第二章 ⑤
俺のネガティヴな感想を
「あのね、こういうゲームの主人公って、プレイヤーが感情移入しやすいように、たいてい平凡で地味な性格に設定されていることが多いの。あと、
「ふーん」
……自分のことを言われているわけじゃねえはずなのに、妙に胸がズキズキと痛むのは、なんでなんだろうな。同姓同名だからなせいか、まるで他人とは思えん。
よし、つまらん男と言ったのは
しっかし……この手の話題になると、
俺は桐乃の楽しげな解説を聞きながら、クリック、クリック、クリック、クリック…………
平凡で地味なモノローグが終わり、画面が暗転。ちゅんちゅん
京介「ふぁ~~……よく寝たなぁ。
さて、ゲームテキストをそのまま表記していくのもなんだ、要約して説明するとだな。
このゲームの本編は、主人公・京介が自分の
京介「うわっ……し、しおり……?」
がばぁっ。あわてて起き上がる。ぱちぱちとまばたき。
ん? 妙に反応が
おいおい、もっと身の危険を感じろよ京介。寝ぼけてんのかおまえ──。朝起きたら、妹が
ちなみに、しおりとやらの見てくれは、黒髪ツインテールの気弱そうなチビガキである。
この前、
「ねぇ、ねぇ、すやすや無防備に眠ってるところ、どう? びっくりしたっしょ?」
「いや……どうだろう、な。……ふ、普通?」
イベントCGを絶賛している桐乃に、
クリックしてテキストを進めようとすると──ぽこん、画面中央に新しくウィンドウが開く。
「お?」
「それが
「ふーん? ……で、じゃあ、どれを選べばいいんだ? 三つくらいあるけど」
「は? そこは自分で決めなきゃゲームの意味ないじゃん。大丈夫だって、このゲーム、選択肢すっごく
軽く言う桐乃。なるほど、それもそうだな。
俺は主人公が取るべき行動を選択することにした。えーと……なになに?
すやすや眠るしおりを、俺は……
1.ぎゅっと
「却下だな」
死ぬつもりか? 妹の寝込みを抱き締めるとか、狂気の
2.起こしてしまわぬよう、そっと
「ふむ……」
3.
ドゴッ!(画面が振動するエフェクト)
京介「おい、勝手に人の布団入ってくんじゃねーよ! さっさと起きろバカが!」
よし! 適切な行動だ。それでこそ兄。ふん、なかなかいいゲームじゃねえか。さてお次は、
「しおりちゃんになんてことすんのよッ!?」
ドゴッ! 現実の妹から
「ってぇな!? いきなりなにすんだ!?」
起き上がるなり文句を言った俺を、
「なにすんだはこっちの
「いや……その……まずは妹に、なめられねーよーにと……ね?」
「はぁ? なんか言ったいま?」
「なんでもないっす」
弱っ! 俺、弱っ……。ったく、こっちの妹は
俺は蹴っ飛ばされた
しおり「ご、ごめんね……ごめんね京介おにいちゃん……ひくっ……わ、わたし……ゆうべ……ひとりじゃねむれなくって……それで……そのぉ……」
京介「はぁ? なんか言った?」
しおり「ひぅ……な、なんでもないよう…………え、えへへ! おはよ、おにーちゃんっ」
しおりは、俺が蹴っ飛ばしてやった
「いやな野郎だな、この主人公」
「自分の選択の結果でしょっ!? つか、こんなシナリオあったんだ! こんな選択肢絶対選ばないから初めて知ったんだけど! ……あーもぅっ……かわいそうじゃん、しおりちゃん」
ゲーム開始早々ひどい扱いを受けているヒロインをあわれむ桐乃。
でもおまえ、たったいま、俺に似たような台詞言ってたよね?
ゲーム開始早々、朝っぱらから
そこでは、主人公を
「なぁ桐乃? こいつら似てないにもほどがあるだろ。どう見ても血ぃ
「しょうがないでしょ。ヒロインごとに描いている人が違うんだから」
ぴっろりん。画面が食卓を
「お? またなんか画面変わったぞ?」
「それはイベント
「ふーん。ところでさっきから言ってる『好感度』ってなに?」
「妹が兄をどれだけ好きかってのを、数値化したパラメータ。これが一定数値以上じゃないと見られないイベントとかあんの。もちろん個別エンディングもそう。だから基本的には、攻略したい妹とのイベントをいっぱい見て、好感度を上げていくのがクリアのコツ。ちなみに複数の妹の好感度をたくさん上げておくと、バレンタインとかで特殊イベントが発生しやすくなるから絶対押さえておくべきね」
さっきからこいつ、説明に
「そ、そうか……ところで聞くけど、おまえの俺への好感度はいくつ?」
「……聞きたい?」
「いやいい」