第四章 ③
「へえ? そりゃまた照れるね。で──オバサン同士の
「もちろんアンタじゃないわよ」
ですよね! 分かってたけどな! 文頭に『もちろん』が付いたことによって、俺の心にドス黒い親への不信感が芽生えたわ!? ケッ、老後を覚悟しておくんだな!
「ふ、ふーん……とすると
ハイハイ、不出来な
「あの子ねー、
「へーえ、あいつ部活なんざやってたんだ?」
「なぁに? お
「ほっとけや」
おいおい……
アホか。いいかげんにしろ。漫画とかでよくある、過剰に長所だらけのキャラ設定聞いてる気になってきたわ。
だがこれで事実だから困る……。
いるとこにゃーいるんだよなあ~、こーゆうミュータントみたいな生き物。
「でもアイツ、部活やってる時間あんの? 勉強とか遊びとかさ──
「そこはもちろん、文武両道、ちゃんと両立させてるわよー。そうしなきゃお
「ふーん」
ま、そりゃそうか。
あの堅物がモデル活動なんて『ちゃらそう』なもんを、そう
いまにして思えば、髪染めんのにしたって、ガキのくせに化粧すんのにしたってそうだ。
「あの子、お父さんと約束してるのよ。ワガママさせてもらう代わりに、その分、ちゃんとするってね」
「はー、ちゃんとねえ……」
適当に
お袋はむふふと
「おかげでぇ……ご近所で、すっごい評判いいのよお、あの子。外では
「えー?」
俺は思いっきり
人の話聞かないところはソックリだなこの
「もーお年寄りにも大人気! あたしもハナ高々なのよねー! すんごい
「でもそれって結局全部、
「不純な動機よー? いいじゃない別に、
桐乃は自分のワガママ通すために、
そこは認めなくちゃならんだろうよ。やろうと思ったって、なかなかできるこっちゃねえ。
少なくとも、俺にゃ無理だ。
「ふうん……」
しっかし最近、なにやら桐乃の話が出るたびに、凄い凄い言ったり言われたりしてる気がすんなあ。みんな
まあなぁ……。ずっと妹のことなんざ
正直、凡人の兄貴としては、妹ばかりが凄い凄いと
俺が複雑な表情で考え込んでいると、お袋が意表を
「そういえば最近あの子、表情がイキイキしてるのよねー。ま、あたしにしか分からないくらいの変化だから、だーれも気付かないだろうけど」
「はぁ?」
俺が
「きっとアレよ……男ね!
「お、男?」
「そう、男ができたに違いないわ。だからあんなに
ねーよ。あんなのと付き合える男が、そうそういてたまるか。いたら俺はそいつのことを、ゴッドと呼んで
だが、お袋はそうは思っていないらしく、鼻息荒くして追及してきた。
「で、知らない? 心あたりでもいーからさー」
「知るか。
俺が当たり前のように答えると、お袋はへの字口で流し見てきた。
「ほんっと、使えない子ねえ! あんたもちょっとはしっかりしなさいよ──妹は出来がいいんだからさあ! 血統は悪くないはずなのよお」
「ケッ。あいにく母親に似たもんでな──凡人の俺は、せいぜい地道に勉強しますわ」
──桐乃の表情がイキイキしてる、ねえ……。
……心当たりは、あるっちゃあるよ。まさかとは思うけど……もしかしたら。
ビックリ
ははっ、ガラでもねー。なに言っちゃってんだか。アホらしい。
数日後の夜、俺は『妹と恋しよっ♪』を、ついにコンプリートした。
正直言って、大変
あのな、つまんないとか、そういうレベルじゃねえんだ。
このゲームに何度、精神を
リアル妹がいる身分で、妹を攻略するゲームをプレイするという重圧に耐え、よくぞここまでたどり着いたもんだ。
感無量だ。ゲーム自体の感想はさておき、とてつもない達成感がある。
「……っ……ぅぅっ……」
なんだコレ、猛烈にテンションが上がっていく……。
胸の内から……
だってさ! も──これで、
ヒャッハー! これでもう二度と、あの
『おにいちゃん…………いいよ?』とか
「ヒイヤァァァァッホォォォォォ──────────ウ!!」
近年まれに見るほどの
そしてついに……
桐乃から借りたノートパソコンに、ENDのクレジットが表示された。
「はぁ──────」
勉強机に座っていた
「…………ふぅ」
そうすると……達成感の
初めて知ったが、ギャルゲーを全クリした直後の
だめだこれ、どうにもならん。なんだろうな、この、悟りを開いた
ふぅ……なんで俺は数秒前まで、あんなに
「さて、ゲーム返しに行くか」
俺は、