芸、二大航空都市ともいえる場所で祭が始まった。

 合同の春期学園祭だ。

 今回は安芸の劇場艦が使えないため、二都市中間地点での開催式は取りやめ。

 代わりに同時通神と実況によるそれぞれの会場で、式が取り持たれた。

 安芸側では、厳島神社にて教皇総長が演説を行った。

 それは、


「今年度より、K.P.A.Italiaは国力の増強に努め、地中海の覇権と旧派代表の役割を新たにする! そのためにも、今年の祭をそれぞれ力を尽くし、栄華を切らさぬようにしろ!」


 というものだった。

 これはネシンバラ達に言わせると、


「──教皇総長が、各国に直々に談判に行くってことだろうね。

 教皇が頭を下げに行くのか、という揶揄もあるけど、大商人上がりの教皇だ。

 聖連各国の内、目立った交渉力を持っていない国にとっては脅威でしかないだろう」


「アー、コレで大罪武装の無心に来る流れも生まれたのか……」


「旧派は長期スケジュールで動くの好きやなあ……」


 とのことで、一方の極東側では鳥居が始めの挨拶で皆を校庭に集めていた。


「皆──」


 鳥居が言う。


「さっき上で鳴ってた花火持って来たよー。火がついてるけど──」


 総員はパニックに陥ったであります。

 更には校門側から全裸が、


「俺の持って来た方がおっきいぞお──。火がついてるけど」


 と走ってきて全員の退路を断ち、最終的には排除ミッションが施されたのであった。


「全く、いつも通りというか……」


 浅間が吐息しながら非常時用の結界をいつでも張れるようにして、喜美がその背を軽く叩く。

 そしてミトツダイラが、番屋に運ばれていく二人の下手人を見ながら、


「今年も、この春の祭が始まりましたわね……」


 空では、ミッション報酬である花火が二発、大きく鳴った。

 祭の合図だった。


「当時の記録を見つつでありますが、極東の歴代総長は流石でありますねえ!」


「褒められてませんわよね?」


「何か解説に対してナチュラルに加わってしまったな……」


「うちと文化が違うわね……、と変な納得をしているわ」


「Jud.、では”内”の話となりますが、ここは私が書きましょう。一応、点蔵様から軽くメモを頂いていますので、点蔵様担で宜しく御願い致します」


 点蔵は、自分のクラスにいた。

 二年梅組だ。

 別に、待機している訳でも、補習を受けている訳でもない。

 クラスの出し物としての、


「……青雷亭の出店というのは、ある意味安パイで御座るなあ」


「今、留置されている葵君が釈放されないと営業できないけどね」


 と、自分の衣装を机に広げて見ているネシンバラが、腕を組んだ。


「向井君の縫製技術は見事だね……。これ、人気料理番組の”チューカーですよ”で使われてる制服のアレンジだけど」


「ああ、フレンチだろうとアラスカ料理だろうと何でも中華系にするアレで御座るか」


「本物じゃなくて中華”系”なのがコツだよね。

 前回は”ハイ! じゃあ今日はバームクーヘンを麻婆豆腐にします!

