短編③ ~JK2人、田舎町食べ歩き日記~ 三皿め 友だちで焼肉いくと絶対にプリン焼こうとするやついたよね④
しみじみ言うと、二人とも即座に肯定した。
「わかる」
「一度、これに包まれてみたいよねえ」
「でしょでしょー? 男は挟むもん持ってるし、いいよなー」
「ぶはっ? 日葵さん、それはダメでしょ……」
三人で盛り上がった後、疲れ切った感じのえのっちに向いた。
「ということで、アタシ悪くないよなー?」
「…………」
がしっ。
なぜかアタシの頭が、えのっちの右手で掴まれる。
おやっと思う間もなく、ギリギリギリと締め上げられていった!
「もぎゃあああああああ……っ?」
アタシはいともたやすく沈められると、ギシギシ軋む頭を抱えて訴える。
「だって、二人もえのっちのミラクルバストを触るのは致し方なしって言ってんじゃん……っ!」
「本当に触っていいって話じゃないと思うんだけど……」
ええい、それじゃあ奥の手!
アタシは親指でビシッと指さしながら、思い切り胸を張ってみせた。
「それなら、アタシのおっぱいも揉んでいいから?」
「ひーちゃん、本気で意味わかんない……」
えのっちがハアッとため息をついて、ふいっとそっぽを向く。
「それにひーちゃんの胸とか触っても、何も楽しくないし」
カッチーン。
その発言、さすがにモテ女を自称するアタシは許せませんよ。
「シッツレーな! 毎日毎日、これに触りたくてしょーがない男どもが羽虫の如く寄ってくる代物ですけども!」
「張り合うポイントがよくわかんないんだけど……」
「むしろ暖かい季節になると『おれの胸を揉んでくれ!』って変態さんとか出てくるほどですけども?」
「ひーちゃん。わたしが悪かったから、もうやめて……」
えのっちが顔を真っ赤にして降参する。
相変わらずリアクション初心っぽくて可愛いなー。
こんなに可愛いのに押しに弱くて、お姉さん将来が心配だよ。
「はぁー。この奇跡の娘っ子を嫁にもらう男はどんなんかなー?」
アタシが黄昏ると、フレンズ二人もうんうんとうなずいてくる。
「凛音って、びっくりするくらい浮いた話ないからねえ」
「校外の大学生とかと付き合ってんじゃね?」
「ないない。この子、そういうの隠せるタイプじゃないって」
「あー。確かに、すぐ態度に出そうだねえ」
とか言ってると、フレンズの眼鏡ちゃんが「あっ」と何かを思い出したっぽく言う。
「態度と言えば……凛音って最近、なんか好きな男できたっぽいよ?」
「ほんと?」
アタシはガタッと立ち上がると、えのっちの肩をぶんぶん振った。
「えのっち、誰? どこの馬の骨に引っかかったの? お父さん許しませんよ!」
「ひーちゃん、うるさい! そんな人いないから!」
うるさいって言われた……。
アタシは一人でしょぼくれた。
「えのっちが不良になった……」
「ひーちゃん、面倒くさい」
アタシはぶーっと唇を尖らせて抗議する。
「じゃあ、その好きな男ってのは何なのさー」
「す、好きとかじゃないし。ちょっと気になることがあっただけ」
「ヒント! ヒントだけでいいから!」
「ひーちゃん、もう自分のクラス帰ってよ……」
フレンズの三つ編みちゃんが、にやーっと笑いながら言った。
「でも、さっきも飲み物買うついでに寄ってきたんでしょ?」
「そうなの?」
「そだよー。わたしたち、ついていこうとして止められたんだよねー」
それはびっくり!
えのっち、ハブられてるわけじゃ……あ、いやいや。そっちじゃない。
「どこ行ったの?」
「んー。日葵ちゃんのとこ寄ってくとか言ってなかった? だから二人で戻ってきたんだと思ってたけど……」
アタシのとこ?
「なんでアタシのとこに? えのっち、怒ってたんじゃ……?」
「っ?」
えのっちが、ドキッとしたように視線を逸らした。
そのリアクション……アタシ、気づいちゃった。
胸がきゅっと締め付けられるような感覚。
この口の中が苦くなるような気持ちは、もしかして……?
アタシは唇を噛むと、えのっちの肩に手を置く。
そして視線を逸らしながら、ちゃんと頑張ってお返事した。
「えのっち、ゴメンね? アタシ好きとかよくわかんない恋愛ポンコツガールだけど、一応、ノーマルだからさ?」
「…………」
えのっちは無言だった。
その表情は、今の言葉が信じられないって訴えている。
(あ、これはよくないな……)
そうだよなー。
たった今、アタシにツンデレなのがバレちゃったんだもん。
二重の恥ずかしさで頭が真っ白のはず。
それにえのっちフラれ慣れてないだろうし、はっきり断るのよくなかったかも。
アタシにフラれたことにショックを受けて、自暴自棄になっちゃったら困るよね。
その気持ちには応えられないけど、アタシ大切な友だちだと思ってるからさ。
「あ、でもえのっち相手なら、お試しでやってみる? そうしたら案外、目覚めちゃったりするかもだし。アタシも女の子とするの初めてだけど、何事も経験だよね。だから、そのおっぱいも触り放題ってことでオッケー……おりょ??」
なぜかアタシの頭が、がっしりと右手にホールドされている。
ありゃりゃりゃりゃ?
えのっち、もしかして好きって気持ちを暴力で表現するタイプなのかな?
だとしたら、ちょっとお試しでもノーセンキューっていうかなー?
ちゃんとこういう部分を先に知れてラッキーだった……あいだだだだ。手のパワーが強くなってきた。あ、これ、もしかしてアタシの勘違いかな~?
「ひいいいちゃああああああああああん……っ?」
「~~~~~~~~…………ッ?」
もはや声にならない悲鳴がつんざき、アタシは教室から叩き出されるのでした♪