第四章 ④
がちゃ、とわずかにドアが開き、妹が顔を
そして例のごとく、ゴミを見る目で
「なに? なんか用?」
「……いや……ゲーム……返しに来たんだけど……」
ったく、コレだよ……。はぁ……やっぱリアルとゲームは違うよな。イベント
「コンプリートしたの?」
「した」
「ふぅん……で?」
「いや……」
妹よ……その鬼教官の
答えを間違えたら銃殺されそうなんすけど。俺はたいそうびびり、慎重に答えた。
「ま、まあまあかな……結構
「ふん、どういうところが? 具体的に言って」
無感情に
フッ……そうか……俺はいま、ゲームでいう『
だが、目の前にいる『妹』の好感度は、マイナスに振り切れている。
よって
上等じゃねえか。俺は不敵に笑った(心の中で)。
「ええっとっスね……しおりシナリオ? アレの後半部分は……いい話だったと思うっス。ホラ、あの、親に
「……………………」
はたして正答を選び取ることができたのか、否か……俺の
……フッ、実はさっきやったばっかのトコを言ってみただけだぜ。
あんなクリック連打してるだけで
やがて桐乃は、ゆっくりと目を開いた。細めた
「……ま、まぁ……ちょっとは分かってきたじゃない」
おお……なんと、正答だったらしい。フゥ……奇跡的に命をながらえた俺は、胸を
くだらねえぇぇぇぇぇえぇぇぇえ!
「でも、まだまだね。いいシーンはそこだけじゃないはず。たとえば……」
「ま、待て……」
俺は、桐乃が語り始めようとしたのを手でさえぎって、なんとか話をそらそうとする。
「それは後でゆっくり聞いてやっから……先に聞かせろって。この前のオフ会で知り合った連中と、最近、どうなんだ?」
「え? あ、あー……あいつらね」
桐乃は、いきなりへの字口になり、そっけない
「入って」
どうやら、廊下でこれ以上話を続けるのがマズイと思ったらしい。
「……おう」
俺が従順に従うと、桐乃はテーブルにノートパソコンを置いて、ベッドに腰掛ける。
それから、こきこきと首の関節を鳴らし、さも関心がなさそうなそぶりで言った。
「一応、両方とやり取りしてるよ、いまも。メールとか、メッセとかで」
「へえ、じゃあ友達になったんだな」
「友達っていうかぁー……話し相手? いちおー話は合うしさーあ? 色々知らないこととか、教えてもらえたりするしぃ──ま、役には立ってくれてるかなぁー」
だからそれは友達だろ。断じてその単語を口にしたくねえらしいな、こいつ。
「直接会ってはいねえんだ?」
「うん。あの黒いのはわりと近所に住んでるらしいけど、でかいのはちょっと遠いらしくてさ──。だから今度、またオフ会で会おうよって話になってて……で、まぁ、仕方ないから? 行ってあげてもいっかなぁ……とか」
「ふぅん……そっか……」
ゲームはクリアしたし、
お袋の話によると、最近いい顔するようになったっつー話だし……そういや、あれから一度も
つまり万事が上手くいって、
やれやれ……。
これで、今度こそ俺は、お
「なぁ桐乃──油断して、またDVD落とすんじゃねーぞ?」
「うっさいバカ。そんな間抜けな失敗、このあたしが何度も
……よく言うよなぁ、あんときゃオマエ、ちょっとゆさぶっただけで取り乱すわ、
俺がニヤニヤと回想していると、桐乃は恥ずかしそうに
「おっと」
俺は首を傾けて軽く
閉めた扉に、ガン、と物がブツかる音がした。
こいつは、これからもずっとこうなんだろうな……。おっかねえ妹様だぜ、まったく。
まぁ……てなわけで。
へっ、二度とやらねえからな。
料理を作るような音も聞こえなけりゃ、テレビの音も、話し声も、物音すらしない。
不自然だ。俺は靴を脱ぎながら、ぴりっとした
妙に張りつめた空気が漂っている。ぞわぞわっ……と、肌が
やはり、おかしい。いつもと違う。
「……?」
俺は
ごくり。つばを
「……ただ……いま……?」
中に入ると、桐乃と
両者とも、無言。親父はいつも無口だし、桐乃も
だから、一見したところだけなら、別段珍しい光景というわけではなかった。
ただし、
それだけじゃない。テレビを
そして、
「あ」
俺はテーブルの上を見て、すべてを察した。
テーブルの上には、親父の仕事ふうにいうならば、二つの証拠品が残されていた。
一つは、桐乃がよく提げているブランド物のハンドバッグだ。
そしてもう一つは、俺にとっては忘れもしない。
『星くず☆ういっちメルル』のDVDケースに入っている、
『妹と恋しよっ♪(18禁)』だった。
パカッとしっかりオープン状態。証拠は十分。
「……………………ふむ」
俺は
バァァァァァァァァァアァァァァァァァア──────カかアイツはぁぁぁあぁぁあ!?
バカッ……なんっ……たるバカッ……アホッ……! もはや情けなくて泣けてきたわ!