野崎まど劇場(笑)

作品 No.14 建設バブルの闇 ~大手ゼネコンの真実~


「みらくるリンゴアメ先生、本日はわざわざ編集部までお越しいただいてすみません」

「平気ですよ湯深ゆぶかさん。うち近いですから」

「恐縮です。原稿の方もありがとうございましたみらくるリンゴアメ先生。いや素晴らしかった。新境地ですねみらくるリンゴアメ先生」

「ペンネームをフルで呼ぶのはやめませんか」

「おかしいですか」

「多少」

「じゃあみらくる先生。原稿の方はほぼママでOKかと。いや面白いですよ。官僚から建設業界にキャリアチェンジした主人公が業界の闇を暴きながらのし上がっていく痛快企業小説」

「頑張りました」

「売れますよこれは。で、今日ご相談したいのはタイトルとか装丁とかのことなんですけど。ちょうどU35さんから表紙絵が来まして」

「え、ほんとですか。見たい見たい」



「凄い。こんなに可愛く描いてくださって……」

「流石ですねU35さん。ところでその、みらくる先生。つかぬことをお伺いしますが」

「なんでしょう」

「こんな子出てきましたっけ」

「なにを言ってるんですか湯深さん。「ラノベ的な押しが欲しい」と言って湯深さんが無理矢理付け足した、建設会社がリゾート開発事業を展開する離れ島の研究所で遺伝子改良された魚卵から生まれた人魚ヒロインですよ」

「その子は顔がマンボウじゃなかったですか」

「それは四章までです。最終章で遺伝子に奇跡が起こったでしょ。しっかりしてくださいよ」

「いやはや失敬。じゃあデザイナーさんに連絡してタイトル置いてみますか。売れそうなやつを考えてきてくれましたかみらくる先生」

「自信作です」



「内容がさっぱり解りませんねみらくる先生」

「タイトル変えましょうか……」

「そうですね……たとえばこのヒロインの名前を前面に出すとかどうです。半沢直樹みたいに」

「なるほど」



「しかし地味な名前ですなあ」

「しっかりした両親に造られた子なんです」

「まあ押しは相当強くなったのでこれで……。後は中身が伝わるよう帯コメで補足しますよ」

「僕的にはこの子がマンボウのミュータントだということも強く帯コメで伝えたいのですが……」

「(デザイナーさんに丸投げかな……)」




刊行シリーズ

独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑)の書影
独創短編シリーズ 野崎まど劇場の書影