第二章 ①

 妹のに初めて入ってから、数日がっていた。

 おたがいに『あいしようたい』を知って、何かが変わるかと思いきや、そんなこともなく。

 おれたちはふたたび、いつもどおりのにちじようへと戻っていた。

 ぎりは部屋から出てこないし、俺は学校とごとり返しの日々を送っている。


 ──いつしよらしていることを、家族とは言わないもの。


「まったくだ。言われずともわかっているさ」


 それでも俺は、あいつの家族になると、あにになると決めた。

 こんなていでへこたれるわけもない。

 と──

 どんどんどんどん!

 てんじようから、ごはんのさいそくが聞こえて来た。


「はいはいはいはいはい、いま持っていくよ!」


 俺はいつもどおり、妹の部屋に朝食を運ぶのだった。


「ん……んん……」


 大きく伸びをして、かたりをほぐす。

 今日は土曜日。学校は休みである。

 俺はたいてい金曜日から日曜の夜まで、えんえんと起きて活動しているので、まだまだ元気はあまっている。

 へいじつは学校があるから、なるべく週末にまとめて仕事を進めてしまおう──というのが、俺に限らずけんぎようさつの考え方じゃないだろうか。


「とりあえずに入って、それから買い物に行くか」


 ずっと俺が家にいたら、紗霧がこまるだろうしな。

 なんて、そんなことを考えていたとき。

 ぴんぽーん、とインターホンが鳴った。


「おおっと、紗霧~、出てくれ~」


 妹の部屋に向かって声をけてみるも、もちろんはんのうは──

 どん!

 あったけどさ……。


「そんなキレることないだろ……」


 いまのシチュエーションで、俺にたのまれた妹が「は~いっ♪」とかわいくらいきやくむかえるってのがそうなのに……。俺のゆめかなう日は遠そうだぜ、ったく。

 ぴんぽーん、ぴんぽんぴんぽーん!


「は~いっ♪」


 かなしいかなげんじつでは、かわいい返事をしてらいきやくむかえるのは、あにの方なのであった。

 しかしせっかちな客だな。インターホンれんしやがって……。


「ごめんくださーい! ごめんくださーい!」


 と、元気のいい女の子の声が聞こえたところで、げんかんとうちやく

 おれはドアノブをひねって開ける。


「どちらさまですか──っと」


 いつしゆんこうちよくしてしまった。そこにいたのが、びっくりするぐらいの美少女だったからだ。

 白とこんのセーラー服。ロングのちやぱつに、夕方の日差しがきらきらとはんしやしてかがやいている。

 なによりいんしようぶかかったのが、そのきようれつがおだった。

 生命力にあふれているというか、見ているだけで元気が出るというか。

 こいつがゲームキャラだったなら、絶対に光ぞくせいだ。

 びりびりとせいのオーラを放っているもの。


「………………」


 俺は階上を見上げ……

 ……うちの妹とは正反対だな。

 なんて思った。

 俺の妹は、とびきりれんではあるものの、びようてきに白いはだたけは低く、むねはぺったんこ、声は小さく、ときおりたましいい取るような笑顔を見せる。

 完全にやみぞくせい

 びりびりとのオーラを放っているものな。

 もっとも、そんなろくでもないめんばかりだけじゃないのだが──

 なんて物思いにふけりそうになったところで、目の前の彼女がきょとんとしていることに気付いた。


「あ、ああごめん。で──えっと、どちらさまでしょう?」


 というかこんな美少女が、に何の用があるというのだ。

 彼女は『よくぞ聞いてくれた』とばかりのとくげなぐさで、堂々と名乗りを上げた。


「あたしはじんめぐみっ、和泉いずみぎりさんのクラスメイトですっ!」

「紗霧の……クラスメイト?」

「はい!」


 紗霧のクラスメイトってことは、あいつと同じとしってことで……つまり……中一ってこと? ずいぶん大人っぽいな。ちょっと前まで小学生だったやつとは思えない。俺と同じ歳くらいに見える。


「ときにおにーさんは、和泉いずみさんのおにーさんですかっ?」

「おう、そうだぞ」

「でも、血はつながってないんですよねっ?」

「…………まぁな」


 言いにくいところをズバズバ来やがるな、この

 別にいやな気分にはならなかった。むしろ、ハッキリしていてこうかんが持てる。


「聞いたところによると、いまは妹と二人でらしている……で、よかったですかねっ?」

しやはいるから、二人暮らしってわけでもないな」


 よそ行き用の答えを返す。あの保護者はちっとも帰ってきやがらねえから、実質二人暮らしみたいなもんだけどな。……そこまでがいしやに言うひつようはない。めんどうごとになるだけだ。