 大丈夫! 御飯に載せると美味しい筈です!”って、途中から何故か御飯だけの番組になったよね」


「そりゃそうで御座ろう」


 しかし、と言った己は、手元にある自分専用に仕立て上げられた衣装を見た。

 白と黒の、英国制服と仏蘭西征服を混ぜたようなデザイン。


「トーリ殿、執事服と言って御座ったなあ」



「点蔵様が、そんな格好を……」


「一応、画像ありますが、見たら死にますか?」


「どういう極東語ですの?」


「見ましょう! 見た方がいいでありますよ!!」


「御母様! 御母様! これは悪魔の沼勧誘の第一歩です!」


「全裸の塊のようなものが関わって御座るので、女装になるかと覚悟して御座ったが……」


「ああ、葵君用の女装セットはさっき葛籠に入っていたね。他、数着あったけど、女子用なのか僕達用なのかは巻き込まれそうなので聞いてない」


「賢明な判断に御座るな」


「クロスユナイト君、そういう状況になったとき、やはり女体化を補助するような、そういう忍術はあるのかい? ああ、僕が使うんじゃなくて、小説の資料として」


「あるにはあるで御座るが……」


 自分は、制服のポケットを探った。


 ……これ……、あ、いや、こっちで御座ったかな? いや、こっちか……。


「見つからない?」


「あ、すまぬで御座る。流石に使う機会無いので、──おっと、あった、これに御座る!」


 出すと、それは肌色に塗装された一枚の符だ。

 裏面の説明書を読むと、


「何々……? ええと”股を開いて観念のポーズをとった後、これを臍下から尻の方にぺたりと貼って下さい。剥がすとき面倒です”だそうで御座るよ?」


「それ単に肌色に塗ったテープじゃないか。もっと、ほら、劇的なもの無いのかい? その忍術を使うと魔法少女になるとか」


「ナルゼ殿達のようになるので御座るかー」


 いきなり、窓から飛んで来た何かが首筋をかすって、廊下側の壁に激突した。

 壁を一つ響かせ、丸い痕を確かにつけたのは十円玉の硬貨弾だ。


『あ、御免なさい点蔵。マルゴットの借りて試し打ちしてたら、手が滑ったわ。

 ──ちゃんと狙ったのに』


『待ったあ──! 何か前提が間違って御座るよソレ!』


 ともあれ盗聴されているらしい。

 探るとまた狙撃されそうなので、開き直ることにする。


「そこらの術式は、やはりトーリ殿に頼るのが一番では御座らぬか」


『でもそれだとリアル感が薄れないかな? アレ女装って言うには本格過ぎるし』


「いや、ナイト殿、我々素人がすればどちらにしろ生々しさは出るもので御座ろう」


「そういうものかなあ。まあ、とりあえずクロスユナイト君、着替えようか」


「うむ。まあソッコで着替えるとなると」


 着替えた。


 ネシンバラが眉をひそめて、こちらを見る。


「早いね」


「忍術で御座る」


 と言うなり、右舷側の扉が開いた。

 ぬ!? と皆と自分が身構えた視線の先。そこにいたのはナルゼだ。

 彼女は教室内を見回し、こちらに視線を停める。

 そして開いた魔術陣を構えるが、


「あ! 何着替え終わってんのよ!? しかも女装じゃないし! 仕方ないわねえ……」


 と、こちらを眺めて首から下を巨乳の女装姿として描き変えると、すぐに扉を閉じた。

 ややあってから、その素描をつけた通神文がやってきて、


『──はい、これラフ、エロゲ班にでも回しておくわ』


『何をするつもりで御座るかあ──!』


『そんなの向こうの勝手じゃない。大丈夫、TSもので行くと思うから』


『全然大丈夫じゃ無いで御座るよー?』


 だが、聞く相手でもないだろう。

 下は巨乳で顔は忍者というのは、なかなか新しいジャンルかもしれない。


 ……特に、顔を描くのが苦手という原画家にも仕事が回せるで御座るか。


 今、ひょっとして自分は、ビッグビジネスの扉に手を掛けつつあるのではなかろうか。


「とはいえ、忍者は顔を出せぬで御座るからな」


「クロスユナイト君、潜入工作の時は、どうするつもりなんだい?」


「Jud.、変装派と隠形派がいて、自分は隠形派に御座る。

 まあ、いざとなったら変装で顔を出すかもしれぬで御座るが、それは面の割れてないところで御座ろうな」


 しかし、と言ったのは、向こうで鏡相手に衣装の襟元などを正している御広敷だ。

 彼は鏡に映ったこちらを見て、


