野崎まど劇場(笑)
作品 No.18 のりもの の えほん
まだよるがあけないくらいじかん。
しゃこから、いちだいの電車が、ゆっくりとでてきました。
「ふわあ。ねむいなあ。」
電車のはやとです。
はやとは、おおきなあくびをしました。
「ようし。きょうもがんばろう。」
はやとは、えきにむかってはしりだしました。
電車のはやとはJRひがしにほんにきんむする車両です。
とうきょうのちゅうおう線をまいにちがんばって走っています。
はやとがあさはやい豊田えきのホームにつくと、いつもの運転士がやってきて、はやとの運転席にのりこみました。
「きょうもよくはしってくれよ、はやと。」
「まかせてよ。」
はやとは、いいちょうしです。
電車のはやとは「E233けい0ばんだい」というけいれつの車両です。
はやとがホームではっ車をまっていると、「パァン」と けいてきの おとがしました。
けいてきを ならしたのは、となりのせんろにいた だいすけでした。
「やあはやと。いまごろきたのかい? ねぼすけだなあ。」
だいすけは、はやとをばかにしました。
だいすけもはやととおなじE233けい0ばんだいの車両です。
2006年12月にデビューしたE233けいは、しゅとけんぜんいきでかつやくしたE231けいのこうけいきとしてかいはつされました。
「ちゃんとかおをあらってきたのか?」
だいすけははやとのかおをみて、笑いながらいいました。
「いつもねぼけたかおをしているな。」
「うるさいなあ。」
はやとはくやしそうです。
「だいすけだって、おなじかおじゃないか。」
ふたりはおなじけいれつの電車なので、かおはおなじです。
E233けい0ばんだいは、ちゅうおう線(とうきょう~おおつき)、ふじきゅうこう、おうめ線、はちこう線、いつかいち線などでうんようされています。
「でもおれは、きのうしゃたいをみがいてもらったからな。」
だいすけは、おでこのひょうじを ピカピカとさせてじまんしました。
はやとはとてもくやしいきぶんになりました。
「じゃあおれはさきにいく」
しはつのだいすけが、とびらをしめて走りだします。
「ねぼすけは、あとからゆっくりきな。」
だいすけは笑いながら、10両もあるながいへんせいのからだを走らせて、ホームを出ていきました。
はやとたちE233けいは、もともとちゅうおう線かいそくやいつかいち線でうんようされていた201けいのおきかえ車両でもあります。なのでへんせいも、201けいにじゅんじています。
「運転士さん。ぼくたちもはやくいこうよ。」
「こら、はやと。まだしゅっぱつのじかんじゃないそ。」
おこられてきがつくと、はやとのいるホームではおきゃくさんがまだのりこんでいるとちゅうでした。はやとはじれったいきぶんでまちました。
すこしへんせいのはなしにもどりましょう。
E233けいの3しゅるいのへんせいは、10両かんつうへんせい(TcMM'MM'TTMM'T'c)・ぶんかつ6両(TcMM'MM'T'c)・4両(TcMM'T'c)で、10両へんせいがTへんせい、6両・4両へんせいはHへんせいと青へんせい(おうめ線・いつかいち線ないげんていうんよう)にわかれています。
「運転士さん、まだ?」
「まだだよ」
へんせいについてのほそくです。Hへんせいと青へんせいはしよう上のさいはほとんどありませんがうんようけいたいにちがいがあります。Hへんせいは6両きほん・4両ふぞくのぶんかつへいごうでうんようされますが、げんそくとしておなじへんせいばんごうのしゃたいでしかれんけつされません。しかし青へんせいではことなるばんごうのへんせいどうしがれんけつうんようされています。
ようやくおきゃくさんののりこみがおわりました。
「じゃあはやと。しゅっぱつしようか。」
「ようし。いくぞ。」
じょうきゃくをのせたはやとは、からだにちからをいれます。モーターが回り、ちからがだい車につたわります。
「がんばってだいすけにおいつかなきゃ。」
はやとはおおいそぎで豊田えきから走りだしました。
ちなみにここでいうおおいそぎとは、E233けいでせんたくかのうなきどうかそくど2.3km/h/s・2.5km/h/s・3.0km/h/sのうちでさいこうの3.0km/h/sをさします。E233けいの下まわりはE531けいのはってんがたでE231けいとくらべてもせいのうがこう上しています。MT75がたしゅでんげんきやDT71けいだい車(モハ:M、M')・TR255けいだい車(クハ:Tc, Tc'・サハ:T)はE351けいときょうつうですが、かそくどのほかにげんそくどでも5.0km/h/sとたかいせいのうをほこっています。
はしりだしたはやとは、となりの日野えきにむけてそくどをあげていきました。
車ないではそうちょうのお客さんが、きもちよさそうにゆられています。いねむりをしているひともいます。
さて日野えきまで二ふんあるので、そのあいだにおきゃくさんがちょくせつふれるせっきゃくせつびるいについてせつめいしましょう。まずE531けいからうけつがれたせつびとしておおがたつりかわ・アルミばんのにだな・はくしょくけしょうばん・きゃくとびらふきんのゆかしたてんじブロックなどがあげられます。またバリアフリーたいおうもすすみ、かく車両の両たんぶぶん(ゆうせんせきふきん)と一ごう車(じょせいせんよう車両)でつりかわとにだなのいちが下げられています(50ミリ)。
はやとは日野バイパスの下をつうかしました。
あと一分。
