第四章 ①
例のオフ会があった日から一晩が明けて、いまは翌日の
いつものように
「で、最近は、くまの
「ふーん」
「……ねぇきょうちゃん?
「いや、いつもどおりおまえと
ろくに話聞いてないのがバレたのか? でもそんなのいつものことだしなぁ……。
それに怒ったなら怒ったで、コイツは、ぷんぷんっとか分かりやすく口走るだろうし。
じゃあテストが近いわけでもねーのに、週に三度も四度も勉強に付き合わせたのが悪かったのか? ……いやー……それもなんか違うような……。
などと、うろんな
「だってきょうちゃん……。朝からずーっと、すごく疲れてるみたいだから……」
「ああ、それなー」
そりゃそうだろ。なにせ
精神的に
あのボケ、なーにが『サイアク! 今日はほんっと大失敗だった! チッ……そーいえばオフ会に行けなんて言ったの
結構楽しそうだったじゃねーか。どんだけ素直じゃないんだよアイツは。
そりゃ多少なら、かわいいもんじゃねーのって思うよ? でもさー、となりのシートで一時間半ずーっと舌打ち連射してんだぜアイツ? もはや憎たらしさしか残らないっつの。
「はぁ……」
俺は本日何度目かになる、重いため息をついた。肩をがっくりさせながら、言う。
「まぁ……
「そっかぁ……残念だけど。……それじゃあ仕方ないね……」
俺とそっくり同じポーズで、がっくりする麻奈実。こいつはいつも、俺が
毎度毎度ご苦労なこった。いちいち他人に共感しちまうんだから、このお
ま、ありがたいっちゃ、ありがたいけどさ。いまさら礼なんて言わねーぞ?
「ああ。だから今日は、ぱーっと遊びに行こうぜ?」
「えっ……?」
意表を
「これから
「う、ううんっ。ぜ、ぜんぜんっ、イヤじゃないよっ」
「そか。じゃ、おまえ、どっか行きたいとこあるか? なんだったらとなり町まで出てもいいし……いま、なんか映画とかやってたっけ?」
「う、うーん」
せわしなく
一方、
このゆるいのとくっ
「ど、どこでもいいの?」
「おう。──どんと来い」
「それじゃー
麻奈実は、ゆるゆるの
「中央公園がいいなぁ」
「……一分の迷いもなく、
せっかくおごってやる気になってたんだから、そこはわがまま言っとけよ……。
「え、えー? なんで怒ってるの……? どこでもいいって言ったじゃない」
などと口を
「ま、いいや。せめて飲み物かなんかおごってやんよ」
「わ、ありがと。……それなら、お茶がいいかなぁ。あったかいの」
「はいはい、いつものな。ホットなぁ……もう春も終わるってのに、売ってんのか……?」
ほんっと……金のかからないやつだな。
どうしておまえは、たった百二十円で、そんな幸せそうな笑顔を浮かべられるんだ。
そんなわけで徒歩十五分と少々。俺たちはとなり町の中央公園にやってきた。
この辺の
春になると
「ほれよ、いつものやつ」
「ありがと。いただきまぁす」
ぷしゅっ。コンビニで買ったホットの緑茶を、ビニールから取り出し、フタを開けてから渡してやった。ベンチに座っている
「どうかしたか? 別に
「え? えへへぇ……なんでもない」
と……
意味が分からん。俺はもう一口茶を飲んで、ふぅ……と息をつく。
茶がうめえ。
「……んー……なーんか、いいよねー……こういうの。……ずーっと、千年くらいこうしていてもいいくらい」
「……そりゃ、いくらなんでも、気ぃ長すぎだろ。おまえの前世はぜったい
「それでもいーよ? きょうちゃんがお世話してくれるならね?」
そうやって。俺たちはしばらく、くだらねー話をしながら、ベンチで
いつだって、となりに麻奈実がいるだけで、
「あ~あ……眠くなってきた……」
ここで昼寝したら気持ちよさそうだ。
「きょ、きょーちゃんっ」
「……あ? なに?」
俺が寝ぼけ
「ど、どうぞっ?」
………………なに言っとんだこいつ?
何が『どうぞ』なのかサッパリなので、俺はいぶかしげに首を
と、そこで麻奈実の肩越しに、俺はとあるモノを見付けた。
お? あれって、もしかして──俺は思わず身体を横にずらし、目を
「……きょうちゃん」
「お、ワリ。で、なんだっけ?」
再び麻奈実に
な、なんか麻奈実から無言のプレッシャーが……
怒り心頭みたいな感じで、顔が耳まで赤くなってるし、それに、
「…………
「もおっ……きょうちゃんのばか」