第二章 ⑩
初めて聞くくらい
「い、いやっ」
さっき
本人を目の前にして、『あいつにおまえを
「な、なんでもねーよ! 忘れてくれ!」
「そ、それよりっ! おまえこそ……どうしたんだ?」
「え? ……どうしたって……なにが?」
「なんでいま、
いままでだったら、どんなに
「……あ」
ほんのりと
俺はもう一度
「なんでだ?」
「…………え、えっと」
紗霧は俺から目をそらす。くしゃりとパジャマの
「えっと……その……えっと」
「………………」
しばし、
「し、しらない……」
「おい、そこ
いままでは開けてくれなかったのに、いまは開けてくれたのだから。
『いままで』と『今』。ほんの少しの短い期間で、いったい何が
俺たちの関係は、変わっていないはずなのに。
「しらないったら……しらない」
「? もう少し大きな声で
「な、なんでもないって言ってる。じ、じ、自分だって……」
自分だって言わなかったんだから、お
と言いたいらしい。
「それを言われると
「……い、言わない。だって、しらないし」
これはダメだな。いくら話しても
「……わかったよ。お
理由はわからないが『
その事実だけで、じゅうぶんとしておくさ。『開いた理由』は気になるが。
「……ね、ねぇ……」
「ん? どうした?」
「…………兄さん……その…………あの女から……なにか、聞いた?」
「あの女って……めぐみのことか?」
どうしていきなりその話が出てくるのだろう。
「なにかって?」
「……な、なんでもない」
そう言いつつ、紗霧は明らかにホッとした
俺が
「そ、そうだ! それより!
「お菓子って……メモで頼まれてたアレのこと?」
「……う、うん……いま開けたのは、それを受け取るためだから……ほかに、ないから……」
「……そう、だったのか……?」
紗霧は『開かずの間』をうっかり開けてしまうくらいに、俺の買ってくるお菓子を
もちろん俺が、妹との
「ほら、買って来たぞ」
俺はビニール
今回俺が買って来たお菓子は、にっき
兄の
「…………はぁ」
「どうした、紗霧?」
「……いい
「そんなら自分で買いに行きなさいよ!」
つい、オカンみたいなツッコミをしてしまった。
この後、紗霧は『開かずの間』の扉を、ときおり開けてくれるようになった。
といっても。本当に、たまに、だけどな。
「そ、それと……これからは、自分の下着は自分で洗うから。兄さんは絶対に
そんな……いったい何があったというんだ。