「点蔵君、巨乳になった気分はどうですか」


「ふむ」


 自分は、ナルゼのラフを見ながら顎に手を当てた。

 その上で、エア胸を両手で掴んで、


「……実際は身体の一部としてこれがあると、重いで御座ろうなあ。

 自分、もしも金髪巨乳の嫁が出来たら支えていきたい所存で御座るが、やはりこれだけの大きさと形、実感出来るほどとなると、そうそうおられまい。

 夢というものは、いつも遠く、手が届きにくい位置にあるもので御座るなあ……。でまあ、つまり──」


 海の見える空がある。

 空に浮いた巨大な島にある浜辺。

 そこからの光景だ。

 白の砂浜にいた二つの陰、緑色のフード姿と烏の内、フードの方が、


「は、──っちゅん!」


「傷有り様!? 身体が冷えましたか!?」


「あ、いえ、ミルトン、……ミルトンが前に言ってましたよね? 誰か噂をしているとクシャミが出るというジンクスを」


 フード姿の影は、その内側、胸のあたりで手を動かす。

 それを見る烏は、空中で首を右に傾げた。

 僅かに宙を右に流れながら、


「傷有り様? 一体何を?」


「Jud.、クシャミしたら胸の部分がキツくて。だらしないですけど、長衣に隠れてますし、緩めておこうかと」


 フードの下で、口元が困ったように小さく笑った。


「──また、誰かに噂されるかもしれませんからね」


「──とまあ、そういうことなので御座る。御広敷殿、解ったで御座るかな?」


「あ、すみません。小生、今、ペルソナ君とゲーム中でして」


「そ、その態度は何で御座るか!?」


 見れば、確かに御広敷は衣装の調整を終え、対面の席に座るペルソナ君と音ゲー対戦をしている。

 こちらに振り返るつもりは無いらしい。

 ただ、横のネシンバラが口を開いた。

 彼は、自分の衣装の確認を終え、


「……クロスユナイト君、いつの間にか女装巨乳から金髪巨乳に話題が変わって七分くらい語っていたんだけど、頭は大丈夫かい?」


 そんなに語っていたで御座るか、と自分は己の主義に恐怖した。

 ただ、その一方で、


「しばらく語ってなかったで御座るからなあ」


 成程ねえ、とネシンバラが制服の上着を脱いだ。

 シャツとなっているインナースーツを、接合を外しながらこれも脱ぎ、自分の衣装を手に取る。


「……内側とか、当て布が替えられるようになってて、よく出来てるなあ」


「何日か着るもので御座るからなあ」


「着ないの誰だっけ?」


「ウッキー殿は向井殿が流石に作り方解らずと言う次第で。マント系のものを」


「準備いいなあ」


 ネシンバラが衣装のインナースーツの上を着込む。ノースリーブ状態でベストのように着て、そのまま前を閉じて、


「基本、通常品だね。ちゃんとエア抜きして吸着する」


 いきなり右舷側の扉が開いた。

 お? と皆と自分が身構えた視線の先。そこにいたのはナルゼだ。


 自分達が見ている間に、ナルゼが教室内を見回した。

 そしてこちらに視線を停める。

 その直後、彼女は開いた魔術陣に着替え途中のネシンバラを素描すると、すぐに扉を閉じた。

 ややあってから、


『──これだけでも奥オクで売れそうね。頬赤らめていい?』


『ま、待つんだナルゼ君!』


『え!? 待ったら出していいのね!? 何秒後!?』


 この魔女、自分中心に世界が回って御座らぬだろうか。


 ……これも、序列一位になってのテンションというもので御座ろうなあ。


 しかし、ネシンバラが通神に言った。


『──ナルゼ君、君が小等部の頃に描いた同人誌を通神帯に流してもいいのかい?』


『はあ? ──アンタが書いた入れ替わりネタの”頼朝様が政子様で 政子様が頼朝様で”なら、始めの三ページを今、通神帯に流したわ。

 ええと”ある日、政子はこう思ったのだ。武家を闇の力で統一せねばいかんのぢゃあ──”。何? この”ぢゃ”って? 面白いの?』


『うわああああ御免なさい御免なさい!』


「即負けで御座るなネシンバラ殿!」


 強敵すぎる。

 ただ、表示枠が手元に開いた。


『ええと、浅間です。──点蔵君、まともですか?』


「あ、浅間殿も大概で御座るな!」


『いや、今、ナルゼがリアルなものを描いたりしてたので。点蔵君もトーリ君のゾーンに入ってきたかと。その場合は拝気稼げるようにしますから趣味で終えないようにして下さいね』