ないそうのおおきなへんかとしてはやまのて線のE231けい500ばんだいでそうびされていたきゃくとびらじょうぶえきしょうモニタがさいようされたことでしょう。すべてのきゃくとびらの上に2きずつせっちされ、こうこくどうがとろせんあんないをどうじにひょうじできるようになっています。またきゃくとびらはサイドがわにはんじどうスイッチもそうびしていて、とくていくかん(ちゅうおう線さがみこいせい・おうめ線おうめいほく・いつかいち線・はちこう線・ふじきゅう線)でのはんじどうかいへいうんてんにたいおうしているほか、くうちょうこうりつをたかめるための3/4かいへい(車両の四まいのきゃくとびらのうち一まいだけをあける)もかのうです。
はやとは、日野えきにとうちゃくしました。
ていこくどおりです。
「運転士さん。だいすけは いまごろ どのあたりかなあ。」
「国分寺くらいだよ。」
「そんなに。」
だいすけは15ふんもまえに出ていったので、もう四えきもはなされています。はやとは、あわててとびらをしめて、日野えきをしゅっぱつしました。
たま川にさしかかったはやとは、てっきょうをわたります。
E233けい0ばんだいの車たいが、あさひにかがやく川の上を走っていきます。
ひじょうにせんれんされたフォルムです。
きのうびすらかんじます。
みなさんも気になるぶぶんかとおもいますので、がいかんのことにもふれましょう。いいかげん、ようごがおおくなってよみづらいかもしれないので、ここからふつうにかきます。わからないかんじはおとうさんかおかあさんにきいてください。E233系はE231系とE531系の発展形なので側溝基準線間2950ミリ・雨どい間2966ミリの基本的なサイズは前記二車種と同様ですが、細部を伺うと各所の改良や仕様変更が確認できます。前面・側面に設置されたLED表示装置はフルカラー化。停車駅のスクロール表示などにも対応しています。また側面客扉のドアガラスが接着式単層ガラスから複層ガラスに変更され、さらに従来帯なしだったドアに側面帯がかかりE231系からは大きく印象が変わっています。この他の外観の差異としてはホーム段解消のための車両床面低下(35ミリ)、衝撃吸収構造の運転台の採用などが挙げられるでしょう。あとはやとが立川に到着しました。
「運転士さん、はやくはやく。だいすけにおいつかなきゃ。」
「そんなに急いじゃあいけないよ。あぶないから。」
はやとは運転士さんの制止も聞かずに立川駅を飛び出しました。あくまで念の為として補足いたしますと、はやとが自らの意思で速度を上げているのは物語上の要請からであり、現実にこのような事態は起こり得ません。事故を未然に防ぐためにはダイヤの厳守が不可欠です。またこの物語構成はダイヤ乱れが多いと言われる中央線の運行状況を揶揄したものではありません。中央線は確かに列車遅延が多い路線というイメージがあることは否定出来ませんがその主因はこの物語のような人的トラブルによる事故ばかりではないのです。では列車遅延の真の原因は何か。一つは長距離列車の乗り入れの影響です。中央線には山梨方面に往復運行している特急『あずさ』『かいじ』、加えて山岳区間で運行する貨物列車が乗り入れており、つまり普通列車の専用線区ではないのです。これらの長距離列車は特急であるため、気象状況などの影響で遅れて中央線に到着した場合は普通列車の側が退避して線路を譲る必要が生じます。こうして長距離車の小さな遅れが他の全ての列車に連鎖的に影響を与えることになり中央線全体のダイヤ乱れに繫がるのです。また長距離特急を除いても中央線には特別快速・通勤快速といった速度差のある列車が常時運行しており、そのダイヤ形態の複雑さが乱れ易く戻り難い中央線の遅延イメージの元凶なのではないでしょうか。
「ん? あれ!?」
突然、はやとが声を上げました。運転士さんが計器を確認します。
「たいへんだ、はやと。どうりょく車のこしょうみたいだ」
「そんなあ!」
なんとはやとはだいすけに追いつこうと必死に走り過ぎて動力が壊れてしまったのです。見る見るうちに速度が低下し、はやとはついに止まってしまいました。
「うごけない、うごけないよお。運転士さあん!」
噓です。再三の説明になりますが現在はやとが停車しているのは物語としての要請からに過ぎません。はやとは動けます。何故ならはやとは新系列車両〝第3世代〟E233系車両だからです。E233系車両は『故障に強い車両』というコンセプトで開発された、首都圏の車両故障・復旧遅延問題に対応する新型車両です。第一のポイントは編成内MT比変更。901系以後の基本編成は10両編成に動力車4両の4M6T編成を基本としていましたがE233系では6M4Tの基本編成に見直されており、動力故障への対応能力が格段に向上しています。それに伴いモニタ装置・保安装置・補助電源装置などの重要箇所が二重化されていて一系統に故障が発生してもバックアップ系統を利用することで退避場所に迅速に避難することが可能になっています。他にも電動空気圧縮機の搭載台数増加、予備パンタグラフ設置、高圧母線引き通しなど事故時自走を助ける様々な工夫が施されているE233系のはやとが突然動けなくなる確率は非常に低いと言えるでしょう。またそもそも論にもなりますが列車自身が過剰な走行を行って故障が発生するという事態があり得ません。賢明な読者の皆様は既にお気づきの事と思いますが念押しのために一言だけ添えますとはやとのような電車は存在しません。喋る電車は生産されていませんし顔なども必要がありません。あくまでも仮定の話としてE233系車両に顔を取り付けるとした場合、配置場所は前面オオイの中央下部が妥当でしょうがしかしE233系0番台のオオイといえば総合車両製作所(旧東急車輛