第一章 魔術師は塔に降り立つ FAIR,_Occasionally_GIRL. ③
こういう時だけシスターさんっぽくにっこりキラキラ
ギリギリと胃袋を
ぱくぱく。
「ほら、やっぱり不味くなんかない」
「……ぁ、そですか」
もぐもぐ。
「あれだよね、さりげなく疲労回復のためにすっぱい味付けしてる所がにくいよね」
「げっ! すっぱ!?」
がつがつ。
「うん、だけどすっぱいの平気。ありがとうね、何だか君、お兄さんみたいだね」
にっこり笑顔だった。ほっぺたにモヤシがくっつくほどの純心な食いっぷりだった。
「……ぐ、……ぅ、ぅ、ぅぅぉぉおおおおおおおおぁぁぁあああああああああ!」
グバァ!! と上条は音速でフライパンを取り上げる。ものすごく不満そうな顔をするインデックスに、地獄には
「君もおなかへってるの?」
「……、は?」
「そうじゃないなら、おあずけなんかしないで食べさせて欲しいかも」
ちょっぴり上目遣いでハシの先をガジガジ
神様は言う、責任持ってお前が食え。
不幸がどうのという問題ではなく、
3
インデックスと名乗る少女は、むーっと文句を言いたそうな顔でビスケットをガジガジと
「───で、追われてるって。お前一体ナニに追われてる訳?」
いくら何でも、出会って三〇分も経たない女の子に地獄の底までついていく、とまでは思えない。かと言って、このまま何もなかった事にするのは、おそらく無理だ。
結局は
「うん……、」ちょっと
「連中?」
上条は神妙に聞く。という事は、相手は集団で、組織だ。
うん、と当の追われるインデックスの方がかえって冷静な風に、
「魔術結社だよ」
…………………………………………………………………………………………………………。
「はぁ。まじゅつって……、はぁ なんじゃそりゃあ!! ありえねえっ!!」
「は、え、アレ? あ、あの、日本語がおかしかった、の?
「……、」英語で言われるとさらに分からなかった。「なに、なーに? それって得体の知れない新興宗教が『教祖サマを信じない人には天罰が下るのでせう』とか言って
「……、そこはかとなく
「あー」
「……、そこはかとなく馬鹿にしてるね?」
「────。ゴメン、無理だ。魔術は無理だよ。
「……?」
インデックスは小さく首を
おそらく科学万能主義の常識人なら『世の中に不思議な事なんて何もないっ!』と否定されると思っていたんだろう。
だけど、
「
「……よくわかんない」
「当然なの! 当然なんだよ当然なんです三段活用!」
「……。じゃあ、魔術は? 魔術だって当然だよ?」
むすっと。お前ん
「えーっと。例えばジャンケンってあるだろ? ってか、ジャンケンって世界共通?」
「……、日本文化だと思うけど、知ってる」
「じゃあジャンケンを一〇回やって一〇回連続負けた。そこになんか理由があると思うか?」
「…………、む」
「ないよな? けど、そこになんかあるって考えちまうのが人間なのさ」上条はつまらなそうに、「自分がこんな連続で負けるはずがない。そこにはきっと見えない
「………………、
「そ。ウチらの間じゃ、
インデックスはしばらく不機嫌なネコみたいにむすーっとしていたが、
「……頭ごなしに否定するって訳でもないんだね」
「ああ。だからこそ、真剣に考えてるからこそ、カビ臭い昔話はダメなんだ。絵本に出てくる魔術師なんて信じられない。MP消費で死人が復活するってんなら誰も
超能力なんて代物が『不思議』に見えてしまうのは、人間が単にバカだからで。
本当は、やっぱり超能力さえ『科学』で説明できてしまうというのが、ここでの常識なのだ。
「……、けど。魔術はあるもん」
むーっと口を
「まぁ良いけど。で、何でソイツらがお前を
「魔術はあるもん」
「……、」
「魔術はあるもん!」
どうやら意地でも認めて欲しいみたいだった。
「じゃ、じゃあ魔術って何なんだよ。手から炎が出るのか、
「魔力がないから、私には使えないの」
「……、」
カメラがあると気が散るのでスプーンを曲げられません、というダメ能力者を見た気がした。
とはいえ、なんか複雑な気分であるのも事実だ。
オカルトなんてない、魔術なんてありえないとか言っておきながら、実は
科学的な時間割りで後付けされたのではなく、生まれた時から右手に宿るこの力。
この世に『
……まぁ、だからと言って『世の中には不思議な事があるんだから、魔術だってあってもおかしくないよね♪』というハチャメチャ理論はやっぱり納得できないが。
「……魔術はあるもん」
ハァ、と上条はため息をついた。
「じゃあ、仮に魔術なんてモノがあるとして、」