第一章 ⑦
だからおまえの
「ぜ、ぜったい? ほんとに、ほんと?」
「絶対の絶対。本当に本当に本当だ」
「ウソだったら……許さないからね」
「おお、好きにしろよ」
フ──いい加減にしてくれねえかな、なんだってんだ……。
……あん? 何をするつもりだ?
「お、おい……おまえ……何やってんだ?」
桐乃は俺の質問には答えず、残った本棚(こちらは半分くらい本が収納されている)の側面に肩をあて、ぐっ、ぐっ、と
ズ、ズ……と、分厚い本棚が少しずつズレていく。そうして現われたのは、洋室にはそぐわない
「うお……」
桐乃は「ふぅ」と一息ついて、言う。
「……あたしが中学入って、自分の
「へえ……」
「で……人生
桐乃は
「…………」
とくれば、これまでの話の流れで、察しのよくない俺にも、襖の奥に何が入ってるのか想像がつくってもんだ。こいつが躊躇している理由もな。
──人生相談ねえ。……どうして俺なんだろうな?
「ふむ……」
自分が桐乃の立場だったらと想像してみる。
えーと……人生相談ってのは大きくわけて二種類あるよな?
いっこはまぁ、一番よくあるケースで、『事情に通じてて頼れる人間』相手に相談する場合。
この場合は当然『自分が抱えている悩みとか問題が、どうやったら解決するのか』
んで、もういっこは、『事情を知らない第三者』相手に相談する場合。
こっちの場合は、有効なアドバイスなんざハナっから期待してなくて、とにかく『話を聞いて欲しい』から相談するわけだ。
でもって、
……だとすっと?
桐乃の悩みが俺の想像どおりなら、そもそも他人に相談すること自体が
自分のイメージを崩すのが
いま、桐乃が開けっぴろげに相談できる相手は、たった
『すでに相談内容を知っていて』、『相談した結果、どう思われようが構わない、どうでもいいやつ』──つまり俺。
へーえ。そういうことかよ……。妹が抱える大体の事情を察した俺は、さっさとうざったい用事をすませて
「心配すんな。そこから何がでてこようと、俺は絶対バカにしねえし、秘密にしろってんなら、絶対
俺の打算に満ちた
「……約束だからね」
と念を押すように
がら……
ぼとっ。
「……ん? なんか……落ちた……ぞ?」
俺はつまびらかになった
それはまたしてもDVDケースで──
タイトルは『妹と恋しよっ♪ ~妹めいかぁEX Vol.4~』だった。
「げふんげふんげふんげふん……!?」
盛大にむせた。
ほ、本体登場──!? 考えてみりゃアニメだけじゃなくて、アレの持ち主もこいつだった!
「な……なんだ……コレは……」
「あ。それは最初プレステ2から出たんだけど、パソコンに移植されてから別シリーズ化したやつね。名作ではあるけど、ちょっと古いし内容もハードだから、初心者にはおすすめしない」
んなこた聞いてねえよ!? 大体なんだ初心者って? おまえはプロか? プロなのか?
チクショウ突っ込みどころが多すぎて、俺のスキルではカバーしきれねえ!
い……いったい何が始まろうとしているんだ?
お、
『妹と恋しよっ♪』というファーストインパクトで脳をやられてしまった俺は、スデにグロッキーだった。だがこんなモノは、
「くっ……」
だが、そこに
まず目につくのは、上段にうずたかく積まれた大量の箱。
「……その……箱は……?」
「これ? これは、パソコンゲームの箱」
桐乃はちょっと得意げな
そのほとんどは『妹めいかぁEX』シリーズで、タイトルの例を挙げると『
「なんで……こんなに箱がでかい?」
「……それは、あたしにも分からない。でも、こういうものなの」
世界の
ゴクリ……いまにも口をついて出てきそうな危険な突っ込みをギリギリのところで飲み込みつつ、俺は
そこにはやはりドでかい箱が、でん、でん、でん、でん、と並んでいる。
パソコンゲームの箱よりもさらにでかく、規格が統一されていない。それぞれ女の子のイラストが描かれていたり、メタリックに
「こっちの……コレらは……な、なんなんだ?」
「アニメのDVDボックス。ここにあるのはぜんぶ特製ボックス仕様」
「DVDボックス? 特製ボックス仕様?」
情けないが、オウム返しに問い返すのが精一杯だ。
「そう。
「その……星くず☆うぃっち……とかの?」
「うん」
桐乃のテンションは、
自慢のコレクションを
ところで気になるんだが、
「こういうのって……結構高いんじゃねえの?」
「んー? まあ、わりとね。えっと、コレは41,790円でしょ? コレは55,000円でしょ? で、えっと、こっちは──」
「
「そう? ……服一着か二着分くらいでしょ、こんなの」