 応じたら負け。そうルールを決めた。

 すると浅間が、


『ちょっと番屋の方からトーリ君の釈放手続きとかいろいろ来てるので、手続きしてきます。三〇分もしたら営業出来るようになりますから、教室を女子用に空けといて下さいね?』


「Jud.で御座る」


 言った瞬間だ。いきなり右舷側の扉が開いて、


「御開帳──! あら!? 何よグズ共! そんなに私の着替えが見たいの!? だったらホラ、ここにチンコの生える符を持ってきたから手当たり次第にペタリってやってあげるわ! 大丈夫! 愚弟のゴモザから情報拾ったやつだし重力制御式だから! さあ、ケツにペターンと貼ってカマーンして欲しいヤツは何処!? どうせなら椅子に貼って、油断したらカンチョーにするわよ男共! ──あら、御広敷! アンタそういう顔してるわね!」


『浅間殿、今、理不尽が教室に降臨したので御座るが』


『ああ、何かさっき大椿系の創作術式の符を束で持って行ったから気をつけて下さい』


 他人事でござるなあ、と思っている向こう。御広敷達を喜美が追いかけ始め、教室内が妙な悲鳴に満ち始める。



「Jud.! こ、このくらいが限界ですね……!」


「いい仕事! 良い仕事でありました! ――大事な方の描写で”自分・己”とか書くの、ちょっと同一感あって心臓跳ね上がるでありますよね!」


「ど、同意です……!」


『そういうものか……。いや、私にとっては、もう、私のものだから気にならないのかな……』


「何かいろいろ心配になりますが、次、誰です?」


「私が出ますわ。丁度、旧総長連合や生徒会の方達と遭ってますのよね」


 ミトツダイラは、梅組のある三階に行こうとして、階段の途中で足を止めた。

 人狼の聴覚が、聞き慣れた声と悲鳴を聞いている。

 ナルゼが、何かやらかしているらしい。


 ……これは、行くと危険ですわね。


 先に騎士連盟に挨拶に行って来たのだが、タイミングが少々早かったようだ。

 今は祭の準備時間中。

 どのクラスもそれなりの声や音をたてており、荷物を担いだ学生や、衣装を既に来た者達が行き来している。

 階段も廊下も、色紙の鎖や木枝や花を編んで作ったリングなどに飾られており、


 ……完全に学園祭モードですけど。


 それを貫いて喜美の声がよく通る。


「あらネシンバラ! 何よその衣装、鈴が作ったヤツね? よく似合ってるわ! だから女装にするわよ! 大丈夫、化粧してあげるから。ええ、同人誌の資料にいいし、客引きにもなるわよ!? ──は? チンコの行き場? 馬鹿ねえ、そんなのうちの術式で一般用の割り当て空間にワープさせてあげるわよ。他の女装もその空間にチンコ突っ込んでるからニアミスするかもしれないけど。大丈夫大丈夫、平日昼間だから」


 解るのは、男子連中はもはや逃げても無駄ですわね、ということだけだ。

 行き来したり、廊下で看板など組んでいる皆が、梅組の方を注視しているのが気まずい。

 一部の生徒は、こちらが梅組の生徒だと知っているので、遠巻きやすれ違いざまに、


「…………」


 ……あっ、気まずい視線……!


