第一章 魔術師は塔に降り立つ FAIR,_Occasionally_GIRL. ④
「仮に?」
「あるとして、」上条は無視して続けた。「お前がそんな連中に
上条の言ってるのは、インデックスの着ている純白のシルク地に
「……私は、
「は?」
「私の持ってる、一〇万三〇〇〇冊の魔道書。きっと、それが連中の狙いだと思う」
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「……まーたまた、良く分からない話になってきたんですが」
「だから、何で説明していくたびにやる気が死んでくの? もしかして飽きっぽい人?」
「えっと、整理するけど。その『魔道書』ってのが何なのか良く分からないけど、とにかくそれって『本』なんだよな? 国語辞典みたいな」
「うん。エイボンの書、
「いや、本の中身はどうでも良いんだ」
どうせラクガキだし、という言葉はぐっと飲み込んで、
「で、一〇万冊って──────どこに?」
これだけは譲れない。一〇万冊なんて言ったら図書館一つ丸々レベルだ。
「なに、どっかの倉庫のカギでも持ってるって意味なのか?」
「ううん」インデックスはふるふると首を横に振って、「ちゃんと一〇万三〇〇〇冊、一冊残らず持ってきてるよ?」
は? と
「……バカには見えない本とか言うんじゃねーだろーな?」
「バカじゃなくても見えないよ。勝手に見られると意味がないもの」
インデックスの言葉は
「……、うわぁ」
今まで我慢して聞いてきたが、これ以上は無理だと上条は絶句する。
ひょっとしたら『
「……超能力は信じるのに、魔術は信じないなんて変な話」むすっと、インデックスは口を
……。
「ま、そりゃそーだわな」上条は小さく息をつき、「そりゃそうだ。お前の言う通りだよ。こんな一発芸を持ってる程度で、誰かの上に立てるだなんて考え方は間違ってる」
上条は自分の右手に視線を落とした。
そこからは炎も
だが、それでも上条の右手はあらゆる『異能の力』を無力化させる。力の善悪は問わず、神話に出てくる神様の
「ま、この街に住んでる人間ってな
「そうだよバカ、ふん。頭の中いじくり回さなくったってスプーンぐらい手で曲げられるもん」
「……、」
「ふんふん。天然素材を捨てた合成着色男のどこが偉いってーのさー、ふん」
「……、ナメたプライドごと口を封じて構わねーか?」
「て、
「……、えっと。何がって言うか」
自分の
「えっとな、この右手。あ、ちなみに
「うん」
「この右手で触ると……それが異能の力なら、原爆級の火炎の塊だろうが戦略級の
「えー?」
「……つかテメェ何だその幸運を呼ぶミラクルストーンの通販見てるみてーな反応は?」
「だってー、神様の名前も知らない人にー、神様の奇跡だって打ち消せますとか言われてもー」
驚くべき事にインデックスは小指で耳の穴をほじって鼻で笑いやがった。
「……くっ。む、ムカつく。こんな、魔法はあるけどアナタには見せられませんなんて言うインチキ魔法少女に
と、上条
「い、インチキじゃないもん! ちゃんと魔術はあるんだもん!」
「じゃあなんか見せてみろやハロウィン野郎! ソイツを右手でぶち抜きゃ俺の
「いいもん、見せる!」むきーっ! という感じでインデックスは両手を振り上げ、「これっ! この服! これは『歩く教会』っていう極上の防御結界なんだからっ!」
インデックスが両手を広げて強調しているのは、例のティーカップみたいな修道服だ。
「何だよ『歩く教会』って、もう意味分かんねーよ! さっきっから聞いてりゃ
「なっ……ちっとも理解しようと思わない人が言う
「じゃあ刺してみる! ……って何だよそれ、きっかけは
「あ、信じてないね」インデックスはハァハァと肩を上下させ、「これは『教会』として必要最低限な要素だけ詰め込んだ『服のカタチをした教会』なんだから。布地の織り方、糸の
「つかないんだよって……あのな。じゃあハイぐっさり刺してみますなんて言う
「とことん馬鹿にして……。これはトリノ
うるせーばか。
一気にインデックスに対する好感度ゲージが下がった
「……、ふぅん。てか、つまりアレだ。それが本っっっ当に『異能の力』だってんなら、
「君のチカラが本っっっ当な・ら・ね? うっふっふーん」
上等だゴルァ!! と上条はインデックスの肩をがっちり
と、確かに雲を摑むような──柔らかいスポンジに衝撃を吸収されるような変な感覚がした。
「て、…………あれ?」