 めぐみは「ふーん」と、気のない返事をする。

 何を考えているのか、わからない。

 いまのやり取りを見ると、のことについて調べてきたような感じだが……。

 学校が休みなのに、せいふくで来たってことは、学校関係の用事だろうか。


「ええと……じんさん、だっけ?」

「めぐみんでいいですよー。学校ではみんなそう呼びますしっ」


 おれはおまえの友達でもクラスメイトでもねえよ。

 んなずかしいニックネームなんぞ使ってられっか。

 ……なんて言えるはずもないので、


「じゃあ、めぐみちゃん……でいいかな」

「え~、だめですよぉ」

「だめなの!?」


 まさか断られるとは……。


「あたし、おにーさんとなかくなりたいなぁ。『めぐみん』がど~してもだめっていうなら、『めぐみ』って呼びてにしてください」


 うわづかいで、手を組んだ『お願いポーズ』で言うめぐみ。

 ……なんだこいつ、れ馴れしいガキだな。


「わかった、よろしくな、めぐみ」

「はいっ!」


 かがやかんばかりのがお

 そのへんの男子なら、一発でとりこにしてしまえるような可愛かわいさだった。


「で、君はなんでうちに? ぎりにプリントでもとどけに来たの?」

「………………」

「ん? どした?」


 聞くと、めぐみは急にむすぅっとして、


「あっれぇ~? おっかしーなぁ、あたしにひとれしない男の子なんて、いるわけないのに」


 ものすごいことを言い始めやがったな。どんだけしんなんだ。


「おにーさんてぇ、男の子がきな人?」

ちがう! どうしてそういうけつろんになるんだ!」

「だってぇ、あたしが全力で笑ってあげたのに、ちっともどうようしないんですモン」


 ……こいつ……見た目はてん使かもしれんが、せいかくあくだな。

 わざとやってたのかよ、アレ。すえおそろしいガキだ。小学校卒業したばっかのくせに。


たしかにおまえは、かなり可愛かわいい方だと思うけど、だからって別に一目惚れなんかするか」

「むー」


 めぐみは、くちびるをすぼめてなつとくいかないという顔をしている。

 バカめ。さまえる美少女である妹のぱんつを日々洗っているこの俺が、いまさら女に一目惚れなどするものか。

 めぐみはほおふくらませて、


「あたしにはんのうしないなんて、おにーさんのおちんちんは、使い物にならないんですねっ」

「はいはい、もうそれで──────なに?」


 長いちんもく

 え? なに? 聞きちがい?


「おま……君……小学校卒業したばかりだよね?」

「そうですよ?」

「俺の妹と同じとしなんだよね?」

「そうですよ?」

「いま、おちんちんとか言わなかった?」


 なに言ってんだ俺。これで聞き間違いだったら、社会的にしゆうりようではないか。

 まとめブログにもってしまう。

ほう】ラノベさつ和泉いずみマサムネさん、十二歳美少女にセクハラする。

 などと……し、しかし……


「言いました! なにかおかしいですかっ? おちんちん、だいきですけど!」

「だ、大好き!?」

「はいっ、あたしと同じくらいの歳の女の子は、みんなおちんちん大好きです!」


 ありえない! こここ、こんなことはありえない! 同じ歳くらいの女の子!? しょ、小六とか、中一とかだぞ! イマドキの小学生女子が、そこまでせいてきにみだれているとでも!?


「ば、バカな……バカな……」

刊行シリーズ

エロマンガ先生(13) エロマンガフェスティバルの書影
エロマンガ先生(12) 山田エルフちゃん逆転勝利の巻の書影
エロマンガ先生(11) 妹たちのパジャマパーティの書影
エロマンガ先生(10) 千寿ムラマサと恋の文化祭の書影
エロマンガ先生(9) 紗霧の新婚生活の書影
エロマンガ先生(8) 和泉マサムネの休日の書影
エロマンガ先生(7) アニメで始まる同棲生活の書影
エロマンガ先生(6) 山田エルフちゃんと結婚すべき十の理由の書影
エロマンガ先生(5) 和泉紗霧の初登校の書影
エロマンガ先生(4) エロマンガ先生VSエロマンガ先生Gの書影
エロマンガ先生(3) 妹と妖精の島の書影
エロマンガ先生(2) 妹と世界で一番面白い小説の書影
エロマンガ先生 妹と開かずの間の書影