 頭上のケルベロスが無防備に吠えそうになるのを手で停め、とにかく鈍い汗が出ないよう、早めに教室前から退避だ。

 正面、教室のドアがいきなり開いて何か出てくるかも知れないので、とりあえず階段を後ろ向きにゆっくりと降りていく。すると、


「ミトツダイラ~!」


 教室の扉が開いて、馬鹿が顔を出した。


「何故接近していたのが解りますの?」


「愚弟のチンコ欲しくない──!?」


「話が繋がらないというか。どういう意味ですのソレ!」


 使用権でも寄越すということなのだろうか。

 もしくは、取り外しが効くものなのだろうか。

 まさかポータブルチン……、危ないですわ、危険な単語を言いそうになりましたの。

 でもそういうシステムがあるのでしたら、男性がサイズ云々で問題にしませんわよね。

 ええ、同じように女性の方も付け替えが利くのでしたら、サイズによる精神的カーストが存在しない筈ですもの。

 ええ。

 な、何を私、また泣きそうになってますの?

 だが、馬鹿に祭、というように、喜美に学園祭だ。

 頭がヤレてて力持ち、というのも結構合ってる気がするが、通る声は止まらない。


「もう、仕方ないわね! 浅間の机に突っ込んでおこうかしら!? あ、点蔵! アンタもまとめて女装よ! 何その嫌そうな帽子の目! 巨乳になれるチャンスを見逃す気!?」


 今の内ですわ、と自分は退避を済ます。

 下の階、二階のホールで、さてどうしようと考える。

 男子が着替えしている間、浅間達は食材など運び込む手筈をつけているだろう。


 ……だとすれば、智達は、前側校舎の一階昇降口あたりにいますでしょうか。


 表示枠を開きながら、

 前側校舎に至る渡り廊下に身を向ける。すると、


「あれ? コーモンちゃん」


「は?」


 と声が聞こえた前を見ると、総長兼生徒会長の鳥居が、忠世を連れていた。


 ミトツダイラは、役職が上ということで、相手に頭を下げる。

 すると彼女の横にいた忠世が、その頭を後ろから叩き、


「お前、何したんだよ」


「は!? な、何もしてないって! 人徳だよ! 総長だから偉いし!」


「それ人徳じゃないよ馬鹿。単なる礼儀。──というか向こうの方が暫定でも極東継承権一位だし、騎士連盟一等だからあたしやお前より偉い」


 じゃあ、と鳥居が忠世を見た。


「何で忠世、コーモンに頭下げないんだよ」


「副会長だからあたしの方が偉い」


「人徳ないなあ。忠世」


 もう一回、忠世が鳥居の後頭部を叩いた。

 何事かと思うまでもない。

 いつものことだ。

 そして忠世が、こちらを見た。


「一等。──あ、今日は総長連合の話じゃない、単なる学校行事の通達」


 で、と彼女が表示枠を開いた。


「さっき、”武蔵”側から、今日の雅楽祭について、いろいろ情報出たよ。出場順番なんかも出たから、確認しておくといい」


 そう言った彼女が、開いた表示枠をこちらに向け、裏を軽く叩く。

 拡大されたそれが示すのは、十数のバンド名の羅列だ。

 上から下に見ていくと、


 ……あら、マルゴットとナルゼ達が、結構後ろに。


 そして、鳥居達のバンドが、一番後ろから一つ前にある。


「総長達のバンド、やはりいいところにいますわね……」


「あ、Jud.、でも一等、その下を見た方がいい」


 見れば、きみとあさまで、という名前が、一番下に書いてある。


 ……ああ、うち、ここですの。


 思い、ちゃんと受付がなされ、順番も決まったと言うことに安堵する。

 そして自分は、


「――え!?」


 見直してみるが、一番下だ。

 下。

 最下段。

 三回見直して、自分は笑顔で問うた。


「これ、下からの順番ですわよね?」


「上からだよ?」


 平然と否定されて、己は、今こそ鈍い汗が全身から噴くのを感じた。


「え、ええと……」


 ……オオトリって事ですわよね?


 問うて見る。


「何故?」

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