野崎まど劇場(笑)

作品 No.21 東京ねこさんぽ



 長い間ネコの写真を撮り続けていると、なんとなくですが、彼らの言っていることが解るようになってきます。

 最初は「お腹がすいたよ」「興味ないね」というような簡単な言葉だけなのですが、「一緒にお散歩してもいいよ」とか「お昼寝するから邪魔しないでね」とか、細かな意思が次第に実感を持って感じられるようになりました。

 でも実を言うとそれは、僕がネコの言葉を解るようになったのではなくて。たまたまネコの方が僕に対して「こいつになら、たまには解るように話してあげてもいいかな」という気分になっただけなのだと思います。

 けれどそんなネコたちの気まぐれがとても嬉しくて、僕は今日もカメラを持ってネコを探しに出かけていくのです。


動物写真家  石村 照成 






















 ネコはいつだって気ままに、ファインダーの前を高速で通り過ぎていきます。やっぱり動物は人の思うように振る舞ってはくれません。

 でも、だからこそネコと人は、本当の意味で対等の友達になれるのかもしれないと思うのです。

 大切な親友であるネコ達に呆れられないように、僕は今日もネコのぬいぐるみを使って写真の練習に励んでいます。


動物写真家  石村 照成 


刊行シリーズ

独創短編シリーズ2 野崎まど劇場(笑)の書影
独創短編シリーズ 野崎まど劇場の書影